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 「じじいだからといって、黙っておるわけにはいかん」。今月12日、東京。かつて自民党に所属した重鎮ら4人が、国会で審議中の安全保障関連法案に反対を表明した。元新党さきがけ代表、武村正義さん(80)=大津市=もその1人。多くの国民は法案に納得していない――。「黙っていられない」胸の内を、さらに語ってもらった。

■「安倍さんは聞く雰囲気がない」

 今月10日、山崎拓・元自民党副総裁(78)から「飯でも食おう」と電話があった。国会前のホテルに着いたら、自民党時代に政調会長を務めた亀井静香・衆院議員(78)=無所属=、古賀誠・元自民党幹事長(74)、藤井裕久・元民主党幹事長(82)がいた。

 戦前生まれで、自民党に関わりのある者ばかり。一筋縄ではいかない連中だが、今回ばかりは「日本は終戦以来、最大の危機だ」「これ以上、安倍政権に黙っていられない」という意見で一致した。首相に会い直接進言しようとも思ったが、「安倍さんは謙虚に聞く雰囲気がない」と断念。だから12日、所用のあった古賀さんを除く4人で、日本記者クラブでの緊急会見に臨んだのです。

 安倍さんは70年続けてきた日本の平和主義をがらりと変えようとしている。

 海外で武力を行使しない国が、武力を行使できる国へ。日本が外国で戦争に巻き込まれる可能性が格段に高くなるのは間違いない。日本の最大の抑止力だった「専守防衛」が崩れていく。日本は専守防衛を貫くことで、多くの国から高い信頼をかちえてきた。

 集団的自衛権の行使を認めようとする政府の新3要件は表現があいまいで、わかりにくい。「後方支援」は相手国からみれば、かっこうの攻撃対象となり、リスクが高まる。

 何より、今回の安保政策の進め方が荒々しい。議論が未成熟なまま、何もかもケリをつけようとしている。仮に強行採決するようなことになれば、大きな禍根を残すでしょう。安倍さんは強気一辺倒の男だから突き進む可能性もある。だが支持率の低下などを懸念して、相当思い悩むのは間違いない。

■なぜ自民党は静かなのか

 そもそもブレーキをかける動きがなぜ自民党から出てこないのでしょうか。

 私は自民党で安倍さんのお父さん(安倍晋太郎元外相)の派閥に8年ほどいました。晋三さんは、私が自民党を離党した1993年に初当選。重なることはなかったけれど、仕えてきた人の息子だという身近さは感じていました。

 晋太郎氏は様々な意見を聞いたうえで、これだという意見は採用する政治家でした。当時は自民党そのものにもっと包容力があったように思います。1年生議員だった頃、リクルート事件が明らかになりました。私は有志と、当時の竹下登首相や安倍晋太郎幹事長に「(首相や幹事長を)いったんお辞めになったらどうか」と申し入れた。最高に生意気な内容ですが、お二人は「そうかそうか」と率直に聞いてくれました。モノが言えるという雰囲気はありました。

 それが今は地方議員も含めて、とても静かだ。世代の変化ということかもしれませんが、これで政党と言えるのか。小学5年で終戦を迎え、戦後の貧しい時代を生きてきました。政界は引退したけれど、この国の行方は心配だ。これまでの成功や失敗の体験を生かし、今後も思いを発信していきたいと思います。