【記者手帳】盗作疑惑、申京淑氏は沈黙をやめよ

【記者手帳】盗作疑惑、申京淑氏は沈黙をやめよ

 「申京淑(シン・ギョンスク)氏が『本で読んで手帳にメモしておいた文章を後で見て私が書いた文と錯覚した』と釈明していれば、この論争はとっくに下火になっていただろうに…」

 申氏の短編小説『伝説』の一部が故・三島由紀夫の短編小説『憂国』の盗作だとする疑惑が、作家の生半可な釈明と出版社・創批の無責任な対応のせいで拡大し続けていることに対し、ある文学評論家はこう言ってため息をついた。申氏がマスコミとの接触を絶ったまま沈黙しているため、世論の批判は強まる一方だ。

 小説家のイ・ウンジュン氏が16日に申氏の盗作疑惑を提起した際、文壇では「明らかな盗作だ」という意見と同じくらい「盗作と断定するのは言い過ぎだ」という慎重論も大きかった。かつて、三島由紀夫の小説は文学青年たちの必読書だった。申氏が強い印象を受けて何気なく同じような表現を使ったことも考えられ、同情する声もあった。

 『伝説』と『憂国』はテーマ、素材、あらすじが全く異なる。『憂国』は現実に苦悩した末、自分の意志を示すため心中する男女の物語であるのに対し、『伝説』は6・25戦争(朝鮮戦争)の現実に抑圧され、別離することになった男女の物語だ。一方は運命に抗い生きることを諦めた人、もう一方は運命により人生が狂わされた人を描いている。

 だが、申氏が17日、『伝説』が収録された小説集『ジャガイモを食べる人々』を出版した創批に宛てた電子メールで「『憂国』を知らない」と否定したため、文壇でも擁護論が下火になった。ある評論家は「疑惑が持ち上がって間もないとき、申氏と連絡のついた作家らが『ミスを認めて謝罪した方がいい』と勧めたが、申氏は彼らとも相談せず創批にメールを送り、誰もが驚いた。もう文壇で申氏を助ける人はいない」と明かした。申氏としては悔しいだろうが、これが現実だ。

 作家らは出版社の創批にも批判の矛先を向けている。17日には「いくつかの文章が似ているとしても、これを根拠に盗作をうんぬんするのは問題だ」と申氏を擁護していたのに、翌日になって「盗作を提起してもおかしくない」と立場を一変させたためだ。評論家の一人は「創批は論争に火をつけておいて、その火が大きくなると自分だけ生き残ろうと逃げ出した」と非難している。

 こうした中、作家らは「もはや申氏が結者解之(原因を作った者が解決する)しかない」と断言する。申氏の説得に当たったある作家は「読者たちが納得できる説明が必要だ。作家として読者への礼儀を守るべき」と指摘している。だが、申氏と連絡のつく同業者はしだいに減っている。申氏が沈黙と孤立を続けるほど、申氏への批判ばかりが強まる。今では『伝説』と『憂国』の状況設定が似ているという指摘さえも出ている。

 盗作疑惑により、韓国文学全体が笑いものになっている。申氏は沈黙を破って出てくるべきだ。そうすれば周りの作家たちも手を差し伸べるだろう。今回の騒ぎは文壇が共に癒していくべき傷なのだから。

朴海鉉(パク・ヘヒョン)文化部・文学専門記者
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