挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
月が導く異世界道中 作者:あずみ 圭

四章 クズノハ漫遊編

163/187

翌朝の二人

新年最初の本編投稿です。
皆様、今年もよろしくお願いします。
「もう具合はいいようですね、響」

「ええ。矢が肩に刺さっただけですから大したことは。お見舞い、ありがとうございます」

「見舞い?」

 澪の言葉がそこで途切れ、響と澪二人だけの部屋に沈黙が訪れた。

「あ……彼の方は怪我は大丈夫ですか?」

「あんなもの、その場で治しておしまいですわ。それよりも、響。色々と陰で動き回っているようですけど、若様と実際一緒に行動して、昨夜は手合わせまでして。いい加減、理解しましたね?」

「別に私は陰で動き回ってなんていませんよ、澪さん。でも確かに彼の強さは理解しました。貴女を従えるだけの実力を持っている、ってことは」

 響が噛み締めるように言葉を放つ。
 昨夜、響は真と手合わせをした。
 もっとも、手合わせだったのは響にとってだけで、真の方は明らかにその気がない戦いだった。
 結局ろくに攻撃も通すことが出来ず、響は真に擦り傷程度の怪我を負わせ、真は響の肩に矢を当てて終わった。
 真の降参を響が引き分けにした形だったが、響にとっては引き分けでも勝ちでもなく、負けの戦いだった。

「いただけませんね、響。若様の力を理解したのはともかく、私に隠し事ですか。王都を目指す道中、私たちにホープレイズ領を通過させたのはお前の差し金でしょうに」

「まさか。クズノハ商会の招待に際しては一部貴族からの強烈な横槍がありまして、ホープレイズ領についてはその影響が出た結果です。力が及ばなかったという点では私の責任もありますけれど」

「……では、そこで起こった事も何も知らないと、そう言うのね?」

「……はい。私や王族の方々は少なくとも。何か、起きましたか?」

「響」

「なんでしょう、澪さん」

「私達にとってはお前も王族も、地方の貴族も同じ……リミア王国にしか映りません。いざという時に、それは逃げ道になりませんよ」

「……」

 響の喉が微妙に動く。
 唾液を嚥下する微かな動きだ。

「調べなさい。あの程度はどうということもありませんでしたが、これは新しい貸しね」

「……わかりました」

「で? 若様の話だと、お前は頭が良いのでしょう? 何でもできる天才だと聞きましたよ」

「てん……真君、何を澪さんに吹き込んでるのよ……」

 澪の言葉に、響が一瞬呆気に取られたような、緊張感が抜け落ちた表情になった。
 同時にこぼれたのは真への愚痴の呟き。

「もう若様やクズノハ商会をお前は正しく理解したのではありませんか? お前の見解を聞かせなさい」

「……」

「さあ。ここ最近、私は随分とヒントを撒き散らしたつもりですわよ? これでわからないならもっとわかりやすくて、どんなに背けたくても目に焼きつく、形に残る何かが必要になるかしら」

「っ!」

「響……若様はなんです? お前の掴んだ情報と、出来の良い頭で出した結論は……なんですか?」

 最後通告を思わせる澪の冷たい声が部屋に響く。
 響は何かを逡巡していたが、観念したように澪を正面から見据えた。

「彼、ライドウこと深澄真君は」

「……」

「魔人ですね。彼こそが魔人。そしてリミアで私を助けた白い人物も」

 響の静かだが確信を持った言葉が、澪を笑顔にした。
 口元も目も。
 澪が満足げに笑っていた。

「よくわかりました。そう、若様がお前達に魔人と呼ばれている存在。そしてクズノハ商会の主」

「憶測は以前からありました。それがメイリス湖で濃くなって、そして模擬戦で確信になりました」

「お前を若様につけた甲斐がありました。それにレンブラントの娘にあのスーツを与えてやった甲斐も」

「クズノハ商会が作った新型防具の試作品、ですね。ユーノ=レンブラントという娘が使っているという……特撮スーツ。やっぱり、意図的な流出でしたか」

「当然です。お前には若様が魔人であり、そしてお前を助けもした存在だと思い至って欲しかったのですから」

「私は、彼に二度命を救われている……ですね」

「そう。一度目は御身を負傷されてまで。二度目は女神と取引してですが。結果的にどちらも若様はお前を助けてやっているのですよ」

「ええ、確かに」

「ならば恩人への態度というものを見せなさい。若様を見ていれば、お前にもよくわかったでしょう? あの方は戦争など望んでいない。お前達を助けたのは同じ世界の人だったから、に過ぎません」

