中国近代絵画と日本 [美術館 ARTNEWS アートニューズ]
中国近代絵画と日本
Modern Chinese Painting and Japan
鵝伏図 徐悲鴻筆 京都国立博物館(須磨コレクション)
中国の近現代を中心に活躍した呉昌碩(ごしょうせき)、斉白石(せいはくせき)、
高剣父(こうけんぷ)、徐悲鴻(じょひこう)、劉海粟(りゅうかいぞく)、黄賓虹 (こうひんこう)等の絵画作品を、京都国立博物館が近年受贈した須磨コレクションを軸に、国内外の名品を集めた展覧会が京都国立博物館で開催中である。
清朝末期から20世紀にかけての激動の時代・・・
アヘン戦争が中国にもたらした西洋の近代物質文明の衝撃は、旧態依然とした中国の社会全体を揺さぶり、変革を促した。
押し寄せる西欧化の波の中、当時、中国が近代化の身近な手本としたのが、隣国の日本である。
近代画壇における改革のリーダーとなった陳師曾(ちんしそう)、高剣父、徐悲鴻等は日本との関係が深い。
中国絵画の近代化には、当時、いち早く西欧の影響を取り入れた日本の美術が、果たした役割は決して小さくはない。
また、呉昌碩、斉白石等が国際的に評価を集めた発端に、日本の審査眼が寄与している。
花卉図冊のうち 紅梅に雀図 斉白石筆 京都国立博物館(須磨コレクション)
この展覧会では、外交官・須磨弥吉郎が収集した、中国近現代の名画とともに、中国と日本の多彩な文化交流を展示している。
音声ガイドでは、時代背景や中国近代画壇の流れなども分かりやすく解説。
斉白石、陳師曾など、個性あふれる画家たちの素顔に迫る、エピソードも満載。
☆京都国立博物館と須磨コレクション
京都国立博物館は、平成11年度と12年度に、元カナダ大使・故須磨未千秋氏より945件の美術品の寄贈を受け、また、平成21年には妻の須磨良子氏より、中国絵画を中心とする95件の美術作品の寄贈を受けている。
これらはすべて未千秋氏の実父、須磨弥吉郎(1892-1970)の収集品で、そのほとんどが、外交官であった弥吉郎の1927年から37年にかけての11年に及ぶ中国在勤中に集められたものである。
須磨と京都国立博物館のつながりは、中国赴任を終えるに当たり、そのコレクションの一部を一時、「恩賜京都博物館」時代の京都国立博物館に寄託したことから始まる。
須磨弥吉郎収集の中国美術品では、とくに近代絵画が充実しており、斉白石や高剣父、黄賓虹ら当時の一流画家の優品が数多く、評価が高い。
☆須磨弥吉郎(1892 - 1970)
南京総領事を務めた須磨弥吉郎は、「収集は創造なり」との信念から、一美術愛好家として斉白石・劉海粟をはじめとする当代一流の画家たちと心を開いてつきあい、さらに外交官らしい優れた画壇分析に基づき、先覚的で系統的な収集を完遂した。
それ故、多分野にひろがる須磨コレクションは中国近代絵画において、とりわけ光彩を放っている。
宋法山水図 斉白石筆
京都国立博物館(須磨コレクション)紙本墨画 171.8×89.6 民国11年(1922)
須磨コレクションを代表する傑作。
北京に上京する前に遊んだ桂林の山水がこの絵の原風景になっている。
斉白石(1863~1957) は湖南湘潭の人。貧農の家に生まれ、大工や、指し物師などをしながら絵を学び、中国各地を遊歴した後、55歳になった民国6年(1917)、北京に居を定め、売画の生活を送った。民国11年(1922)、東京での中日連合絵画展覧会に出陳した作品が評判を呼び、国外にまで名を知られて、白石の絵を求める者が殺到し始める。
須磨弥吉郎は、「昭和九年(1934)十一月十日、栄宝斎金陵支店主人から、入手したもので、斉白石が北京の表装店への借金の肩代わりとして手放したもの」と、そのノートに記している。
