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月が導く異世界道中 作者:あずみ 圭

三章 ケリュネオン参戦編

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ヤタってそこまで

 ライドウとファルスが久しぶりに話をした夜。
 強い雨が降っていた。
 夜で、目的が無ければ人も寄り付かない程度の森の奥で。
 か細く、しかし必死さを感じさせる荒い呼吸を続ける人影が一つ。
 月明かりも無い森に、体から僅かに光を放つ彼女の所作は目だっていた。
 裸身に雨をシャワーのように受けるヒューマンの女性。
 ソフィア=ブルガだった。

「ふぅぅ……ふぅぅ……」

 魔人ことライドウの一撃を受け、リミアの王城で敗北したソフィア。
 今彼女が横たわるのは王都アスタからは郊外といっていい距離がある名も無い森。
 彼女は生き延びていた。

「ライドウ、あのクソガキ……!」

 もぞもぞと。
 普段の彼女からは考えられない程弱弱しい動きで手近にあった身の丈を超える岩に背を預ける。
 身一つで、何も持っていない彼女には着替えも出来ず、雨に打たれるままだ。

「御剣は今度こそ死んだし、武器も根こそぎ破壊してくれて……夜纏の奥の手で死を免れた事には気付いてないでしょうけど。なんなのよ、あの化物は……」

 ライドウへの悪態を吐き続けながら、彼女は自身の力を最速で回復させるべく集中を始めた。
 この辺りは流石に経験を積んだ冒険者だ。
 ルトという、ソフィアにとっての最終目標でもある存在の名前が出た事でライドウと踏み込むべきではない所まで戦闘を続けた彼女だったが、今はもう冷静さを取り戻しているようにも見える。

「癪だけど、あれを迂回してルトと戦う方法を見つけないと。とても相手にできたものじゃないわ。さしあたっては……荒野、無敵の竜を狩るのが先決か」

「残念だ。それは叶わない」

「!?」

 ソフィア以外、何者もいなかった筈の場所に中性的な男性の声が響いた。
 到底回復しきっていない体を無理やり機敏に動かし、ソフィアは声のした方向から身を隠し岩を盾にした。
 手には光で出来た実体の無い剣。
 元は御剣の能力だ。

「ふむ。そこそこの動きではある。でも真君と戦った時と比べると亀だね」

「!! あいつの仲間!? どこ!」

 大体の見当を付けていながら、ソフィアは森の闇に意識を集中させる。
 真、とはライドウの本名。
 その名前をソフィアが忘れる訳が無い。
 それを知る存在が自身にとって味方である可能性が低い、とも理解している。
 長時間の戦闘はとても不可能な状態だが、それでも短期に集中すれば、とソフィアは己の取るべき手段を頭で構築していく。

「結局、ランサーは最後までお前に竜の知覚、感知を教えなかった。その程度の利用し合う関係に過ぎなかったという事だろうね」

 闇の中から現れたのは、銀髪の青年。
 どこか皮肉めいた笑みを浮かべた、場に似つかわしくない存在だった。

「魔人のお仲間って事でいいのかしらね?」

 ソフィアは姿を岩陰に隠したまま青年に尋ねる。

「お仲間、になりたいと思っているけどしてもらえない竜、かな」

「……竜?」

「見限りながらも眺めていた、そんな存在のせいで彼に借りを作ってしまった間抜けでもある」

「借り……、お前まさか」

「真君よりも直感は鋭い、か。改めて。ルトだ。お前の探し求めた調和の上位竜」

「!!」

 ソフィアの目が大きく見開く。
 全く予想外の出会い。
 そして、最悪の状況での接触だった。

「どうした、裸だから出て来れないと言うような娘でもないだろう、お前は。最後に少し話をしてやろうと、こうやって出てきてやったんだよ?」

 最後。
 その言葉から後の展開を察するソフィア。
 ゆっくりと岩陰から姿を見せた。

「ルト、お前が!? 本物、なの?」

「好きに考えれば良い。偽者に殺されたいか、本物に殺されたいか。お前の考えに任せるよ」

 ルトの言葉の直後。
 一瞬で現れた八つの光剣と彼の足元の地面を溶かそうとする赤い光が出現し、だが目を閉じたルトが指を鳴らすとどれもが散じて消えた。

「証明になったかい?」

「……」

 奥歯の鳴る音がソフィアの耳に届く。
 本物だと、理解したからだ。
 そして、このタイミングでの不意打ちを造作も無く凌がれたことで、相対する相手の実力を彼女は思い知った。

