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参詣さえも武力を要す?
「親善試合、ですか?」
「うむ」
次期魔王になるという荒唐無稽ながら、どこか暗示的な夢を見た翌日。
魔王ゼフが何となく予想していた事の一つを口にした。
昨日から頻りに力、力と言っていたからなあ。
「それは私達がどなたかと、その、戦闘行為をするんですよね?」
言い方はともかく、お客さんとして扱われながらも戦ってみせろと言われている訳で。
つい確認してしまう。
「ああ。なに、多少観客は集めるがライドウ殿たちは普通に戦って見せてくれればそれで良い」
それで良いって……。
対戦相手が何となく読めるんですけど。
メリットがありそうなら受けるのは構わないってのが僕らの事前の意見なんだけど、どうしたもんかな。
今のところ普通に怖がられるだけだろうから、出来るだけ手加減して紳士的な振舞いを心がければ心象的には良くなるってくらいか。
「ちなみに、お相手はどなたになるんでしょうか?」
「相手は魔将かそれに準じる実力、立場の者につとめさせよう。なに、親善試合などと言ってもな、要は余がクズノハ商会に友好の証を贈るにあたって多少実績のようなものが必要というだけのことなのだ。実はあまり本気になられて殺気立たれても困る」
「……友好の証。昨日の歓待で十分、そちらの友好の意は私どもに伝わっておりますが」
魔王以下皆さんで宴会を催してくれたし、下に見られる扱いは特になかった。
むしろ、友好を通り過ぎて下心が怖いレベルです。
「それは嬉しいな。まあ今日の予定については精霊神殿への案内、時間が余るようであれば城下を見るなり、城の者と話すなり、好きに過ごしてくれてよい。試合はそちらが了解してくれるなら明日開催したい」
「明日。わかりました、従者の者と相談しまして前向きに検討いたします」
「頼む。余は案内できぬが、娘を二人、サリとルシアをつけよう。精霊の方々によろしくな」
は?
「……え? 精霊に、遭う、いや会えるんですか?」
「無論だ。ライドウ殿に興味を持たれているようだった。地と火の上位精霊。決して我らだけの味方ではないが、我らにも助力を惜しまぬ寛容な方々だ。もしかしたら話が合うやもしれぬな」
精霊……上位とかになると会った事は無いな。
女神側だって印象もあるから近付きにくいし、何より機会もなかった。
魔族領で初対面を交わすってのも、何とも不思議な気分だ。
「お祈りに行くような意味で考えていました。精霊に会うとなると緊張してきましたよ」
僕としては神社に行く感じだったよ。
ご神体どころか本体がいるような状況で、しかもこの様子だと会うの確定みたいだ。
参ったな。
「陛下、そろそろお時間が」
「若様、準備できました」
おっと。
魔王は毎日忙しい、当然の事だよね。
ロナが頭を下げ、ゼフさんを呼びに来た。
彼女は城内にいる時は秘書も兼ねてるのかな。
「ご苦労、ロナ。すぐに行く。ライドウ殿、先ほど伝えた案内の者らは正門前に待たせてある。今日も魔族の街を楽しんでもらえるよう願っている。では、失礼する」
「ありがとうございました」
ロナと連れ立って行くゼフさんを見送る。
「識、澪はもう外?」
呼びに来てくれた識に、この場に見当たらない澪の事を聞く。
「はい。澪殿も城下の様子を楽しみにされています。昨日は見て回らなかった区画のようですから」
「そっか。聞いていたかもしれないけど、案内をしてくれる人がいるようだから正門に急ごう。サリさんとルシアさん。確か……魔王の子供の二人だね」
「ああ、あの二人ですか。わざわざ女を二人とは、意図でもあるのでしょうかな?」
「……それはないんじゃない? 識こそロナと一緒におでましだったけど、もしかして仲良くなった?」
識が僕をからかおうとしているのがわかる。
最近は、真に受けずにあしらえるようにはなってきてるから、少しずつでも慣れているんだろうと思う。
