静岡新聞NEWS

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

<ウナギNOW>ボーダーレス(8) 「うな丼」チェーン

(2015/5/27 10:00)
会社員や子ども連れが次々と昼食に訪れる「うな政」。中国産ニホンウナギを使い、うな丼は880円=19日、静岡市駿河区

 昼時のレストラン街に炭火で焼いたウナギの香りが漂う。においの元は、静岡市駿河区の大型施設内のうな丼チェーン「うな政」。誘われるように子ども連れや会社員らが入店し、注文から数分でテーブルに看板メニューのうな丼が並んだ。

 「専門店は敷居が高い。家族連れが気軽に食べられる価格でウナギを提供したい」。うな政は2006年、不動産やラーメンチェーンを展開する高田企画(富士市)の高田清太郎社長(62)の肝いりで始めた新規事業。ピーク時には6店舗あったが、スクラップアンドビルドを重ね、現在は3店舗を直営する。

 メニューには示していないが、使用しているのは商社を通じて中国内陸部の養鰻加工場から仕入れるニホンウナギ。単価の安いサイズを使うことで価格を抑え、うな丼580円で開業したが、稚魚の不漁に伴う仕入れ価格の高騰で、これまでに2度値上げし、今は880円となった。

 「うな丼だけではやっていけない時が来るかもしれない」と、メニューに豚肉のかば焼き丼や鶏丼も加えた。資源保護に揺れる中で安定調達に不安もあるが、「ジャポニカが駄目なら異種もある。ウナギの生態は謎が多く、資源枯渇は正直ぴんとこない」と高田社長。今後も「いい場所さえあれば」と出店意欲は旺盛だ。

 千円以下のうな丼は、全国展開の大手外食チェーンでも、土用の丑(うし)に向けてメニューに取り入れ始めている。流通各社の多くが使用してきた調達コストの安いヨーロッパウナギは国際取引規制が厳格化。各社の仕入れの状況は今期、様変わりしている。

 すき家を展開するゼンショーホールディングスは今期、ヨーロッパ種から中国産ニホンウナギに一本化したが、価格は前年より19円安い780円に抑えた。吉野家も今夏は中国産ニホンウナギに統一。昨シーズンは730円で販売していたが、「今期は発売日を含めて調整中」(企画本部)と、戦略を巡らせる。今夏もヨーロッパ種を使うくら寿司のくらコーポレーションは580円。圧倒的な安さで差別化を図り、「前年比1・2倍の販売を目指している」と意気込む。

 安さと早さが売りのどんぶりチェーン。大量消費の象徴とも見られる「格安うな丼」は国際的な資源管理の波の中で、生き残りの道を模索する。

<メモ>うな丼 1865(慶応元)年刊の「俗事百工起源」によると、江戸・文化年間(1804〜17年)に芝居小屋が立ち並んでいた現在の東京・人形町で、歌舞伎小屋のスポンサーが出前の運ばせ方として発案したとされる。近年は、外国産加工品の流通で大手どんぶりチェーンや弁当チェーンでも「うな丼」「うな重」を取り扱う。関西地方には、白米の間にかば焼きを挟んで蒸しを入れたうな丼「まむし」がある。

このほかの記事

> もっと見る

ロード中 関連記事を取得中...

SBSテレビチャンネル

こどもみらいプロジェクト「おやこアットエス」
ページトップへ