「昔の僕が抱いた野望の欠片。そんなものが思い出した様に息をし始める。始めはまあ、見ていて楽しかったんだけどさ」

「……」

「人に混じった僕の血が、直接産んだ子供みたいに濃くなった先祖がえり。それに、気紛れで実験した二つの命の合成。どちらも僕が関係したもの。それがまさか同じ時代に出会って手を組むとはなあ」

「私の事を、知っているのね」

「当たり前だよ。僕は冒険者ギルドの長でもある。お前の事は登録した時から知っている。いつ血の素性に気づいたのか、いつ野心を抱いたのか。いつ女になって、いつ失恋したかまで全部知っている」

「っ……私がお前を探している事も」

「勿論、知っていた。会う気は毛頭無かったけどね。そこは真君に感謝すると良い。結果的に“会う”という目的だけは彼のおかげで叶ったのだからね」

(もっとも、それ以外は全て彼のおかげで滅茶苦茶になったとも言えるだろうけど)

 ルトは心中で言葉を補足する。

「お前は! 私の動きを全部知りながら! それでも私を、御剣を放置していたと言うの!?」

 ソフィアの声が怒りに震えていた。
 知られていれば、放置される訳がない。
 何故ならソフィアとランサーはルトの命を狙っていたのだから。
 だから知られてはいないと思っていた。
 少なくとも妙な動きをしている以上の事は知られていないと二人は思っていたのだった。

「目的も結末も、見えていたからね。相手にするまでも無いと思っていた。大体、君らに砂々波と無敵は倒せないと踏んでいたし」

「ふざけるな、砂々波も無敵も、十分に討てるだけの力が私にはある!」

「力は、まあ。でも相対してまともに相手をしてもらえなければどうしようもないからね。砂々波は万が一もあるかもしれないけど、無敵なんて荒野の奥も奥。それにまともに戦うなんて面倒臭いと思っていた奴だ。そもそもの前提が間違えているとは言え、その前提さえも満たせないとわかっている無駄な努力を、どうして妨害する必要がある?」

「何が、何が間違えて」

「六体の竜を吸収すれば僕に勝てるって前提がだよ。お前からソレを剥がすなんて大して難しい事じゃない。ランサーに何を言われたのか知らないけど、お前の持つ吸収の力は僕の能力の一環に過ぎない。多少僕の血を濃く得ているからといって、僕以上に扱える訳が無いだろうに」

「……」

「そういう事だから。最後は多少迷惑だったよ。放置するんじゃなかったと思う程度には後悔した。僕を僅かとは言え後悔させたんだ、あの世で祝杯をあげると良い。ああ、ランサーはそっちにはいけないからお前一人でだけどね」

「……気紛れで人の世に血を残して……気紛れで存在しなかった竜を作り出して上位竜に加えて。全部、全部がお前のただの気紛れ!? ふざけ、ふざけるんじゃないわよ!!」

 ソフィアが再び剣を作り、手にしたそれに紅い光を纏わせて青年の姿をしたルトに斬りかかった。
 ルトはシンプルなシャツを着ていたがそれは雨に一切濡れておらず、ソフィアがそれに気付いたのは、消される事の無かった攻撃が黄金色の魔力に阻まれて彼の身に届かなかった事を目にした時だった。

「真君の真似。しんどいんだよねえ、これ。十分位が精々かなあ。これを常時維持出来るって言うんだから、彼の魔力量は一体どれだけなんだって話だよ」

「あ……ああ……」

「お前が目指した全ての上位竜の吸収、それはね。かつて僕がやろうとした愚かな野望だよ。ランサーがこのっくらいの時につい昔話を漏らしたのがいけなかったのかもねえ」

 ルトは自らの膝の高さに掌を置く動作をソフィアに見せて、そう言った。

「……」

 対するソフィアは何も言えずにいた。

「ティアマト計画」

「っ!!」

 ソフィアの動揺は僅かだった。
 それでもルトにはしっかりと伝わったようだった。

「……やっぱりね。僕の能力を応用して、全部の上位竜を僕が吸収する。大地や空、水を精霊以上に把握して女神と世界を二分する気でいた。それがティアマト計画。お前は知らないだろうけど、ティアマトっていうのは竜と神、二つの性質を併せ持つ豊穣の神の名だよ」

