韓国の著名な小説家、申京淑(シン・ギョンスク)氏の作品をめぐる盗作疑惑が収まらない。発端は小説家のイ・ウンジュン氏が16日、申氏の短編小説『伝説』(1996年)の一部が故・三島由紀夫の短編小説『憂国』(韓国で83年出版の小説集に収録)の盗作だと主張したことだった。イ氏は新婚夫婦が性愛に目覚めるシーンを描写した五つの文章を盗作と指摘している。また、申氏の別の三つの作品をめぐっても盗作疑惑が持ち上がっている。
申氏は17日「『憂国』を知らない」と盗作を否定し、『伝説』が収録された小説集を出版した出版社の創批は「いくつかの文章が似ているとしても、これを根拠に盗作をうんぬんするのは問題だ」と申氏を擁護した。申氏と出版社のこうした反応は読者らを一層刺激し、世論の批判が強まった。すると創批は翌日になって「盗作を提起してもおかしくない」と立場を一変させた。申氏は現在、外部との接触を絶っている。
作家は自身の直接的な経験や読書などを通じた間接的な体験と想像を織り交ぜ、作品をつくり上げる。このとき引用の境界を明確に引けなければ、盗作との指摘を受けることもあるだろう。
申氏は1985年に文壇デビューを果たして以来、30年で20冊近くの小説を出版した。2008年の長編小説『母をお願い』は22カ国で出版され、世界で200万冊以上売れた。今や故・朴景利(パク・キョンリ)氏、故・朴婉緒(パク・ワンソ)氏に続く大物女性作家、韓国小説文学の象徴的な人物となった申氏は、どんな形であれ正直な立場を示すのが自身を支持してくれる人々への礼儀ではないのか。
盗作問題は韓国の文壇が必ず乗り越えねばならない課題だ。だからといって、いくつかの文章、いくつかの表現をもって作家が築き上げた文学世界全体を罵倒すれば、文学は次第に死滅してしまうだろう。作家の熟考が必要な事案について、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)で対話するかのように即答を強要するムードも歯がゆいばかりだ。
ただでさえ、韓国の文壇はここ数年間、注目すべき作品や作家が現れない低迷期に陥っている。作家や文学評論家は互いに指摘することはすべきだが、内輪でのいがみ合いに熱を上げているという印象を与えれば、読者たちはもっと文学から離れていくだろう。文壇は今回の論争を、韓国文学を一段と成熟させる契機とすべきだ。