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甘さの源
四度目ともなれば、正直新鮮味も何もない。
とりあえず目の前にいるのがルトじゃなくてホッとしている自分がいるくらいか。
自分にそのつもりがなければ心配もいらない、なんて保証はない訳で。
逆につもりがあってもそうならないこともある。
セル鯨さんなんかは、従者になって欲しいくらいだったけど、お互い思うこともあって契約には至らなかった。
従者として迎えるってことは、少なからず種族と切り離す意味を持つ。
あの人は海王と、今となっては亜空の海の柱だ。
一時的に僕と行動したりする程度ならともかく、契約を結び、“僕の”従者にするのは少し気が引けた。
セル鯨さんも契約をして立場を定めるよりも、海の民のひとまずの代表として、あくまで住民として僕に従う形がいいと言っていた。
実力的に言っても立場的に言っても、海王の長である彼は海の管理者さえこなせるんだから僕の従者なんて勿体ないくらいだ。
海には管理する上位竜は存在しない。
そして海王族は、聞く限り太古から存在する海の強者。
上位竜の代わりにいるんじゃないか、なんて邪推してしまうような種族だよな、海王族って。
「真様。何をお考えですか?」
契約の儀式の為に描かれた陣の中、トウダが話しかけてきた。
気が抜けていたのを見抜かれたかな。
赤色の光に包まれた僕らは光が収まるのを待っている。
儀式といっても、僕らの場合当事者が何かすることはない。
巴達がさくっと進めてくれているからだ。
最初の巴の時はあいつ任せだったし、次の澪の時は僕が意識不明。
識の時は巴と澪が使用済みの指輪を識に混ぜ込もうと企んでいたから一切手を出してない。
契約に関しては本当に何もしてないな、僕って。
「いや。従者を増やすのも久々だなあってね」
「そのご決断を真様が後悔されることのないよう、公私に渡り何事においても全力で支えとなることを誓います」
「ありがとう」
まるで結婚の誓いでも聞いてるみたいな気分になる言い方だ。
……。
それにしても、トウダの言葉はどれをとっても僕の中に素直に入ってこない。
疑い深くなってるのかな。
支配の契約を結べば滅多な事は出来ないし、それを望んでいる以上、凶悪な企ては不可能だと思ってるんだけど……。
安心は出来ないのかもな。
ただ、今回は僕自身それをある程度納得して彼女を迎え入れるつもりでいる。
もちろん防衛戦力として期待もしているけど、ね。
疑う。
……そう、疑う、だ。
自分で気付いてしまった以上、見てみぬ振りは出来ない。
僕とトウダを包んでいた赤い光が、向かい会う僕とトウダの間にも壁の様に出現してきた。
いよいよ契約も終わりだ。
問題なく終了する兆し、いつも通りの進行。
さて、トウダはどんな姿になるのかね。
元々人型だし、見た目はそうそう変わらないと勝手に推測してる。
これが支配の契約である以上、まさか人型じゃなくなるって事はないだろうしな。
変化の必要がない僕のいる方から先に光が収まっていく。
「……」
トウダを包む光が収まるのを静かに待つ。
彼女の名前は、桜にしようと思ってる。
安易だけど桜のある神社にいて花見の日に契約だから、それでいいかなって。
「これが、私の新しい身体……」
予想はしていたけど全裸のトウダがうずくまった状態から顔を起こしてそう呟いた。
なんだ、何かが……。
トウダは無造作に立ち上がって持ち上げた両手を見つめ、次いで肢体に視線を移していく。
そうか、若いんだ。
見た目の年齢にあまり意味はなさそうだけど、トウダは僕よりも結構年上に見えた。
そう、二十台半ばくらいに感じた。
なのに今の彼女は十代の身体を晒している。
この世界で培った僕の美人外見年齢全裸版指標によると間違いなく十代だ。
ああ、何ていうか見慣れるんだな。
全裸のトウダを真正面から見ていても動じない自分に少し感動した。
「気分はどう? 問題はない?」
「真様……素晴らしい気分です。支配の契約でここまで力が上がるとは思ってもみませんでした。この力で真様に再度挑みたいという願いが永遠に叶わなくなったのは、残念ですが」
支配の契約があるからなあ。
僕が許可しても全力で戦うのは難しいらしいんだよな。