「……」

「いいですね。協力しろ、などとは言いません。今後クズノハ商会を邪魔する行為だけは止めなさい。またお前の目の届く範囲で見かけたら止めさせなさい。若様はただ、人々の益になろうとされているだけなのですから」

 響が澪のいった、最後の部分に眉をひそめた。

「それは、どうでしょうか?」

「なんですって?」

「彼は、本当に商会の主として人々に良いものを安く用立てる、それだけの為に動いているのでしょうか?」

 響は反論した。
 それは彼女が見た真の一面から考えていたことでもある。
 そして、もし本当にクズノハ商会がその意図しか持っていないのなら、今のかの商会の在り方は矛盾する部分もあると彼女が感じているからだった。

「澪さんの仰る通りなら、彼はどうしてあそこまで戦闘技術を高めているんです? ただ商人としてやっていくなら、巴さんや澪さんがいれば、十分じゃないでしょうか。もとから強かったなどということは無いと思います。私も帝国の勇者も、最初からそれなりには強かったですが、彼の向こうでの能力を考えれば精々それと同じか誤差程度の違いしかなかったはず。なのに彼は私達とは明らかに違う異様なまでの力を手にしている」

「若様は世界の果てに落とされました。必要に迫られた結果です」

「その必要が! 戦争までを見据えているんじゃないかと……確かに彼から野心は感じませんでしたけど、何かの目論見があるんじゃないかと疑念を持たせるんです」

「お前は、若様と話をして尚そんな下らないことを考えているんですか」

「……彼とは話をしました。ですが、彼への不安は消えません。あの強さも、そして思考も。現代日本で、一般の家庭で育った筈の男の子が持っているであろうそれとは、あまりにもかけ離れすぎている。澪さんにお聞きしたいんですけど、彼は、真君は本当にあのまま変わっていって大丈夫なんですか?」

「そんなこと、お前が気にすることじゃありません。若様は若様の感じられたまま、変わるというのなら変わっていかれればそれで良いのですから。私はただついていくのみ。質問に答えるなら、全て良い、に決まっています」

「……クズノハ商会と彼にどう接するかは、まだお答えできません」

「……響」

「まだ! まだ時間はあるはずです。彼を知る時間も」

「……そう。そうね。もう少しだけ、待ちましょうか。若様とお話しがしたいのなら認めてあげます。ただし、絶対に話しだけですよ」

「わかっています」

「ふぅ。面倒なこと。ところで、響。私が蜘蛛だということはもう、知っていますね? あの巫女、目覚めているでしょう?」

「それ、はっ! ……はい、知っています。貴女が災害の黒蜘蛛だと聞きました。本当、なんですね?」

 いきなり自身の正体を響に明かした澪。
 このタイミングで告げられるとは思っていなかった響は動揺したが、それを認めた。

「ふふふ、あの巫女が若様をどう見たかは気になりますが、それはあとのお楽しみとしておきましょう。では、その前提で一つお前に情報をあげましょう」

「情報?」

「お前は若様の強さが異常だと言いましたが。あの方はこの世界に来てほんの二週間もしない内に蜘蛛だった私に遭遇しています」

「!?」

「お前や帝国の勇者とは時期にずれがありますから十日だかひと月だか、若様が来たのは遅かったようですけどね」

「じゃあ、彼は殆ど何の経験もないまま澪さんと、いえ災害の蜘蛛と戦ったんですか?」

 ありえない、と響は思った。
 この世界での戦闘にも慣れ、信頼できる仲間を得て、ようやくあれだけ戦えた蜘蛛と、そんな時期に遭って戦っていれば結果なんて考えるまでもない。

