21日午後8時43分、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部(省に相当)長官と日本の岸田文雄外相が外務省飯倉公館(東京都港区)を出た。報道陣の前で握手し、扉を閉めてから3時間13分後のことだった。その表情にはまだ緊張感が残っていたが、中に入った時より明るかった。2人が密室の中で交渉中、ドアの外では「朴槿恵(パク・クンヘ)大統領と安倍晋三首相が22日に駐韓日本大使館と駐日韓国大使館で開催される韓日国交正常化50周年記念行事に相互出席することで合意した」と発表された。2年半もの間、後退するばかりだった韓日関係が、ついに一歩前進したのだ。
この日の交渉は張りつめた緊張感の中で行われた。双方はあいさつ程度の簡単な会話を交わし、異例なことに冒頭発言も省略したまま、すぐに本題に入った。韓国側からは柳興洙(ユ・フンス)駐日韓国大使と李相徳(イ・サンドク)外交部北東アジア局長、日本側からは杉山晋輔外務省外務審議官と伊原純一同省アジア大洋州局長らが同席した。
会談の開始に先立ち、尹長官は宿泊先の帝国ホテル(東京都千代田区)で韓日の報道陣と会い、「(これから)韓日首脳会談が実現するにはさまざまな整地作業が必要だ。両国関係の改善を阻む複数の障害が一日も早く取り除かれれば」と語った。
交渉に先立ち、NHKなど日本の各メディアは「韓日両国が一定の妥協をする可能性が高い」と報じた。「明治日本の産業革命遺産」を国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産に登録することに関連し、日本が韓国の主張をある程度受け入れ、その代わりに韓国が世界遺産登録に同意するよう求めたというものだった。韓国側が日本の提案を受け入れれば、日本は今後、世界遺産候補地23カ所のうち、強制徴用が行われた7カ所について「韓国人・中国人など周辺国の国民が過酷な労働にさいなまれた」という内容の展示をする可能性が高い。
会談後、宿泊先に戻った尹長官は、韓国の記者らに「世界遺産問題にいては、両国が互いに共助・協力していくことで意見が一致したので、こうした良好な協力例を通じて今後、他の問題においても好循環の方向へ進むと期待する」と語った。また、従軍慰安婦問題については「韓国の見解を明確に伝えた」と述べた。