『種まく旅人 くにうみの郷』 栗山千明史上最高に魅力のない千明さま、農水省の後援を受けて第一次産業の素晴らしさを訴える (柳下毅一郎) -2,868文字-
監督 篠原哲雄
脚本 江良至、山室有紀子
撮影 阪本善尚
音楽 松永貴志
主題歌 にこいち
出演 栗山千明、三浦貴大、桐谷健太、谷村美月、音月桂、根岸季衣、永島敏行、豊原功補
「アメリカ帰りの農林水産省官僚・神野恵子は、地域調査官として淡路島を訪れるが、現地の人々はそんな恵子をどこか胡散臭く見つめ、戸惑いをもって迎えていた。やがて恵子は、玉ねぎ作りにいそしむ農業従事者の豊島岳志と、その弟で海苔と共に生きる漁業者の豊島渉に出会う。2人は父親の死がきっかけで何年も仲違いしていたが……」
なんなんだこの映画。例によって地方発の地域おこし映画なんだけど、それがどういうつてをたどったのか農林水産省の後援を受けて第一次産業の素晴らしさを訴えることに。舞台は淡路島、と言えばタマネギか……タマネギ栽培の素晴らしさを映画で訴えようと誰が考えたか知らないのだが、そんなわけでストーリーは海彦山彦ネタである。問題はだね、この映画、なんと栗山千明主演なのだ! 千明さまの主演となればどんなクズ映画でも見に行かなければならない。ならないのだがこの役が本当にまったくもってひどく、栗山千明の魅力をスポイルすることおびただしい。かくして栗山千明史上最高に魅力のない千明さまが登場する!
アメリカ帰りの農水省エリート官僚神野恵子(栗山千明)は事務次官(永島敏行)から「頭でっかちなお前は日本の第一次産業の現状をもっと知らなければダメだ」と言われて淡路島への視察を命じられる。お出迎えする淡路島市(架空)の人々はとりあえず伊弉諾神宮の神事を見学させるが(観光映画的ポイント)、合理主義者の千明さまは無言で途中退出。市役所に顔を出すと、なぜか合コンの員数合わせに引っ張り出される。合コンに千明さまがあらわれたら大変なことになると思うのだが、この映画の千明さまはちっとも魅力的に撮られていないのでその心配はないのだった。なお、千明さまは映画のあいだほぼダボダボの作業着姿で農作業か漁業に従事しているだけなので、魅力を発揮する機会はここ以外も含めほとんどなし! 合コンにはタマネギ生産農家の豊島岳志(桐谷健太)が参加していた。え~農業とかダサーいとか言ってる女の子に
「土地を耕す者はもっとも貴い!」
といきなり農民の味方になって説教をかます千明さまである。頭でっかちのエリートというよりは第一次産業への愛にはあふれているが知識は何もない農漁ガールにしか見えない。千明さま、地元のイオンで淡路島産タマネギを買い、地産地消を旨とするレストラン〈風の郷〉のハル(音月桂)と仲良くなると、
「おにぎりにはすべてがありますよね~。海の海苔と大地のはぐくんだ米、山でできた梅干し!」
と謎の理論で海と山との一致を訴える。
tags: ご当地映画, にこいち, 三浦貴大, 地方発映画, 山室有紀子, 松永貴志, 栗山千明, 根岸季衣, 桐谷健太, 永島敏行, 江良至, 淡路島, 篠原哲雄, 谷村美月, 豊原功補, 阪本善尚, 音月桂
この記事の続きは会員限定です
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方はログインしてください。