志位氏の冒頭発言
今、安倍政権が平和安全法制の名で、11本の法案を国会に提起しています。私たちは、憲法9条を全面的に破壊する戦争法案がその正体だと追及してきました。今日は「世界から見た戦争法案の異常と危険」と題しまして、冒頭スピーチをさせていただきます。
戦後、日本の自衛隊は半世紀にわたって、一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出してきませんでした。ここには憲法9条の偉大な力が働いています。そして、そのことで政府が戦後一貫して海外での武力行使は許されないという憲法解釈を取ってきたことも重要な要因として働いています。戦争法案は、この国のあり方を根底から覆すものです。それは、海外で戦争する国づくり、殺し殺される国づくりを進めようというものに他なりません。
私は安倍首相との国会での論戦で、憲法に違反する3つの大問題について追及してきました。
第一は、米国が世界のどこであれ、アフガニスタン戦争、イラク戦争のような戦争に乗り出した際に、自衛隊がこれまで戦闘地域とされてきた地域にまで行って、弾薬の補給、武器の輸送などのいわゆる「後方支援」、兵站を行うことになるということです。戦闘地域での兵站は、相手方から攻撃目標とされ、武力行使に道を開くことになります。
第二に、PKO法の改訂が大変曲者だと考えております。PKOとは関係のない活動への新たな仕掛けが盛り込まれております。形式上は停戦合意が続いているが、なお戦乱が続いているようなところに自衛隊を派兵し、治安維持活動をさせる枠組みが新たに持ち込まれようとしています。 安倍首相は私の質問に対して、アフガンに展開し、3,500人もの戦死者を出しているISAF=国際支援部隊編のような活動への参加を否定しませんでした。戦乱の続いている地域での活動も、容易に武力行使に変化します。
第三は、日本がどこからも攻撃されていなくても集団的自衛権を発動し、米国の戦争に自衛隊が参戦し、海外での武力行使に乗り出すということです。我々はこれは一内閣の専断で従来の憲法解釈を180度転換する立憲主義の破壊であり、憲法9条の破壊であると厳しく批判してきました。
以上述べた点から、この法案の違憲性は明らかだと確信しております。
その上で、今日は世界から見ると、今、日本で起こっていることがどれほど以上で危険か、お話をさせていただきたいと思います。
世界から見ますと、戦争法案とその推進勢力には、3つの異常と危険があります。
第一は"非国際性"です。すなわち、地球の裏側まで自衛隊の派兵を目論みながら、世界に通用しない理屈でそれを合理化しようとしています。
例えば戦闘地域での兵站についてであります。戦闘部隊に対する補給・輸送などの兵站が武力の行使と一体不可分であり、戦争行為の不可欠な一部であることは世界の常識であり軍事の常識であります。しかし、それを正面から認めてしまいますと、その途端に憲法違反になってしまいます。そこで日本政府はそれを誤魔化すために、世界のどこにも通用しない概念、議論を使っています。
端的にお話をさせていただきます。
日本政府が使っている言葉で、英語に翻訳できない、概念がない言葉が3つあります。翻訳できない言葉を同時通訳の高松(珠子)さんに訳してもらうのは申し訳ないです(笑)。でも高松さんは上手にやってくれると思います(笑)。
一つは、「後方支援」という言葉です。これは日本政府だけの造語です。ご承知のように、英語では「logistics」=「兵站」となります。しかし決して「兵站」という言葉を使おうとしません。「兵站」には前方・後方という概念を含んでおりません。日本の自衛隊が行うのは、あくまで「後方支援」で、後ろの方でやっていて、前には行かないという誤魔化しです。
二つ目の言葉は、「武器の使用」という概念です。「武器の使用はするが、武力の行使には当たらない」、ということを繰り返します。安倍首相は、戦闘地域で自衛隊を兵站を行う際に攻撃されたら武器の使用をする、これは認めました。しかし、武力の行使ではないと、頑なに言い募るんです。
そこで私は外務省に「武器の使用」という概念が国際法上あるんですかと尋ねました。外務省から返ってきた答えは、「国際法上は、武器の使用という概念そのものがございません」というものでした。「武器の使用はするが、武力の行使はしない」というのは、世界のどこにも通用しない概念です。
三つ目は、「武力行使との一体化」ということです。政府は、「武力行使と一体でない後方支援は武力の行使にあたらない」と言っております。
私は先日の党首討論で、安倍首相に聞きました。「国際法上、武力の行使との一体化という概念そのものがあるんですか」と。首相は、「一体化という概念そのものがございません」という風に答弁しました。
ちなみに昨年7月の日本政府の集団的自衛権の行使容認の閣議決定の英訳、これは仮訳ですが、「武力行使との一体化」をどう翻訳しているのか、政府の公式文書で見てみましたら、"ittaika with the use of force"とローマ字を充てておりました。「一体化」という概念を訳すことは誰にもできません。