巴達もよくぼやいてる。
全力でやれればもう少しもつのに、って。
悪戯っぽく笑いながら言ったトウダもそんな気分なんだろうか。
「若返り。識の例もあるから、おかしなことでもないですな」
「骨から人になるんですもの。見た目が小娘になる位、さした変化でもないでしょう」
巴と澪は冷静にトウダを観察している。
巴は少し嬉しそうだな。
そりゃそうか。
トウダの見た目の変化は外見年齢の他にもう一つある。
髪だ。
黒かった髪の色が、深く暗い緑色に変化していた。
森の色ってとこか。
だけど彼女は火を得意としていて日本の神様に仕えていた。
なのに、緑か。
黒のままの方がまだそれっぽかっただけに、意外だった。
「流石に人型から逸脱することはありませんでしたね」
識は何気に僕と同じ事を考えていたのか、まじまじとトウダを見つめながら短く呟いた。
トウダは自分の姿を確認して、何度か頷いた後に呪文を呟いて巫女衣装をまとった。
早着替えの魔術なんてあるのか。
便利だな。
「では真様。私に名前を頂きたく存じます」
「ああ。トウダの新しい名前は、さ……」
「?」
桜、と言おうとして何故か僕は言い留まった。
突然、違う名前を閃いたからだった。
どうする?
いや。
桜は駄目だ。
僕がもう違和感を抱いてしまっている。
そんな名前を人に贈るのは違うと思う。
「若?」
「若様?」
巴と澪が言い淀んだ僕を心配そうに見つめる。
「ごめん。新しい名前は、環、だ」
「たまき……ですか」
「うん、改めてよろしく」
どうしていきなり環なんて浮かんだんだろう。
知人でもそんな名前の人は一人もいないんだけどな。
「はい。真様、先輩の皆様。今日この時から私は環です。よろしくお願い申し上げます」
深々と頭を下げるトウダ改め環。
僕の新しい従者。
だけど、巴達とは明らかに意味合いの違う従者だ。
「……じゃあ巴。後のこと、任せるね」
「は、亜空の掟をしっかり教えておきましょう。こやつも使うことになるでしょうから霧の門についても――」
「それは、亜空内の移動に関してだけでいいから」
「と、申されますと? 若?」
僕は答えず、軽く手を振るだけで背を向ける。
「ちょっと出かけてくる。花見が夜まで続くなら続けさせてあげてね。僕も夜には戻るよ」
そう伝えて、その場から消える。
部屋に転移して、適当に準備をして荒野に出た。
絶野と呼ばれたベースのあった場所の近くに転移して、そのままある方向にずっと跳んだ。
この辺りの魔物は手を出していい相手かどうかをある程度察知できる奴が多いせいかエンカウントもなく、僕は一時間と経たずに目的の場所に辿り着いた。
「確かこの辺りだったなあ」
見渡す限り代わり映えのしない赤茶けた大地がどこまでも続く景色。
僕の異世界生活、始まりの場所だ。
本当に面白いほどに何もない。
そして、こんな世界の果てでさえ、僕はもうほんの短時間で来ることができる。
その事実も何だかおかしくて、笑えてきた。
「思えば、あっという間だったよな」
誰に聞かれることもない独り言。
異世界に来て、巴に襲われて、亜空なんてものが手に入って、澪にも襲われて……。
変わらないと、って何度か思いながらも、自分の根底は変えることなくここまで来た。
……つもりだった。
僕は、変わった。
いつの間にか変わっていた。
少なくとも日本にいた頃の僕とは、全く違う存在になった。
敵対して、命を狙ってくるなら反撃するのは仕方のないことだし、結果その命を奪ってしまってもそれも仕方のないこと。
“その程度”の考えまでなら、まだ普通なのかもしれない。
でも、今の僕は違う。
命のやり取りが呼吸みたいに自然なことに思えてる。
最初は、確かに殺意を向けてくる相手にだけだったはずなのに。
少し前には戦う意思を持って戦場にいる全て。
そして今は、およそ生まれた命全部。
奪ったり奪われたりするのは、自然の流れだと思ってしまっている。
ヒューマンも亜人も、生きているだけで他の命を奪っているんだから。
冒険者が欲をかいて魔物に殺されるのも、街に魔物が流れ込んで住民が皆殺しになるのも、同じような事だと感じてしまっている。
日本で高校生をやっていた頃なら、ここまで命を軽く感じてなかった。
いつからだろう。
変異体がロッツガルドで暴れたあの時から?
