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改正風営法でクラブが終夜営業可能に

6月22日 21時50分

市川不二子記者,岡本基良記者

若者が暗い室内で音楽やダンスを楽しむ「クラブ」。仲間と踊り、盛り上がっていた「クラブ」が午前0時を越えると、急に客にダンスをさせない飲食店に早変わり。こんな現象は、「クラブ」が原則、午前0時以降の営業が禁止されていたからでした。
その「クラブ」が一定の条件で終夜、つまり朝まで営業ができるように規制が緩和されることになりました。その経緯や内容について、社会部の市川不二子記者と岡本基良記者が解説します。

改正風俗営業法が成立

「クラブ」は原則として午前0時以降の営業が禁止されていますが、今月17日の参議院本会議で一定の条件で朝まで営業が可能になる改正風俗営業法が賛成多数で可決され、成立しました。今月24日に公布され、1年以内に施行される予定です。

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今回の改正では、飲食や接待を伴わない「ダンスホール」や「ダンス教室」については営業時間や場所の規制が無くなります。

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ダンスの規制は時代錯誤?

ダンスの営業が法律で規制されたのは67年前の昭和23年。終戦後の混乱のなか、売春などの風俗犯罪を防ぐためでした。

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その後、規定が整備され、現在の風俗営業法では、若者が音楽やダンスを楽しむ「クラブ」や「ダンスホール」、それに「ダンス教室」の営業についても都道府県の公安委員会の許可が必要なうえ、原則として午前0時以降の深夜営業が禁止されました。
しかし、最近では小中学校の教育現場でもダンスが取り入れられるなどダンスの重要性が増し、風俗営業として一律に規制することは、今の時代にそぐわず、健全なダンス文化の発展の支障になっているという声が高まりました。このため、警察庁は去年7月から有識者会議に検討を依頼し、法改正に向けた作業を進めていました。
ダンス講師で、「サルサ」の普及活動をしている団体の理事を務める武永実花さんは、「法律の改正によってサルサダンスが『風俗』ということばから離れ、健全なイメージが一般の人に伝われば、生徒も堂々とサルサダンスが踊れるようになる。レッスンをする立場としてはとてもうれしい結果になったと思っている」と話していました。

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規制のポイントは明るさ

今回の改正では、朝までの営業が認められる店の条件が定められています。それは「店内の明るさ」です。

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基準となるのは10ルクス。映画館の休憩時間と同じ程度の明るさで、店内の明るさがこの10ルクスを超える場合、風俗営業とせず、多くの「クラブ」のようにアルコールを提供する店は、都道府県の公安委員会の許可を受けたうえで、各自治体が条例で定める地域で朝まで営業できるようになります。
これに対し、10ルクスより暗い場合は、これまでどおり風俗営業として規制されます。「クラブ」では、音楽に合わせて照明を点滅させるなどの演出があることから、警察庁は明るさの測定をダンスフロアではなく、客席に限定して行うことなどを検討しています。

店側の対策を義務づけ

一方で、今回の改正では、深夜営業ができるようになると騒音などで住民の生活に影響が出るおそれがあるとして、店に対し、深夜に客が大声を出したり、酒に酔って乱暴な行動をしたりして、周りの客に迷惑をかけないよう必要な措置を取ることを義務づけました。
また、地域の住民と店、それに警察で作る協議会を設け、周辺の環境を守る対策の検討に努めるよう求めています。

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クラブ業界から歓迎の声も

今回の改正について、「クラブ」の経営者からは歓迎する声も出ています。都心にあるおよそ20の「クラブ」が加盟している「日本ナイトクラブ協会」の関口朋紀理事長は、「これまで『クラブ』はグレーな営業をしてきたところも多く、かつては事件が起きたこともあって悪いイメージを持たれることがあったので、一定の規制が残るのは必要だと思っている」としたうえで、「今回の改正は1つの前進と捉えている。改正をきっかけに、『クラブ』を健全で安全な社交場として社会にアピールしたい」と話していました。

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業界の健全化目指す動きも

さらに、今回の改正をきっかけに、健全な「クラブ」文化を目指す動きも出ています。改正風俗営業法が成立した今月17日、大阪・ミナミでは、関西を中心に活動しているDJやダンサーなどおよそ150人が参加した集会が開かれました。

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主催者の1人でDJのWatusiさんは、「クラブ」の出演者が一体となった全国組織を作るべきだと訴えました。
Watusiさんは「終夜営業が認められたことは大きな1歩だが、単にプラスに捉えると、以前と同じような問題が起きてしまう。誰もが安心して楽しめる場を作り、文化をどう受け継いでいくかが課題だと思う」と話していました。

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改正に批判の声も

一方、一部の「クラブ」の経営者などからは、法律が改正されてもダンスをさせる営業が規制を受け続けることは変わらず、表現の自由に反しているなどと批判する声も出ています。
海外では、日本と比べて「クラブ」の文化が一般的なものとなっているところもあり、去年1年間に日本を訪れた外国人旅行者が過去最高となったうえ、5年後には東京オリンピック・パラリンピックが開催されることから、「クラブ」に対するニーズは高まっていくのではないかとみられています。
改正された法律の運用に向けて、今後、朝までの営業が認められる地域を指定するため、各都道府県が関連する条例を改正するなど具体的な手続きが進められます。今回の改正が、「クラブ」文化の発展と健全化のきっかけになるのか、今後も注目して取材していきたいと思います。


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