「豊穣の、神。女神以外に、神がいるの?」

「お前が知るべき事でもないけど、この世界にはいない」

「この? ならこことは別に?」

 呆けたようなソフィアの表情。
 ルトの言葉を全て理解しているとは思えない様子だ。

「結局、当時ヒューマンの信仰を既に相当集めていた女神とだと分が悪そうだってのと、旦那に会った事で立ち消えになったんだけど。まさか僕の劣化版と暇つぶしに死に掛けた竜と怨念の篭った武器をこねくり回したら出来た力ある竜が手を組んで、カビの生えた計画を再始動させるんだからね。世の中は狭い」

 ルトはソフィアの問いには答えず、言葉を続けた。

「劣化……? 望んでもいなかったこんなふざけた力の所為で、私の人生がどれだけ無茶苦茶になったと思ってっ!!」

「使い古された言葉だけど、力に善悪は無い。そうやって歪んで、人も魔も竜も殺しまくったのはただただお前が弱かったからだろう? ランサーにしてもそうだ。人と竜とそれだけで世に残れるだけの強い意思と。奇跡的な合成具合で上位竜と呼んでも良い位の力を得たというのに。奴の場合はそれでさえ満足が出来なかったという事か。どちらにせよ心と、欲望をただ制御できなかっただけの負け犬に過ぎない。だから、僕もお前たちへの興味を失ったんだよ」

 合奏の指揮者の様に。
 ルトが右手を高く上げた。

「間違ってなかった。私が、お前を憎悪するのは、間違ってなかった! お前だけは!」

 叫ぶソフィアの体が糸の切れた人形が崩れるのに似た所作で膝を突く。
 体全体をしならせて、ルトに挑みかかるその一瞬の事だった。

「あ?」

 膝を、そして手を地面に突くソフィアの体から紅い球、青い球、黒い球、赤色と白がマーブルになった球が順に出て行き、ルトの掲げた右手に集まっていった。

「既に女神の加護をも失った身で、手にした竜の力も失えば。お前が命を維持できるかどうかは、わかるね?」

「……こんな、こんな終わり方なんて」

 地に伏して、ただ目を見開くソフィアは呟く。
 その言葉は無念が込められ搾り出すような響きをもっていた。

「冒険者の死に様としては、実に普通じゃないか。突然訪れる不慮の死なんて」

「私だけは……っ……」

 ソフィアの体から金色の小さな球体が出て行き、静寂が訪れた。
 それぞれの球体を見て、しばらくして一つ溜息をつくルト。

「一気に若返るね上位竜がさ。子育てなんてやってられないし、各地の守役もりやくどもに丸投げしよっと。そだ、真君にもちょっとだけ面倒をお願いしようか。彼もあれで基本的に出不精だからなあ。世界を見てもらうには切っ掛けが必要かもしれないし」

 ルトは右手を下ろす。
 光の球は、光を放つ各色の卵に姿を変えていた。
 ふわふわと宙に浮いている。

「ランサーは……真君も嫌だろうし砂々波“おばさん”にでも頼もうか。彼女はヒューマンに祝福も与えているし、自分も産まれ直すとは、多分言わないだろうから」

 卵の処遇を決めながら、ルトはふと冷たい雨に打たれるだけになったソフィアの遺体に目をやる。
 今わの際に流したのか、涙らしき跡が目から地面へと伝っている。
 それともただの雨粒の流れに過ぎなかったのか、すぐに区別のつかなくなった彼女の顔からは答えが得られない。
 またルトが考えていたのも、そんな些細な事ではなかった。

「これで全部真君の思惑通り、か。出来が悪かったとは言え、ソフィアも哀れだね。……ふむ、それならせめて。真君にやられっ放しと言うのも良いけど、彼の次の要求は読めるし、ちょっとだけお返ししよっか」

 ルトが何事かを呟いて左手を動かす。
 するとソフィアの遺体が宙に浮いた。
 何事かを考えついた様子のルトは、これまでの絶対的強者としての顔ではなく、ライドウこと真に向けてよく見せるような、ニンマリとした顔でその場から消えた。
 ソフィアの身体と一緒に。