それとも女神の意思に逆らえず、結局リミアの王都で戦わされた時から?
魔族を含めて色んな国を訪問している時?
わからない。
もしかしたら亜空で家畜として飼っている牛やら羊やらと話をしながらも、彼らを普通に食べられるようになった頃からかもしれない。
ただはっきりと自分の変質を感じたのは、リミアで先輩と話した少し後だ。
戦いや命についての僕の考えが、恐らく兵士の大多数がするような割り切りとは全く違うものだと感じ始めた。
正直、今の僕は道徳というものが恐ろしく薄っぺらいものに感じられている。
怖い。
思考の表面上は正しいと感じているはずの道徳や生命観が、自分の深部には全く浸透していないような、異様な感覚がある。
だからなのか、最近僕自身、一人で考える機会が増えたように思う。
商会の事や亜空の事は巴達に相談して色々決めたりするようにしているけど、自分の事だと話は別だ。
自分自身についてどうするかは、誰かに相談することじゃない。
それは、僕が自分だけで決めるべきこと。
他者の意思は、それが誰のものであれ必要ない。
「殺し過ぎたのが原因だとしたら、もう戻れるようなもんじゃないし、それは仕方ないことなんだろうなあ」
殺しに慣れ過ぎた結果が、僕にとっては呼吸と同じレベルでそれを身近に感じる、って事ならそれはもう手遅れだ。
既にそうなってしまっているんだから。
「ま、普通に振舞えない訳じゃない。常識的に振舞って見せるのも無理じゃないんだから、これはいいや」
例え命にどれほど価値を感じずとも。
命は大事だという体でいることは出来る。
深く付き合う相手ならともかく、大抵の人と話す上ではボロは出ないだろう。
「問題はもう一つの方だよな。僕だけの問題じゃなくなるからこっちのがまずい」
自分の事を考えていく内に気付いたもう一つの問題。
それは、僕があるものから意図的に目を背けてきたってこと。
無意識にそうしてきた部分もあるし、意図的にそうしてきた部分もある。
要するに重症だ。
僕は……。
「悪意ってのから、逃げ続けてた」
他者から自分に向けられる悪意。
世の中に偏在する悪意。
日本でも、異世界でも。
僕はそれらから逃げ続けてきた。
向きあう位なら思考を放棄して騙される方を選んできた。
将来だって漠然と弓の道場を師匠から引き継いで、僕自身の弓の修練の傍ら、習い事の弓を教えて暮らしていければ、なんて考えてた。
結婚も、適当な年齢で誰かとして、って。
もちろん具体的な相手の像はない。
道場が無理そうならどこか地元の役所で公務員とか、とにかく漠然としたものを考えていた。
出世とかで同期の人と競争するなんてイメージできないし、僕には向いてないと思ってた。
政治がどうこうなんて考えても変えられるものじゃないから、知るだけ無駄、見るだけ無駄だと思ってた。
考える意味もないし、天才でも秀才でもない僕がやる事じゃないって思ってきた。
……弓と趣味があれば人生それで良かった。
これに……尽きる。
それは、異世界に来てからも変わらなかった。
最初はただ難しい事から逃げてるだけかと思ったけど、世界の歴史とか魔術の仕組みとか、そういうものには取り組めたから違うんだろう。
冒険者の悪意、商人の悪意、欲が全面に出てるこの世界だと、やたらと僕にもそんな企みが向く事があったし、関わる事も多かった。
その度、僕は対策してもその根元は放置するような中途半端な対応をしてきた。
もしくは巴達に任せたり、だ。
レンブラントさんとこの呪病が特に凄かったけど、あれだって元凶についてはあんまり事は気にしてない。
そんなものに曝されて死ぬ人がいるなんて冗談じゃない、って思っただけだ。
イルムガンドみたいな半分精神病みたいなおかしな奴の言いがかりだって、まともに相手をしなかった。
脅威にはならない相手なんだから、それでも刃向かってくるなら力で対処しようってなもんだ。
背景には目を向けなかった。
だってさ。
そんなドロドロした気持ち悪いものに、誰だって触りたくない。
できることなら知らずに過ごしたい。
そうだろう?