「狐と狸の化かし合いは、どこまで行っても友好とは似ても似つかぬものです。ことクズノハ商会や若様の件では、情報量の差がありすぎて勝負になりませんが。アレも相当口惜しそうにしておりました」
「あはは……何となく後が怖いよね、女の人の恨みは。あ、それでさ。魔王様から明日親善試合をしたいって言われたんだけど、受けても大丈夫かな?」
「……はい。それは受けて下さいませ。向こうが差し出そうとしているものに少々心当たりがあります。本当ならあって損のないものが得られます」
「その情報はロナから?」
「ええ。多分、わざとこちらに情報を漏らして試合を受けさせようとでも思っているのでしょう。あちらの狙いも特に若様や商会に不都合のあるものではありませんから、もらえるものはこの際もらっておきましょう」
「わかった。じゃ、澪にも言っておかないと。後レフトさんと澪があたらないようにフォローよろしくね」
「御意」
城の出口まで一緒に歩きながら、頼れる識と朝の会話を楽しんだ。
落ち着く。
ふぅ……どれだけフランクに笑っててもゼフさんと話すってだけで気持ちが疲れるんだよねえ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ではライドウ殿は特に呪病の治療薬に力をいれておられるのか」
「はい。一番力を入れているのはそこですね。もしも薬が入用でしたらお申し付け下さい」
「私は今日はライドウ殿の案内を命じられた身。そうでなくとも陛下が国の客として招いた方々なのだから、私に敬語など必要ない。どうか、ご一緒されている従者の方に話すように気楽に付き合って欲しい」
……僕が知っている外で最年少の子って、多分リノンなんだけどさ。
このサリって子も多分同い年くらいなんだ。
リノンと変わらず小学校高学年くらいの見た目なんだよ。
最近あの子は少し身長も伸びてきて体格が女の子らしく丸みを帯びてきたから、それを考えると、このサリって子の方が見た目はより年下か。
話し方とか凄いしっかりしてるんだけど。
幼くして藩主になった若君みたいなしっかりぶりだよ。
成熟の早さは本気で日本よりも異世界の方が早い。
ツィーゲに着いてしばらくもした頃、リノンにはもう十歳を越えているんだから子供じゃないもん、とか言われたのを思い出す。
十歳は子供だと僕なんかは思うんだけど、実際リノンはあの年齢で姉の収支を管理して自分も稼ぎに出て、家事全般は既に習得済み。
日本にいたら、物凄くしっかりした子なんじゃないかと思う。
自分が十歳くらいの頃とは比較したくない。情けなくなるから。
「と言われましても。次期魔王になるかもしれないお二人に従者と同じように話せというのは中々……」
「私は、別に気安く話せとも言っていないが?」
ルシアさんは別の意味でやりにくい。
こっちは僕から話しかける分には笑顔を湛えながら応じてはくれるんだ。
僕もそんな感じだけど営業感まるだしのやつで。
でもそれ以外は一切アクションなし。
ちらっと表情を確認すると、憮然とした表情をしていたりもする。
四人の後継者の中では一番武人って感じの人だから、商人の道案内なんて不本意と言う事だろうか。
「申し訳――」
「貴殿は」
僕の謝罪の言葉を遮ってルシアさんが初めて笑顔を浮かべずに話しかけてきた。
「は、はい」
「わが師でもあるイオ、そして父であり王であり、優れた術師にして槍使いでもあるゼフからもその実力を認められている方だ」
んん?
怒られる訳じゃないのか?
なんと言うか不機嫌な感じではあるのに、発言の内容は……。
「口惜しい事に、私にはまだ貴殿の強さの底も、程度もまるでわからぬが。だがそれだけの力を有するならば、それに見合った自信と態度を身につけておられるべきではないのか?」
「自信と、態度ですか?」
俺は強いんだ、みたいなアピールをしろって事?
