辺野古:実情を知って…反対派追った映画、前倒し公開
毎日新聞 2015年06月23日 11時32分(最終更新 06月23日 15時13分)
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設に反対する人々を追ったドキュメンタリー映画「戦場(いくさば)ぬ止(とぅどぅ)み」が東京都内で予定を早めて上映され、平日に満席になるなど評判を呼んでいる。「何のためにこれ以上沖縄に基地を造るの?」。移設に反対し座り込む女性の警察官への問いは、そのまま沖縄から日米両政府や本土の人々への問いかけでもある。【福永方人】
◇「苦難の歴史、断ち切りたい」
米軍新型輸送機オスプレイの沖縄配備をテーマとするドキュメンタリー映画「標的の村」に続く三上智恵監督(50)の第2作で、約500時間の映像を2時間9分に編集。辺野古移設に反対する人たちの半生を通じて、苦難に満ちた沖縄の戦後70年を描いている。
85歳の「文子おばぁ」は沖縄戦で火炎放射器に焼かれ大やけどを負ったが、生き延びた。「沖縄で大きな地上戦をやったのに、また(戦争を)やるのかねーと思ったら涙が落ちる。その苦しさをどこにぶつければいいのか」。米軍キャンプ・シュワブのゲート前でつえをつきながら工事車両を止めようとする。
タイトルは沖縄の言葉で「戦いを終わらせる」の意。三上さんは「辺野古移設を阻止し、70年間沖縄を苦しめてきた基地問題を断ち切ろうという思いを込めた」と語る。
作品中に、海上保安庁や沖縄県警と反対派の市民らの激しい攻防が出てくる。だが対立の中にユーモアに富むやりとりが挟まれ、緊張が和らぐ場面も。「対立が笑いという魔法で解けた瞬間。人間賛歌の視点も大事にして撮った」。だからこそ「心優しいウチナーンチュ(沖縄の人)同士が争う構図を作った政府が許せない」と三上さんは憤る。
作品は当初7月に公開予定だったが、「辺野古の実情を早く知ってほしい」との三上さんの希望で、ポレポレ東中野(東京都中野区)が5月から上映。配給会社によると事前告知のほとんどないドキュメンタリーとしては集客はかなり良い方で、「基地への賛否で単純に割り切れない沖縄の人たちの複雑な思いが伝わってきた」「県内移設への反発は、沖縄戦の記憶や戦後の苦難の歴史と深くつながっていることを知った」などの感想が寄せられている。
三上さんは東京都出身。1995年、琉球朝日放送開局時に他局から移籍して沖縄に移住した。アナウンサーを務めながら制作したテレビ番組「標的の村」の映画化後、フリーのジャーナリストに転身した。安保法制の国会審議をにらみ「戦争が息を吹き返そうとしている。映画がそんな流れを終わらせることにつながれば」と言う。
作品は7月18日から横浜市の「シネマ・ジャック&ベティ」や大阪市の「第七芸術劇場」など全国で順次公開される。問い合わせは配給会社の東風(03・5919・1542)。