[戦後70年 沖縄慰霊の日] 「みるく世」は訪れたか
( 6/24 付 )

 沖縄はきのう「慰霊の日」を迎えた。太平洋戦争末期、日米合わせて20万人以上が犠牲になった沖縄戦で、組織的戦闘が終わったとされる日である。

 戦後70年の節目となるこの日を、沖縄の人たちはこれまでにも増して複雑な思いで迎えたのではないか。

 沖縄戦は、米軍統治を経て現在まで続く、重い基地負担の起点でもある。

 そして今、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡って、辺野古を「唯一の解決策」とする国と「つくらせない」と主張する県の対立が続いている。

 糸満市の平和祈念公園で開かれた「沖縄全戦没者追悼式」で安倍晋三首相は、「基地負担軽減に全力を尽くす」とあいさつした。しかし、肝心の辺野古移設には触れなかった。

 翁長雄志知事は平和宣言で、国土面積の0.6%しかない沖縄に国内の米軍専用施設の74%が集中する現状に疑問を投げかけ、移設作業中止の決断を重ねて求めた。

 今月中旬、普天間飛行場の騒音訴訟で那覇地裁沖縄支部は、「公共性があるからといって被害を受忍すべきだとはいえない」として、国に賠償命令を出した。住宅密集地にある普天間の危険性は、だれもが認めるところである。

 しかし、政府は、辺野古移設を「唯一の解決策」と繰り返すばかりで、「なぜ沖縄だけに」という地元の問いに答えてこなかった。

 翁長氏は5月に訪米し、上下両院の議員らに、移設反対の意向を直接伝えた。本来なら、地元の声を米側に伝えるのは日本政府の役割のはずだ。

 「地元の理解を得る」と言いながら、政府は夏にも埋め立てに着手したいとする。このまま移設に突き進むなら、政治不信は深まるばかりである。沖縄の民意と向き合い、説明を尽くすべきだ。

 平和宣言で翁長氏は、「沖縄の基地問題は国の安全保障の問題であり、国民全体で負担すべきだ」と訴えた。沖縄の懸念は、基地問題を日本全体で共有できていないことにもある。

 式典で、沖縄県立与勝高3年の知念捷さんは平和の詩を朗読し「みるく世(ゆ)がやゆら(平和な世でしょうか)」と何度も呼びかけた。

 沖縄に基地負担を強いたまま、戦闘の犠牲になった人たちに「今は平和な世の中だ」と胸を張れるのか。国民一人一人への問いかけでもある。


 
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