「ええ」

「あ……そうか。巴さん、あの人がもういたんですね?」

 響は動揺の中、真が従者と出会った順番を思い出した。
 澪は以前、自分は巴の後で真と会ったと響に話していた。

「若様はお一人で私と戦いました」

「うそ……」

「そして、少しだけお怪我をしましたが私を下しました。その時、この世界から災害の蜘蛛は消えたということですね」

「じゃあ、あの子、最初から馬鹿げた強さを得ていた? 女神の力も関係なく?」

「さあ? ただね、響。私は蜘蛛だった頃の記憶は殆どないけれど、後々気になって調べてみたら」

「……」

「私が若様と出会ったのは、お前達と戦った直後から数日の間の出来事のようなんです。お前と若様の差はその時からただ広がり続けている。この事実も、よくよく考えてみることです」

「……」

 当時の自分の力と真の力の差を突きつけられた響。

「もちろん私達がこの国にいる間に、ね」

 澪は来た時と同じように闇に溶けて消える。
 残された響は動けないまま。
 差は広がり続けている、という澪の言葉が彼女の中で渦巻いていた。









◇◆◇◆◇◆◇◆





「うーん……」

「? どうかしやしたか、旦那」

「あのさあ、ライム」

「はい」

「ちょっと僕を攻撃してくれる? 手加減は考えなくていいから」

「……はい?」

 澪に治してもらった手を握ったり開いたりしながら考え事をしていた。
 ちょうどライムがどこかから部屋に戻ってきたから頼みごとをすると、彼はまあ予想できる反応をした。

「いや、昨夜響先輩と親善試合っていうか手合わせというか、まあやったでしょ?」

「ええ」

「正直先輩についてはメイリス湖でも見たし、大体予想通りだったんだけど……」

「けど、なんでしょう?」

「何ていうか時々予想外に強かったんだよね。僕の方は特に防御方面で何をしたってことはないから多分先輩が何かしてたんだろうとは、思うんだ。ただ僕の防御って今どんなもんなのか実は正確にはわからなくてさ」

「あ、あれで防御は特に工夫してないんすか……」

「で、最初に戻るんだけどライムの攻撃だとどうなるかなーって思ってね。ちょっと一発お願い」

「ここ、ここでやるんすか!?」

「うん」

 別に多少怪我してもその時は澪を待てばいいし。
 軽い傷ならライムに治してもらってもいい。
 わざわざ無駄に注目を集めそうな外に行くこともないだろう。
 僕の態度から意思が変わらないと感じてくれたのか、ライムは一通り悩んだ上で彼の愛刀を手にした。

「……本当に手加減なしでやりやすよ? それでも響にゃあ届かねえと思いますけど」

「気にしなくていいよ。それに持ってる武器ならライムの方が上でしょ? 何かあっても澪に来てもらうから、ただ全力で攻撃してくれるだけでいいんだ」

「澪の姐さんに、フォローもしてくれやすね?」

「当たり前じゃない。やらせておいて、助けてーなんて言わないよ」

「じゃ、失礼します」

 ライムが刀を抜き放つ。
 膝を曲げ姿勢を低くした彼が右手に持った刀を刃を上にして構える。
 突きの構えだ。
 頼んだのは僕だけど、それに応じて全力を投じてくれるライムに感謝する。
 その準備動作は、彼の攻撃で一番威力のある攻撃だと記憶している構えと同じだったから。
 僕も先輩で弓のイメージを進めることの意味を確認した時と同じように魔力体を展開して彼を待つ。
 じっと動かないライムの中に徐々に力が蓄積していく。
 溜め技って溜める時間が課題であって、そこを気にしなくていいなら最高の手の一つだよね。

「いつでもいいよ」

 ライムは応えない。
 代わりに彼の身体の外に魔力が漏れ、うっすらと光って見えるようになった。
 そして、ライムは無言のまま床を蹴り、足から腰、腰から肩に伝えた力を刀に流す。
 増幅された力が刀に収束して、魔力体に突き入れられようとした。
 でも。

「っっ!!」

 打ち合いの甲高い音もなく、ライムの刀が僕の少し前の空間で止まった。
 ライムの全力でもそうそう斬れないか、やっぱり。
 なんて思っていたら、ライムが更にそこから動いた。
 右手を柄から一瞬離して、今度は左手、それも掌で柄の頭を押すように当てた。
 左手から刀に大量の魔力が流れ、同時に更に押し込まれた。
 溜め技で二段構え!
 凄い、かっこいいかも。
 でも魔力体は崩れなかった。