世界で通用しないという点では、集団的自衛権の行使についての政府見解も同じです。政府は、集団的自衛権の発動の要件として「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされること」を挙げています。そして、政府はこうした変更を行った唯一最大の理由として、国際情勢における根本的変容が起こったからだと説明しています。
それで私達は国会で聞きました。「国際情勢の根本的変容というがそうした変容のもとで、他国による武力攻撃によって存立危機事態に陥った国が世界に一つでもありますか?」と。外務大臣が答弁しまして、「実例を挙げるのは困難だ」と答えました。
一つも事例を上げられない。すなわち憲法解釈を変更した根拠が根底から崩れた、というのがこの間の論戦です。憲法9条のもとでは、もともと自衛隊の海外の派兵というのは不可能なんです。それを取り繕おうとするから、世界のどこにもない架空の概念を作り出すという矛盾に陥っています。自衛隊の世界的規模での派兵を企てながら、世界のどこにも通用しない詭弁で合理化することは許されることではありません。
私は心配になります。地球の裏側で、米軍と自衛隊が共同行動しているそのときに、自衛隊が「こうした後方支援は武力行使と一体化するので出来ない」と米軍に言ったとします。しかし米軍の方は、「一体化」という英訳そのものがないんですから、理解ができません。
第二の"世界から見た異常"として、"対米従属性"ということを挙げたいと思います。
すなわち、この法案を推進している勢力が、異常なアメリカ追随を特徴としているということです。政府は集団的自衛権の発動要件として、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した」場合を挙げています。
私はこの場合、その他国への武力攻撃がいかにして発生したか、ここから考えなければならないと思います。すなわち、その他国が先制攻撃を行って、そういう状態が生まれた場合、その他国は侵略国となります。それとも、その他国への武力攻撃から戦争が開始されたのか。この場合、その他国は犠牲国になります。
私たちはここに追及す大問題があると考えて、国会で質疑を行ってきました。私は首相に聞きました。「米国が先制攻撃の戦争を行った場合でも、集団的自衛権を発動するんですか」と。首相は、「違法な武力行使をした国を日本が自衛権を発動して支援することはない」と答弁しました。
しかし問題は、日本政府が、米国の違法な武力行使を違法と批判できるのかにあります。米国はベトナム戦争、イラク戦争を始め、これまで数多くの先制攻撃の戦争を実行してきました。しかし、日本政府は戦後ただの一度も米国の武力行使に反対したことはないんです。このような国は、主要国の中で他に例を見ないと思います。
例えば1983年のグレナダ侵略、グレナダの侵略に対しては、日本以外のほとんどの同盟国は反対しました。国連総会でも非難決議が上がりました。しかし日本政府は理解の意思表示をしました。
私は、このような異常なアメリカ追随の国というのは、他に例をみないと思います。このような政府が、そしてそういう行動に反省の無い政府が、「違法な武力行使を支援することはない」と言って、誰が信用できるでしょうか。異常なアメリカ言いなりの国が集団的自衛権を行使する事態は、極めて深刻だと言わなければなりません。
最後に、第三の問題です。"歴史逆行性と"いうことを挙げたいと思います。すなわち、過去の日本の戦争を「間違った戦争」だと言えない安倍政権が戦争法案を推進する危険ということです。
今年は戦後70年です。この節目の年に、日本が過去の戦争にどういう基本姿勢を取るかは極めて重大な問題です。
5月20日の党首討論で、私は安倍首相に対して1945年8月に受諾したポツダム宣言を引用して、過去の日本の戦争は間違った戦争だったという認識はあるかと質しました。安倍首相は頑なに、間違った戦争と認めることを拒み続けました。加えて、この党首討論の中で安倍首相が「ポツダム宣言をまだ詳らかに読んでいない」と答弁したことが内外に衝撃を与えました。党首討論の後で安倍政権は、この問題については答弁書を閣議決定しました。そこにはこう書かれていました。「首相は、当然ポツダム宣言を読んでいる」と。読んでいると言うんだったら、あの時の答弁は何だったんだということになります。
戦後の国際秩序は、"日本とドイツとイタリアが行った戦争は侵略戦争だった"という判定の上になり立っています。ところが安倍首相は、"侵略戦争"はおろかか、"間違った戦争"とも認めようとしません。過去の戦争への反省のない勢力が憲法9条を壊して、海外で戦争する国への道を暴走するというのは、これほどアジアと世界にとって危険なことはないと言わなければなりません。
以上、三つの角度から、"国際的な異常性と危険性"についてお話させていただきました。
昨日、与党は国会の会期を史上最長の95日間延長することを強行いたしました。しかし私は、この帰趨がどうなるかを握っているのは、国民の世論だと考えています。国民の、文字通りの圧倒的多数がこれに反対の意思表示をした場合には、いかに与党が国会で多数を持っていたとしても、強行することはできません。私たちは、国会の論戦と国民運動の両面で、そうした確固たる国民的な多数派を作るために力を尽くしたいと考えております。
ありがとうございました。
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