◇◆◇◆◇◆◇◆





 強く叩かれるノックの音に目が覚める。
 連日実に疲れる日々だというのに、優しくない目覚めだ。
 でも嫌な疲れじゃない。
 案外、額に汗して暗くなるまで働くというのは、僕の性に合っているのかもしれないと思う。
 なおも断続的に叩かれる扉。

「起きた、起きたよ。一体、何? どうぞ?」

 朝っぱらから。
 ここは亜空。
 つい先日、四季が導入されたばかりだ。
 少し変わった状況で四季が実現してしまっているんだけど、その騒動というかアクシデントも落ち着いてきた頃なんだけどな。
 具体的には僕らが住まう都市部分は循環する四季、そしてそこを基点に東西南北が春夏秋冬を常時保っている感じになっている。
 勿論、例外的な部分はそこら中にあるけれど、大雑把に見てそう分類する事にした。
 作物なんかはそれぞれ適した気候の場所を調べて移したりと結構大変な作業が続いている。
 だから亜空こっちから学園都市には派手に人員を連れ出したりしていないんだ。

「若、申し上げます。その、一大事でございます」

 巴だったのか。
 いや、澪も識もいる。
 って、ええ!?
 各種族の主だった人達がぞろぞろ部屋に入ってきたぞ!?
 よ、良かった。
 とりあえず着替えだけはしてから招き入れて本当に良かった。
 寝癖もなかったし、何とか身だしなみは整ってはいる。

「皆が揃ってきていれば何かがあったのはわかるけど。一大事、ってなに?」

 一大事。
 それにしては皆の表情の多くは困惑というか、戸惑いというか。
 そんなに危険な一大事ではないのかもしれない。

「それが……侵入者と言いましょうか来訪者と言いましょうか」

 巴の言葉の切れが悪い。
 侵入者にしても来訪者にしても、ようするにお客さん?
 ……亜空に!?

「って、ヒューマンに亜空の存在がバレたって事!? それまずいじゃないか!」

「いえ、ヒューマンではなくてですな」

「とにかく、捕らえてある、んだよな? まずはどうやって来たかと、後は目的と……」

「若、その……捕らえておりません」

「……え?」

「ともかく、お目覚めのようですから直接お話しになって下さい」

「直接って……?」

 どうやって、と思った矢先。

(よう! 深澄真! おはよう!!)

「っ!?」

 大声が頭に鳴り響いた。
 聞いた事の無い声。
 ただ、乱暴な感じの言葉遣いの割に、何というか無意識に畏まってしまうような妙な力を持った声だった。
 念話だろうか。
 似ているけど、それも違う気がする。
 相手との接続を感じないからだ。
 そのまま考えを表層に出して大丈夫かと迷ったけど、応じてみる事にした。

(おはよう、ございます。はじめまして? ですよね)

(おう! 兄貴が迷惑をかけた形になっちまってすまなかったな。ゆえあって近くに来たから思い切って来てみたんだが、寝ているとの事だったんでな。待たせてもらったぜ)

 兄貴?
 誰かの弟さんか。
 ともあれ、名前を伺わない事にはな。
 お兄さんと僕が知り合いならフルネームでお願いしたいな。

(失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか。出来れば、フルネームで)

(なげえから略称で勘弁してくれ。俺はスサノオだ)

(スサノオさん)

(そうだ)

 どこで区切るんだろ……すさのお?
 お兄さんが僕と知り合いで?
 すさのお……。
 !?!?
 須佐之男尊!?
 嘘ぉ!!

(月読様の弟様の、須佐之男尊でででですか!?)

 目が覚めた。
 完全に目が覚めました!
 有名なひとじゃん!
 ってか、破壊神とかじゃん!
 ご機嫌損ねたら天変地異とか起こるかもしれないビッグネーム!
 お、起きるのを待ってた?
 僕が起きるのを!?
 お、おおおおおお。

「巴! すぐに起こしてくれていいのに!?」

「しかし、その強大な存在ではあろうかと思ったのですが名も名乗らぬ存在ゆえ怪しむべきかと……」

 怪しかろうが何だろうが怒らせたらまずい神様です!
 た、多分怒ってらっしゃらないよね?
 大丈夫だよね?