「あ」

「げ」

 僕とライムの声がほんの少しの時間差で発された。
 意図は同じだったんだと思う。
 ライムの刀が小さく震えて……刀身が粉々に砕け散った。
 あちゃあ。
 僕の魔力体とライムの攻撃力の間でたなくなっちゃったか。

「ご、ごめんライム」

「……いえ。まあ幸いリミアでお供をさせてもらってる間は特にこれを使う場面もねえでしょうから、お気になさらず」

「どのくらいで復活するんだっけ?」

「調子が良ければ半日程度です。今回は急がずじっくりで一日みようかと。今日のとこは何かあれば予備の剣を使いやす」

 そう言ってライムは自分の手、はめた指輪の一つを示す。
 ああ、色々仕込んでるって言ってたな、確か。
 あの指輪は剣に変化するんだっけか。
 僕とライムがそれほど悲壮でもないのは訳がある。
 ライムの愛刀は折れても砕けても再生する。
 柄が残っていればその再生速度もかなり早い。
 じっくりでも一日程度で元通りのようだ。
 詳しい時間までは知らなかったけど結構な早さだな。

「それよりも劣る剣で、結構簡単そうに僕の防御を突破してきたんだよな、先輩。ライム、何か心当たりとかない?」

「わかりやせん。響は斬撃による遠距離攻撃を当面のテーマにはしていやしたが……。威力となると、月並みなことしか浮かびません。同行していた期間も特に変わったことをしている様子はありやせんでした」

「そっか……。となると女神からもらった加護、かなあ」

「あの飾り帯は女神から賜ったものらしいっす。使い方はオリジナルだと言ってやしたが」

「使い方って……、あの露出仕様?」

 ある程度見慣れはしたけどさ。
 あれは凄い。
 戦力が上がるからと割り切れる先輩も凄いし、実際向上する能力も凄い。
 でもやっぱ見た目が一番凄い。
 うん。

「あれで上がった速度にゃ、正直対応が難しいとこっすね。一発ももらわないなら防具なんてどうでもいい、なんて世迷言も一部阿呆な冒険者の間じゃ論じられてますが、あのレベルならその世迷言も実現可能なレベルに見えやすよ」

「ん? となると露出モードの先輩って防御は大したことない?」

「いえ。響はあれだけの速さを手に入れても防御の重要性も理解してやす。あの姿は通常時よりも防御力自体は高いらしいんすが、どうも攻撃力が売りの奴に負けてきてるらしく、今は身体全体を覆うフィールド状の防御領域を凝縮して強化したいとかなんとか」

「より強力な攻撃を面じゃなく点で止めるってことか。点で止めるのを放棄して常時面で受けてる僕とは逆だなあ」

 スキルとしては先輩のが難度高そう。
 一点の防御力は上がるけどオートじゃなくなるってことだろうし。
 他の部分はまさに紙の防御力になる訳だし。
 ……ピーキーだ。

「なにを……してますの……ライム」

「いっ!」

「あ、澪。おかえり」

「所用でお傍を離れ申し訳ありませんでした。で? ライム、お前は何をしていたのです?」

「これは――」

「弁明はあとで構いません。私もまずは落ち着くので……来なさい」

「お、落ち着くんすよね? それなら、俺はいらないんじゃねえかと」

「何を意味のわからないことを。気持ちを鎮めるには、まずお前がいなくては始まらないでしょう?」

 意味がわからないのは澪の方だと思う。
 負のオーラが噴出してるし、ライムも怯えてる。
 無理もないよ。

「旦那!?」

「大丈夫です、ライム。ちゃんと元通りに治しますから」

「治す!?」

 つかつかとライムの近くまでやってきた澪が彼の手を細腕で掴む。
 振りほどけそうに見えるけど、これが実際結構な力なんだよねえ。
 じゃなくて。
 ちゃんとフォローするって言った上でやってもらったんだから約束は守らないと。
 それに澪も、その荒ぶった気持ちをぶつけるのは僕にしてもらいたいし。