「強き者の多くは、そこに至るまでに多くの他者を打ち破っている。ならば、踏み越えた彼らの想いや経験の蓄積をその身に刻み彼らを糧とし、何事にも堂々と振舞われるのが正道ではないのか? だが貴殿はその力をむしろ隠そうとしている。解せぬ、そして納得も出来ぬ」
「ルシア姉様。その物言い、ライドウ殿に無礼だ」
「サリ、お前はロナのような考えにも寛容だから我慢もできようが。私には、このライドウ殿の振舞いはやはり耐えられぬ。わが師イオがこのような者にあしらわれたなど信じ難い。どうせ卑怯な――」
イオのお弟子さんだから、僕が気にいらないのか。
なるほど。
確かにロケットパンチもどきで場外ってのは卑怯と言えなくもない。
親善試合は受ける事にしたし、対戦者との戦いできちんと力を示せば誤解は解けそうだな。
「弱い者ほど、よく喚く」
っ。
「……今、なんと言われた従者殿」
澪ーー!?
いつ屋台から戻ってきた!?
両手に花、ならぬ両手にスナックを持った澪がルシアさんの言葉に割り込んだ。
「若様にどうのこうのと言える立場にもなく、その力も持たぬ癖にお言葉だけはご立派なのね、と言っただけです」
言葉がきっついな、澪。
案の定、ルシアさんは震えている。
心の内を読み取ろうとするまでもなく怒りで、だよねえ。
止めないとまずいか?
だけど。
ちょっと不自然な感じがする。
ん、こういう時は意識を一歩引いて視野を出来るだけ広く見るように、と。
反射で動くの自重。
……ああ、サリだ。
静か過ぎる。
彼女が合いの手を入れる程度の制止しかしないのが変なんだ。
もしかして、茶番だったり?
それともルシアの言動は本物だけど、サリが何か企てている?
話の雰囲気からサリはロナ仕込みっぽいし、ありえない話じゃないかも。
なら僕はもういいとして、澪があまり乗せられないように気をつければ……。
「……私はイオとレフト、二人の魔将を師として日々鍛錬に励んでいる。剣を握ったその日から一日たりともその鍛錬を怠った事はない。その私を澪殿は弱いと申されるか? もし撤回されないのならこれは侮辱と受け取るが」
本気で怒ってる。
と思う。
やっぱり、サリが状況を利用しているだけなのかな?
焦らず、落ち着いて状況の推移を見守る。
「レフト……あの程度の輩に師事しているのですか。失礼しました。どうやら、強い弱い以前のおままごとだったようです。私が大人げありませんでした、撤回致しますわ」
「侮辱、だな」
「あら? 撤回と言ったのが聞こえませんでした? 耳はついてます?」
……澪が、煽るのが上手くなってる。
女って怖い。
僕も自分の弓がままごとだとか言われたりしたら、多分反射で怒ると思う。
「構えろ。親善試合など待つまでもない、その力今ここで確かめてくれる」
「取り返しのつかない己の姿を見て、若様への暴言を悔いなさいな」
一触即発の気配が周囲を包む。
嫌な色の火花が散っている気もする。
うーん、ここまでだよね。
止めよう。
少し気になる事もあるし。
サリはこの雰囲気を真剣に見守っているから気付いてないみたいで、識はもう軽く調査してくれているようだ。
「そこまで」
「っ!?」
「……う、若様」
二人の身体を、不可視にしてある魔力体の手で握るように拘束する。
澪がその気なら逃げれるだろうけど、僕の意図がわかる澪は逃げない。
ルシアさんは……逃げるどころか、何をされて動きが拘束されているのかわかってないようだ。
武器を抜く前にがっちり掴んだから物理的に身動き取れなくなってる。
「ルシアさん、サリさん。私の連れが失礼しました。彼女に代わって謝罪します。で、ルシアさん。このような街中で剣を抜かずとも、私どもは親善試合をさせて頂くつもりですので、どうか明日までお待ち下さい。それよりも今は少々気がかりな事があります」
「ライドウ殿。これは、この拘束は貴殿の仕業か?」
「はい」
「……いつの間にそんな術など」
「すぐに解きますので。それよりもお二人にお尋ねしたいことがありまして。多分、あの大きな二つ並んでいる神殿が精霊神殿だと思うのですが、あの辺りはいつも“ああ”なんですか?」
「え? ……っ!?」
「なに? ……っ!?」
あちゃあ。
この感じだと、何か事件か?