もっと早く僕が決意をしていたら、色んなことの結末が変わったんだろうか。
今となっては、そんな下らないことを考えてしまったりもする。
たらればがどの位無意味なものか、それもこの世界に来て良くわかってるのに。
「トウダ、環が僕に向けたあの目は、悪意、に似てた」
複雑な色の感情だったとは思う。
悪意といっても、それだけじゃなかったとも思う。
畏怖や好意も確かにあったから。
でも悪意もあった。
あの妙な雰囲気というか、重圧も、思い返せば女神に無茶を言われた時やロナやゼフと初めて会った時の感覚に似てる気がする。
そう、何かを押し殺した目だ。
あの目をとうとう亜空でも見た時、思ったんだ。
もう駄目だなって。
「……だから環は亜空から出さない。あいつは亜空を死守する従者になってもらう」
これなら僕への悪意はそんなに問題にならない。
契約も結んだしね。
普段から神社と他の神殿を管理してもらうんだから一石二鳥でもある。
「……じゃ、行くか」
始まりの場所で、僕は一つ決心をした。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「おお! ライドウ殿、久しいな」
「ご無沙汰しています、レンブラントさん。間借りさせて頂いている身であまり顔も出さず、すみません」
「気にしなくていい。こちらからも話したい、いや相談したい事があったので一度都合を聞こうと思っていた所だよ」
夕暮れ時。
僕はツィーゲのレンブラント邸を訪れていた。
出来るだけ早く会いたいとアポイントを取ろうとしたら、夕方には時間を作りますと受付の人から返答をもらった。
まさか忙しいあの人が当日で会ってくれるなんて思ってもみなかった。
「相談、ですか? レンブラントさんが僕に? もしかして、娘さん達のことで何か?」
シフとユーノにはおかしな真似はしていないし、あの二人に密告されて恥じるような事もしていない。
もしそちらからの相談なら、特に気構える事もないか。
「いや、あれらは充実した毎日を送っているよ。ライドウ殿のおかげでな」
「そう思ってくれているなら嬉しいです」
「思っているとも。で、ライドウ殿の用件は何かな? 私で出来る事だとよいが」
私に出来る事なら、か。
僕が知る限り、この人が一番適任なんだよな。
多分。
「ええ――」
少し間を空けて。
僕の中にある決心を確かめる。
「僕に、人の悪意を教えてください」
「っ、……ほぅ。悪意、かね。これはまた不思議なお願いだ」
「悪意というか、世の中というか。どう形容していいのか、ちょっと僕自身わかりかねているんですけど……」
レンブラントさんと、横に控えていたモリスさんの目が細まるのがわかった。
僕の言葉の真意は、受け取ってくれたと思う。
「これまで、僕は商売や他の事について……理想ばかり見て力尽くで実践してきました。でも、もう目を背けている段階じゃないと、そう感じました」
「だがそれでライドウ殿は上々の結果を残してきた。商品を手に取るお客様だけを見て、それで大成への道を進む商人など滅多にいるものじゃあない」
「その通りです、ライドウ様。貴方は他の誰にも出来ない方法で商いを拡大し、お客様の満足を得ている。今では大国から名指しで招かれ、その名を覚えられる所にまできた。これは誇ってよい事です」
レンブラントさんとモリスさんが僕の自虐めいた告白に、慰めの言葉をくれた。
確かに大国から名前も覚えられたし、口には出せないけど魔族とも繋がりを持てた。
商人としては何故か上手くいっている。
何故か、に過ぎないんだ。
