梅雨空を吹き飛ばすようなパンチのきいた作品が目白押し!
第1位に輝いた、沙村広明先生の最新作のテーマが「ラジオ」だったり、ゲイアートの巨匠・田亀源五郎先生の初の一般誌連載作品がランクインしたりと、マンガ好きの心を躍らせるような作品が出そろいました。
我が道をゆく主人公たちの生き様に(ちょっと憧れつつも)、ツッコミを入れながらお読みください!
(2015年5月1日~5月31日発売作品を集計)
第1位(334ポイント)
『波よ聞いてくれ』 沙村広明
『波よ聞いてくれ』
沙村広明 講談社
札幌のカレー屋で働く鼓田ミナレは、失恋に絶望して飲んだくれていたところ、たまたま出会ったFMラジオ局「MRS」のディレクター・麻藤兼嗣に自分の失恋トークを収録され、放送されてしまう。このことが縁で、ミナレはラジオパーソナリティへの道を歩みだす。
テンポのよい映画を思わせるセリフまわしや、感情のおもむくままに突っ走る主人公ミナレの爽快な生き様が共感を呼び、多くの名作でもはやマンガ界の頂点にのぼりつめたといっても過言ではない(!?)著者が、早くも新感覚の傑作を生み出したと話題集中です!
オススメボイス!
■ラジオ中の軽快なトーク、スピード感あふれる展開はやみつきになる。すごいマンガが始まった。(ふな/ブログ「はてなで語る」管理人)
■パンとスープカレーの店VOYGERに勤める主人公・鼓田(こだ)ミナレが、ひょんなことからFMラジオDJにスカウトされる話。なのだが、計算高いわりには激しすぎる性格から、突っ走りすぎる主人公で、物語の行方を伺う前にブチブチに詰め込まれた設定が綴られた第1巻という印象。エログロ路線でない、人間万事塞翁が馬なこのドラマは、2巻でどう化けるのか目が離せない(今村方哉/レコード会社勤務)
■基本的に、才能が開花する物語として読んでいるが、でもやっぱり、「『マトリックス』で目覚めたキアヌ・リーブスみたいな濃い演技はその辺にしてさっさと出ていってくれませんかね?」とか「……カメってすげえな 自分のウンコ浮いてる水のなかで餌食ってんだもんなぁ……日本の政治も同じだよな」「いえばいいってもんじゃねーぞ」とか、セリフ一つひとつに貼り付けられたギャグが楽しくて仕方ない(紙屋高雪/ブログ「紙屋研究所」管理人)
■ラジオをテーマにした作品がもともと好きだったが、よりにもよってあの沙村広明が! おもしろいに決まってるじゃないかぁ! ヒネた人間描かせたらピカ1です。(太田和成/あゆみBOOKS五反田店コミック担当)
■まさかのラジオマンガ。タイトルの秀逸さは本年度NO.1!(浜波孝至/BOOKSなかだ魚津店営業担当)
■絵と文字で構成されるマンガで、音しかない「ラジオ」という世界を描くというのもさりながら、登場するキャラクターたちの個性がぶつかりあっていて楽しい(soorce/オヤジ漫画系ブロガー)
■沙村広明の現代劇&コメディは大好物でして。圧倒的なテンポ感、セリフの切れ味のよさがたまらない(後川永/オタク系よろずライター)
■妙に軽快なテンポでリアルに基づく生活感と物語のフィクション感を、同時にもたらしてくれているのがさすがです(kaito2198/海外翻訳者)
■沙村さんの作品で「今度こそ間違いなく人死にが出ないマンガ」だそうです。今のところは、主人公・鼓田ミナレさんの暴走以外は大丈夫そうです。そして、それが楽しみです(小山まゆ子/フリーランス編集/ライター)
■沙村広明作品らしい、いい感じにネジの外れた主人公の破天荒っぷりが楽しい(フラン/ブログ「フラン☆Skin」管理人)
「日刊マンガガイド」でのご紹介は、コチラ!!
ロングレビューでのご紹介はコチラ!!
第2位(212ポイント)
『弟の夫』 田亀源五郎
『弟の夫』
田亀源五郎 双葉社
弥一と夏菜の父娘2人が暮らす家に、マイク・フラナガンと名乗る巨漢がカナダからやってきた。
マイクは、10年前に家出した弥一の双子の弟・リョージの“結婚相手”だった。幼い夏菜は突如現れたカナダ人の叔父に興奮するが、弥一は“弟の夫”マイクとのつきあいに頭を悩ませる。
ゲイマンガのオーソリティとして知られる著者の最新作。
その物語づくりの巧みさは、ジャンルを超えて多くの人に支持を受けています。
オススメボイス!