「澪。そこまで。ライムには僕からお願いしてちょっとしたテストをやってもらったんだ。だから良いんだ」

「……テスト、ですか?」

 澪の動きが止まる。
 ただし手はまだライムを掴んだまま。
 当然ライムの表情も全然危機から脱した様子はない。
 むしろかなり危機を感じている顔だ。

「そ。澪も手伝ってよ。ちょっと今から僕に……そうだな、自慢の斬鉄扇で一発仕掛けてくれないかな」

 あの扇でぶっ放す斬撃。
 よく、またつまらない……、とか言ってるから斬鉄扇かって澪に突っ込んだら、気に入ったのかそのまま扇の名前になった。

「若様に斬鉄を?」

「響先輩との模擬戦で少し気になってることがあってね。お願い」

「響との……。わかりました。そういうことでしたらお引き受けしますわ」

 ようやくライムが解放される。
 もう少し説得がいるかと思ったけど、澪は響先輩の名前が出ると、ここのところ素直に従ってくれる。

「では、参ります」

 ライムのように室内であることを心配するなんてあるわけもなく。
 澪が閉じた扇を僕に向けて振り上げた……。

「ありがと、澪」

 力の度合いを変えた何度かの澪の斬撃を魔力体で受け、それが破られるまで続けた後。
 澪にお礼を言ってテストを終わらせる。

「もうよろしいんですか?」

「うん。今の響先輩の剣がこの位の威力だってわかったからね」

「……あの時の、若様に手傷を負わせた攻撃ですか」

「あの一撃もあるけど、全般的に先輩の攻撃は妙に強力だったからね。実際、澪が最後に僕にやった攻撃は結構本気だったでしょ?」

 同じ程度の威力だと感じた澪の攻撃について彼女に聞く。

「八割もいってませんわ。全然本気じゃありませんでした!」

 澪の七割強の攻撃と同じなら十分強いよ、きっと。
 思っても言わないけど。
 だって澪も少し気にしてるようだから。
 魔力体を綺麗にぶった切られてテストは終わりにした。
 あそこから踏み込まれたら模擬戦の時と同じようになるだろうからテストとしては十分だ。

「やっぱり、速さもそうだけど……あの攻撃力の強さは何かあるね。先輩と手合わせする時は少し強くしておかないと怪我しそうだ」

「……荒野でもがいていた頃の響にはそんな特殊な攻撃力はありませんでした。勘が良くて視野も広い娘ではありましたけど。確か、識が若様とリミアに行った時にあれがいきなり強力な攻撃を放ってみせたと言っていましたわ。戻ったら識に確認してみてはどうでしょう」

「あー……閉じ込めてた結界が壊された時かな? なるほど……」

 女神からもらった力が新しく覚醒したとか?
 いかにも勇者のイベントだ。
 特に特定の術を使って強化している様子もないし、僕の界と同じステルス性の高い発動形態の能力って可能性もある。
 だとしたらあんまり侮れないかも。

「でもあの娘、本当にそれだけの攻撃を手に入れていたのですか。それで新しい武器の相談など……」

「澪? どうかした?」

「い、いいえ! なんでもありませんわ!!」

「そう言えば所用って? 今日の予定は午後から何件か貴族やら商人と会うだけだったよね。もしかして先輩と会ってたの?」

 澪と響先輩……。
 まあロッツガルドの一件を思うと不安もあるけど、ツィーゲで一時師弟関係にもなってたってことだし、気にする程のことはないか。

「ツィーゲにあの連中がいた頃の世間話を少しだけ。ああ! もうすぐ巫女とも話ができそうだとか、響が言っておりました」

「巫女さんが。そりゃあ良かった、帰るまでに一度はお見舞いしておきたいと思ってた」

「ええ。叶うかと」

 それに、あの巫女さんが僕と澪に何を見たのか。
 気にならないといえば嘘になる。
 教えてくれるかはともかく、聞くだけは聞いてみたい。
 もちろん、リノンと大して変わらないような年の女の子だし無理強いはしないつもり。
 夕食の後でも時間をもらえないか、先輩に確認するか。
 さてと。
 そろそろ係の人も来る頃。
 それは商会に持ち帰らせて頂き改めてお返事致します、の時間だ。
 どうせそれ以上の結論なんてここで出す気はないんだから、察してみんな帰ればいいのになあ。
 はあ、まだろくに城下町も見て回れてないよ。
ご意見ご感想お待ちしています。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