昭和2年(民国16年、1927)暮れ、中国公使館二等書記官として、北京に赴任した須磨弥吉郎は、白石個人とも親しく交わりながら、白石の絵の完成期にあたる60歳代の作品を中心に、優れたコレクションを築き上げる。
瑞西風景劉海粟筆
京都国立博物館(須磨コレクション)
キャンバス・油彩 60.0×72.4 民国20年(1931)
「海粟 1931 Liu Haisu」 のサインがあり、中国近代油絵の開拓者、劉海粟(1896~1994)が 1929年~31年にかけての第一次渡欧の際に描いた油彩画。日差しのきつい湖畔の風景が、ヴァン・ゴッホに似たタッチで描写されている。1929年の夏、劉は弟子の劉抗らと共に、スイスに遊び、レマン湖畔に一軒の別荘を借りて日中は作画・遊泳・登山し、夜になると議論に花を咲かせた( 劉抗「劉海粟与 中国的近代芸術」) 。
この時の体験をもとに新たに筆を起こした作品かと思われる。劉海粟は、東京で個展を開いている。
蒋碧微像 徐悲鴻筆
京都国立博物館(須磨コレクション)
キャンバス・油彩 46.7×36.7
若くして日本に遊学した経験のある、徐悲鴻(1895~1953)の油彩画。須磨弥吉郎によれば、1933年、パリにおいて描かれたもの。 この年、徐悲鴻は、劉海粟が主事として派遣され翌年ベルリンで催される官製の中国現代画展に対抗し、民間の中国美術展覧会を企画した。
パリで催されたこの展覧会は非常な成功をおさめ、中国近代絵画に対するヨーロッパの人々の認識を改めさせるとともに、画家 徐悲鴻の名声を一挙に高めた。夫人 蒋碧微は、徐悲鴻と同郷の江蘇宜興の出身。悲鴻が貧しい画家の息子に過ぎないのに対し、名門の家に生まれ、許婚までいたが、悲鴻と相思相愛の仲となり、日本に駆け落ちした。
杭州湖畔 王済遠筆 京都国立博物館(須磨コレクション)
会 場 京都国立博物館 特別展示館
〒605-0931 京都市東山区茶屋町527
TEL 075-525-2473(テレホンサービス)
会 期 平成24年1月7日(土)~2月26日(日)
休 館 日 月曜日
観 覧 料 一般 1,200円(900円)
大学・高校生 800円(500円)
中学・小学生 400円(200円)
※( )内は、団体20名以上の料金
開 館 時 間 午前9時30分~午後6時(毎週金曜日は午後8時まで)
※ 入館は閉館の30分前まで
主催
京都国立博物館
特別協力
上海博物館、劉海粟美術館、香港芸術館、香港中文大学文物館
協力
日本香堂
後援
エフエム京都
音声ガイド
会場入口にて音声ガイドを貸出。
貸出料金:500円(税込)ガイド点数:25点
関連土曜講座
2月4日
洋画における中国と日本の交流 ―近代上海を中心に―
早稲田大学講師 陸偉榮 氏
2月25日
海上画派と日本および西洋絵画の影響
上海博物館書画研究部主任 單国霖 氏
※午後1時30分から3時まで、京都女子大学J校舎5階J525教室にて開催。聴講無料。定員190名。
往復はがきに、聴講希望日・住所・氏名・年齢・職業・電話番号を明記の上、京都国立博物館「土曜講座」係(〒605-0931 京都市東山区茶屋町527)まで申込のこと。
往復はがき1枚につき、1名様1回分の申込とする。
定員になり次第締切。
***平常展示館は、建替え工事中のため閉館***
読者プレゼント
5組10名様にご招待券 プレゼント
あて先 : loewy@jg8.so-net.ne.jp に展覧会名 と会場名 ご住所、お名前をお書きの上どしどしご応募下さい。
発送をもって当選と代えさせていただきます。
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