二人とも、その“歪み”を見て驚いた様子だった。
僕が指差した先。
神殿が二つ並ぶ場所。
その周囲の景色がどこか歪んでいる。
何かのフィルターを通して見ているような、不自然な感じだ。
精霊がいる場所らしいからもしかしたら普通かもしれないと思ったんだけど、違うんだな。
澪とルシアさんを掴んだ手を放す。
「識、何かわかった?」
「濃密な精霊の力を感じます。地と火の力。競うように高まりながら交じり合って周囲に力場を発生させているようですが……原因までは見当がつきません」
精霊の力が濃すぎて景色が歪んでいる、かあ。
これが秘境の奥地っていうならあまり驚かないけど、街中だもんな。
一大事な気がする。
「念の為にお聞きしますが、いつもはこうじゃないんですよね?」
「当然だ。あれでは祈りに行く事すら困難ではないか」
「あんな風になっているのは初めて見る」
やれやれ。
ゼフさんに報告して、城に戻った方がいいな。
「なら陛下に報告に戻りましょう。早い方がいい」
「いや、待て」
「待って欲しい」
「?」
結構まともな意見を言った気でいたのに、二人から制止されてしまった。
ルシアとサリがお互いに顔を見合わせて何度か頷きあう。
「ライドウ殿。魔王の子の名において貴殿らの安全は保証する。このまま調査を兼ねて神殿に入りたい。ご協力願えないか?」
「姉の言葉に同意。さっきの失礼のお詫び代わりに、私達の力を見せて、護衛もする」
「いや、でも大事ならまずは陛下に判断を仰いだほうが良いですよ」
「……揺らいだ空間の内部に人の姿が見えない。恐らくこれは、計画的な何かだ。精霊神殿は我々の間では人気の場所でな。この昼日中、誰もいないなど本来ありえない。今日、この場所に我々が来る事を知っているのはごく限られた人物だけ。となればこれは」
「私達で対処せよという陛下の命かもしれない。ライドウ殿、お願い」
姉の言葉を妹が補足する。
でも中でクーデターとか起きていたら洒落にならない。
いくら魔王とは言え、動かせる軍もいるだろうこの街でわざわざ大事な後継者に危ない事をさせるかな?
それとも僕ら込みで何かさせたい、とか?
ここで応じればこの二人からはそれなりに好意を得られそうだけど泥沼になる気も……。
「……うーん」
「若様、僭越ながら申しあげます。この非常事態、もしも住人が巻き込まれていたら大変です。何を害される事もなく平穏に日々を過ごせるはずの民が、万が一にでも命を落とすような事になってはいけません。ルシア殿もサリ殿も、魔王を目指す者としての責任感から申されている事でもありましょうから、ここは一つ彼女達の提案を聞き入れるのが良いと私は思います」
識?