「商売のやり方を根元から変えるつもりはありません。ただ、どんな危機に直面しても、たまたまじゃなく世の中を見通してなるべくして乗り越えられる商会になる為に、僕自身がおよそ人の悪意というものから目を背けていてはいけないと思っています」
現実を見て、今まで見ないようにしてきて尚見る羽目になった人の汚さをより深く知る。
結果ヒューマンどころか、他の亜人まで気持ち悪い存在に見えてくるかもしれない。
商会への商人や貴族からの認識を変えるには、巴達に頼ってばかりいても駄目だ。
代表の僕が今のままじゃあ、精々潰せない商会としか考えてもらえない。
クズノハ商会を、手を出すことすら禁忌な商会という認識にするには代表の僕こそが現状で一番のネックなんだ。
甘さを捨てないといけない。
何度も考えるだけはしたことだ。
でもようやく。
どうすればそれが出来るかわかったんだ。
今度こそやりきれる。
喉元過ぎれば、なんてことにはならない。
僕はそれから目を逸らしているからこそ……甘かったんだ。
「……それで私が商人として腹に抱えてきた黒いものを教えて欲しいと、そういう訳かね」
「はい」
「知れば、後悔するコトもある。ライドウ殿なら人の抱くちっぽけな負の感情など蹴散らして進めると私は確信しているが……それでも学びたいのかね。折角、思考を放棄して理想だけを追ってさえ成功できる希少な条件を満たしている立場だというのに」
「……はい。商売に限らず、生きていく上でも逃げ続けられるものではないですから」
「君ならそれも可能……と、ライドウ殿自身が既に決心しているのなら、あまり他人が口を挟むものでもないか」
レンブラントさんが短く嘆息して、口をつぐんだ。
僕も、彼の返答を待つしかない。
目を閉じて思案していたレンブラントさんが頷くのと同時に目を開き、モリスさんを見る。
静かに頷くモリスさん。
「……わかった。私に教えられる範囲で、どういった考えが世に溢れ、まかり通っているかを教えよう。幸か不幸か、このツィーゲにはその教材が腐るほどにある。ただ、これは私の個人的な願いだが、ライドウ殿。君の客への姿勢はどうか今日のまま、変わらずにいて欲しい」
「はい。レンブラントさん、ありがとうございます!」
「しかしまさかライドウ殿の口から並みの商人になりたい、というような発言を聞くとは思わなかったよ」
一転、優しい表情に戻ったレンブラントさんが身体からも力を抜いて笑った。
「そ、そうですか」
「ロッツガルドでさえ、半ば力押しで制圧したからね。ますますライドウ殿の行く末が楽しみになっていたところだ。まさか躓かんとは思わなかった」
「僕としては結構躓き通しだった気でいるんですが……」
学園での商売はツィーゲほど順調だったイメージがない。
「ここと違ってギルドが必ずしも味方ではない訳だからね」
「確かに、ツィーゲに比べてギルドや他の商人との関係が作りにくかったように思います」
「ははは……」
レンブラントさんが含みのある笑いを漏らした。
モリスさんも、同種の表情のまま数度頷いている。
?
「あ、それでレンブラントさんの用件とは何でしょうか。まだ伺っていませんでした」
なんとなく居心地の悪さを感じて話題を変える。
「なに。ライドウ殿の決心に比べればさしたる事じゃないんだが」
愉快そうな顔のまま、彼はテーブルに肘をつき。口元で両手を組んだ。
演技めいたその所作に、一々迫力がある。
僕は黙って次の言葉を待った。
「近々この国で革命が起こる。それについての相談だ」
「は、かく、めい?」
え?
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