■ゲイコミックの実力派・田亀源五郎先生初の一般誌連載作品の単行本。亡き弟の「夫」であるカナダ人男性・マイクの来訪にとまどう日本人男性・弥一ととその幼い娘の姿をとおして、家族の多様なあり方や葛藤をていねいに描く心優しき野心作。この先も注目していきます!(川原和子/マンガエッセイスト)
■ついに田亀先生が一般誌にきてくれた! これまでの田亀作品を半歩だけ外の世界とつながらせた世界観とでもいうか、性描写抜きになったぶん、田亀先生の「気持ちの流れを描くうまさ」が、田亀作品を気になっていたけど、買いづらかったであろう人にでも伝わりやすいすばらしいすべり出し(劇画狼/漫画始末人)
■ある父娘のもとへ、父の弟が結婚相手としてカナダ人男性を連れてきたことから始まるファミリーストーリー。先入観のない少女の視点で照らしながら、同性婚など海外の事情を含めたゲイの諸相について示唆を多く与えてくれる内容。それも、あくまで読みものとしてのおもしろさのうえで、というのがいいですね(宮本直毅/ライター)
■だれも描いたことがないタイプのマンガ文法を、着々と切り開いていると思う(大西祥平/マンガ評論家)
■「ゲイポルノマンガの大家」に関心はありながら、初めてゲイの人と接する男の戸惑いと気づきは、そのまま読者にも通じるなぁと。「弟の夫」という距離感がちょうどよい(ナデガタ/漫画感想ブログ管理人)
■同性婚の合法化への動きが注目を集めるいっぽうで、やおいブームなどで歪んだ同性愛イメージが氾濫するなか、「同性愛とは?」「人を好きになることとは?」「家族とは?」といった極めてシンプルな問題を描く注目作。予備知識のない子どもでも、自問自答しながら学んでゆけるヒネリを排した平易で率直な語り口がすばらしい(井口啓子/文化系ライター)
■静かで心地よく緊張した、笠智衆のような空気感である。畳の上数十センチで固定されたカメラが、独特の閉塞感とあたたかみを生む。そうしたホームドラマのなかにマイクという屈強なゲイが入り込むことで異化効果をもたらし、この家庭に欠けていたものの大きさを浮き彫りにしていく。てらわず、淡々として、しかしドラスティックな心情の変化を経験できる見事な作品(raven/ディレッタント)
■ようやく心穏やかに田亀先生のマンガが読める日がきたと思ったら、別の意味で穏やかでいられず。ただ劣情はなく、心地よく気持ちをかきみだされる(侍功夫/映画評誌「Bootleg」代表/映画ライター)
■今年3月末日、東京都渋谷区で「同性パートナー条例」が可決・成立。LGBTについて考えるのには、最適のタイミングでリリースされたことにも意義がある。あと各話の引きがうますぎる。第6話のラストの1コマにグッときた(加山竜司/フリーライター)
第3位(194ポイント)
『岡崎に捧ぐ』 山本さほ
『岡崎に捧ぐ』
山本さほ 小学館
著者の幼なじみ・岡崎さんとの奇妙な友情を描いたノスタルジック・エッセイマンガ。
ゲームにおもちゃ、流行、マンガにアニメといった90年代カルチャーがふんだんに盛りこまれて、20年前は小学生だった世代なら直撃のはず!
ところどころに見えるちょっとした毒気も、絶妙なスパイスになっています。
オススメボイス!
■子どもの頃の記憶を、子どもの頃の倫理観のままに、大人の技術でもって再構成したら、少々奇妙でめっぽうおもしろいマンガになった。これは我らの時代の『ちびまる子ちゃん』だ。2巻にも期待大。(小田真琴/女子マンガ研究家)
■もともとはSNSサービス「note」で描かれていた作品。作者の小学生時代の友人岡崎さんとの出来事を描いています。作者の独特の観察眼が作品に色濃く出ており、それがこの作品のユーモアやペーソスとしてよく表現されています。テレビゲームが良く作品内に出てくるのですが時代背景を表すアイテムとして有効に使われています。作者がTwitterで載せている、ひまつぶしマンガも非常におもしろいのでそちらも(ゴロー/AV男優)
■心に染みてきて、懐かしい時代を思い出す。まぶしかったあの頃を、大人になった今だからこそ振り返りたくなった(ふな/ブログ「はてなで語る」管理人)
■掲載誌を毎回楽しみに待っている唯一の作品。『ときめきメモリアル』に興じる2人の女子小学生があぐらをかきながら「おい!! 水野!! 水野きた!!」「水族館!! 水族館!!」と叫ぶセリフの乱暴きわまるリアルさに打ちのめされる。ウチでは小2の娘とこのセリフをいいあって笑い転げています(紙屋高雪/ブログ「紙屋研究所管理人)
■ネグレクトの友人の家に入りびたり、ゲームばっかしていた山本さほさんの小学生の時のあれこれ。リアルによく考えたらやばいけど、ほのぼのした絵と構成力で当時、同世代だった人はもちろん、そうでない人も楽しく読めちゃう不思議。2巻が待ち遠しい。(宮川元良/恵文社バンビオ店 店長)
■懐かしい90年代の流行り物の数々が前面に描かれる一方で、岡崎さんの家庭環境や存在を消した高田くんなどの思い出のダークサイドも描きこまれているあたり、単なる流行りものマンガにはないエグみも感じ取れる。岡崎に幸あれ!(漫画トロピーク/謎の社会人漫画サークル)
■世代に固有のなつかしネタを大いに含みながら、子どもならではの常識を逸脱した欲望(例:生クリーム一気食いなど)を狂おしく思い出させてくれる毒をあわせもった作品(川原和子/マンガエッセイスト)
■子ども時代に体験した出来事を大人になって思い返し、「あれはそういうことだったのか!」とその意味に気づくことがある。でも、大人になる前に感じていた一つひとつの具体的な物事こそが、ほんとうの真実なのだ。子どもの世界のほんとうが、楽しく、おバカに、容赦なく、そこにある(稲垣高広/ブログ「藤子不二雄ファンはここにいる」管理人)
■「今日は何して遊ぼう!」とワクワクしていた子ども時代の感情が久々に蘇った。そして『ハイスコアガール』を読みたくなった。(芝原克也/日本出版販売 コミックチームチーフ)
■作者とほぼ同世代なこともあり、出てくる事物、そして、人間関係の描かれ方の懐かしさに、笑いと涙を抑えられなかった。とはいえ、単にノスタルジーだよりの作品というわけではなく、作者の冷静な観察眼が随所で光っている。そこがいい(後川永/オタク系よろずライター)
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