識らしくもない、何と言うか人道的な発言。
魔族の住民の事なんて、実の所澪どころか識だって塵ほどの価値も感じていないと僕は思う。
少なくとも、これまで話した所ではそんな感じだった。
なのに急に人命は地球より重い的な発言をするなんて。
「識、気でも触れましたか。私たちにとってこの街の住民などいくら死のうとどうでもいい事。この二人が救いたいだけで、若様にはむしろ迷惑です。そ・れ・に! 先ほどのこの娘の分を弁えない無礼極まりない発言をお前も聞いていたでしょう? 便宜をはかる必要など欠片もありません」
澪は、言いすぎだね。
凄く言いすぎだ。
「澪殿。確かにあの言葉は無礼でした。が、今はそのような些事は忘れ、魔族の民の安否を早急に確かめる事が若様から魔族への誠意になるのではないでしょうか。若様は人の命に関わることを迷惑などと申される方ではありませんから」
……。
悟りでも開いたか。
だけど表情も眼の光も、いつもの識だ。
んー、ならそっちに乗っかってみようかな。
実はちょっと、面倒事になるならスルーしたいな迷惑だから、とか思ったりしていた。
でも過激な発言をした澪に乗るより、人道的な発言をした識に乗った方がこの場合はプラスになりそうだ。
「澪、堪えてくれ。街中での事だし、勝手を知っているルシアさんとサリさんが急を要すると考えている以上客人の僕らが逆らうべきじゃない。守ってくださるとも言っているし、このまま進もう」
「……若様が仰るなら構いません。若様は私がお守りしますから危険はありませんし」
「ご英断です若様。私も全力で若様をお守りします」
「ありがとう二人とも。ルシアさん、サリさん。予定通り精霊神殿への案内、お願いします」
「ライドウ殿、感謝する。先の非礼はお詫びする」
「ありがとう、ライドウ殿。必ず貴方方は無傷でお返しすることを私の名と命にかけて約束する」
大仰なお言葉。
子供の発言とはとても思えないな、やっぱり。
見た目とのギャップが凄いわ。
揺らぐ景色の中にある神殿を見る。
上位精霊ってどのくらい強いのかな。
最悪戦闘になった時の事を考えてアズサをすぐ出せるようにはしておこうか。
アテナ様ともそれなりに戦えたからなんとでもなるとは思うんだけどね。
神様より強いって事はないだろうし。
まあ、大丈夫だよね。
可能性は低いかもしれないけど、精霊のお茶目って事もあるかもしれないし。
女神がアレだから何があっても不思議じゃない。
歓迎のサプライズってオチを期待しよ。
「じゃあ行きましょうか」
「では、侵入路を開く。少し待っていて」
ここから先は揺らいだ空間の中、という所まで進んで突入を示唆した僕に、サリが応えてくれた。
澪が何か言おうとしたけど、それを制止。
ここってそのままは入れないのか。
何か行けそうな気はするけどな。
多分澪もそれを言おうとしていたから止めた。
サリが空間に向けて集中し、長い詠唱を通じて干渉している。
「サリ殿は優れた術師のようですね、まだ幼いのに素晴らしい素質です」
「ありがとう識殿。我が妹ながら、こと魔術においては魔族でも彼女に教えられる者が少ないほどに、サリは優れた術師だ。結界に関する術理は専門ではないが必ず道を開いてくれるだろう」
識とルシアさんはそんな話題から小声で色々と話を始めた。
ルシアさんは確実に剣士だろうから、姉妹で剣士と術師なのか。
血が繋がっているのかどうかはわからないけど、前衛後衛と組める二人なんだな。
「……よし、開け!」
サリの言葉に呼応して揺らいだ空間の一部が切り裂かれた。
狭いけど、何とか通れそうだ。
向こう側には揺らいでない同じ景色が広がっている。
「よくやった、サリ」
「このくらい出来て当然」
微笑ましい姉妹の会話だ。
じゃ、さっさとくぐって……。
「少し狭いですね。広げましょう」
「若様、こちらからどうぞ」
進もうと思っていた僕の耳に二つの言葉が。
いわずもがな、識と澪。
識がサリさんが開けた入り口を一気に拡張して広くしていた。
澪の手から闇が放たれて、それが景色の揺らぎを侵食、識よりも豪快に入り口を作っていた。
「……」
「……」
ルシアさんとサリは無言。
無言だけど、色々ものを言っている沈黙だった。
「識、私が若様の通る道は作りましたから。そっちは貴方と他ので使いなさい」
「折角開けたのですからこちらを皆で使わせてもらえば……いえ、別に違う場所に出る訳でもなさそうですから二つあっても構いませんね。はい」
識が一瞬で折れる。
「ま、まあ。目的は神殿の状況確認ですから。仲良く行きましょう」
僕の言葉はどこか虚しく響いた。
……ちなみに澪の作った方から入った。
ご意見ご感想お待ちしています。
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