(兄貴からお前の事を少し頼まれていてな。とりあえず元気そうで安心した。でな、お前が今いる空間に俺らも来ているんだが。近くまで行っても問題ないか?)

(も、勿論です! 月読様もご一緒なんでしょうか!?)

 ?
 いや待て。
 月読様は、眠りについているんだから一緒に来れる訳ないよな。
 でも今確かに「俺ら」って。

(兄貴はまだ、向こうで療養中だ。ちいと、ここの女神にナシがあってな。その帰りだ。なに、あのバカにこの場所を教えたりはしないから安心しろ、むしろ隠す方向で手助けしてやるさ)

(そ、そうですか。ではお待ちしています)

 女神に会った。
 って事はあの時の客人がそうか!
 あの女神、凄い神様を客に迎えてたんだな。
 そりゃあ焦りもするわ。

(悪いが、誰かに誘導を頼みたい。少し大きな乗り物に乗って来ているからな。広い平らな場所に降りたいんだよ)

(わ、わかりました。すぐに用意します。それで皆様はどちらに?)

(空を見りゃあ一目で分かる。じゃ、後でな)

 会話が終わった。
 気持ちがぼーっとしているのが分かる。
 だが呆けている訳にはいかない。
 顔だけ右に向けて従者と、今となっては都合の良い事に集まっている皆を見た。

「澪。すぐにありったけの食材で料理を。和食中心が良いと思うけど、とにかく美味しいと思った物を片っ端から作って。料理のローテーションに入っている人は全員駆り出していいから。急ぐ!」

「あ、は、はい!!」

「エマ、識。歓待の用意を始めて。外か中かは先方に伺ったらすぐに伝えるから人集めと使う道具の用意から始めて」

「わかりました!」

「御意」

「巴、僕と一緒に方々を迎えて。とにかく外へ。広い場所に降りたいって仰ってるから大きな生き物でも着地できそうな平原、それもここから出来るだけ近い所を教えてくれ。他の皆は料理かそれ以外かに別れて澪か識に従って!」

「平原、はい、わかりました。ではお供を」

 廊下を進みながら皆に指示する。
 神様の接待なんて何をすればいいのかわからない!
 わからないけど。
 とにかく出来るだけの用意をしなくちゃ。
 外に出る。
 空を眺められる場所だけど、どっちの空を見ればいいのか。
 と思ったら、ソレはすぐに見つかった。
 空を飛ぶ飛行機と同じくらいの大きさのものが空にあった。
 鳥だ。
 真っ黒い鳥。

「あれか。巴、場所の見当は大丈夫?」

「……はい。しかし、あれは相当でかいですな。竜に匹敵する、いやそれを超える鳥など聞いた事がない」

「神様の乗り物なんだから常識なんて通用しないよ。とにかく、あそこから見えるように着地してもらう場所にマーカーとか付けてくれ」

「か、神!?」

「あ、いや……。それは後で話すから。とにかく早く。で、失礼は無いように」

「……あの鳥、足も三本ありますし爪も嘴も鋭い。暴れられたらコトですぞ?」

「乗っている人よりは多分安全……足が三本?」

 なんだって?
 と言うか、ここから飛行機並の大きさに見えるって相当でかいよね。
 確かに、足が三本あるのも辛うじて見て取れる。
 三本足の黒い鳥。
 カラス。
 もしかして……ヤタガラス?
 は、ははは。
 目が潰れなくて本当に良かったな。
 ヤタって大きいって意味があるとも聞いた覚えがあるけどさ……でかすぎやろー……。
 旅客機クラスかい。
 どんな鳥居にとまるんだよ。

「若、マーカーは先方にも伝わったようです。結構な速度で地上に降りてきます」

「ああ、そう。あまり皆にはアレを見ないように伝えておいて。それじゃ、巴。行くぞ」

「……御意」

 スサノオ。
 まさか自分の人生で三貴子の内の二柱と会う日が来るなんて。
 一体誰と一緒に来たのかは知らないけど、女神とも会ったと言っていた。
 多分、僕には良い出会いになるのだろうと思いながら。
 それでも荒ぶる神であり、時に破壊神ともされる神、スサノオ様と会う事に僕は緊張していた。
ご意見ご感想お待ちしています。
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