挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
月が導く異世界道中 作者:あずみ 圭

三章 ケリュネオン参戦編

113/187

魔人は己に気付く

「大型なだけあって! 速度は大した事ないわね!」

 魔力体が打ち下ろした拳を避けて、ソフィアが懐に飛び込んでくる。
 変わらず紅い光をまとった剣で幾筋もの攻撃を加えてきた。
 が、それは僕に届かない。

「まあ、武術の達人って訳でもないからね。にしても、大分強い攻撃だ。前とは比べ物にならない」

「……当然でしょう! これは」

「竜の力か。詠唱から察すると、他の上位竜に力でも借りたの?」

「これなら!!」

 答えやしない。
 ソフィアの姿が消える。
 お得意の転移だろう。
 ただ、前に見たのとは少し違う。
 あの時は剣との入れ替えだったようだけど、今の彼女は違う手で移動しているように見えた。
 影竜とかの力かな?
 斜め前方、宙に彼女の気配。
 背に担ぐように剣を構え、胸の前辺りには紅い球体。
 遠距離攻撃?
 ソフィアが剣を袈裟斬りの軌跡に振るう。
 瞬間、紅い球体がレーザーみたいな光になって僕に迫る。
 咄嗟に魔力体の手でそれを止める。
 握りつぶして、消す。

「ふぅん、まるでレーザー。さっきの詠唱にあった火竜の力かな。上位竜で火っていうと紅の飛竜、“紅璃あかり”か」

「……これも駄目。紅璃は竜族で最強の攻撃力を持っているんだけど」

 着地した竜殺しが厳しい目つきで僕を睨む。

「竜に嫌われる覚えはあまり無いんだけどね」

 むしろ好かれすぎて困ってる両性類が一匹いるくらい。

「あら、心配しないで。ライドウは別に嫌われてないわよ!」

 懲りずに突っ込んでくる。
 弾きながら僕も打って出る。

「っっ!!」

 再度かわされた拳、その表面に魔法陣が展開、そこからソフィアが放ったようなレーザー状の攻撃が彼女を撃つ。
 だけど……ちっ。
 不意打ちだったのに、剣で防いだ。
 相変わらず無茶苦茶な直感と、ふざけた剣だ。
 だけど構う事はない。
 この魔力体は僕にとって術を強化させるサポート用途もある。
 むしろそちらが主体だ。
 身体の外に出した魔力を周囲にとどめる。
 その最適な方法が物質化、具現化なんだから。
 界は感知で固定する。
 あいつの攻撃力なら、倍ほどに上がっても強化なんて必要ないだろうから。

「こんなのは、どう?」

 距離が開いたソフィアを正面に見て短く詠唱した。
 魔力体の前面から波紋が無数に出来る。
 人の指先ほどの大きさの球が人型から切り離されて浮かぶ。

「防御、特化……」

 何をする気かわかったのか、ソフィアが呻くように呟いた。

「だけな訳がないだろう? ソフィア」

 球自体が細かに震えた直後。
 先ほどのレーザーに似た攻撃がいくらか小口径でソフィアに放たれる。
 百弱の光の束がソフィアに向かうも、奴はお決まりの転移でそれを回避する。
 でも、無駄。
 彼女の転移は他の空間に逃げるなんて類のものじゃない。
 ただ別の場所に移動するだけ。
 しかも、見ていた感じ、距離にはそれなりの制限がある。
 うん。
 いた。
 物陰に潜むソフィアを界で発見。
 標的を見失って壁面に向かっていた光の全てに、位置を伝える。

「曲がった!?」

 全ての光がソフィアの隠れた瓦礫の山に向かって方向を変えて突っ込んだ。
 レーザー状のものを曲げる。
 男のロマンの一つである。納豆ミサイルも良い。
 背後から聞こえたロナの声が驚きに染まっていた。
 追尾、なんて珍しいものでもないだろうに。
 今のは追尾じゃなくて追加入力に近いけど、見た目にそれほどの違いはない。
 爆発。
 ソフィアの位置は変わらない。
 多少はダメージがあっただろう。
 後ろを振り返る。
 イオとロナが僕を見ていた。

「イオ、その物騒な構えは解いた方が良い。邪魔をするならそれなりの対応をするよ」

「俺はまだ、お前と戦っている気でいるんだがな」

「そう、忠告はしたからね」

「ライドウ、貴方のそれ、全部が自分の魔力なのかしら?」

「ロナ、それに答える気はない。でも一つ助言。早くステラから人員を下げろ。こっちは直に終わりそうだ」

 イオは僕に向けて構えを見せていた。
 ソフィアみたいなタイプは共闘しにくい。
 それでなお、僕とソフィアの戦いに加わろうとするのはどうなんだろう。

「そうだった。お前にはその攻撃があったわね。ライドウ」

 おや。
 もうもうと煙が立つ中でソフィアが立っていた。
 無傷、では無いと思ったんだけど。

「まるでイオだな。再生も覚えてきたの? そろそろランサーも呼んだら?」

「呼んでるわよ、来やしないけどね……。そっちの従者が離してくれないみたいよ?」

「ああ……、そっか。ならもう終わらせようか。ソフィア」

「……上位竜四匹よ」

「は?」

「前にやった時の御剣、瀑布ばくふだけじゃない。お前と戦って湖に浮いてから。夜纏よまといと紅璃をも喰らった」

 喰らった?
 上位竜の協力を得たんじゃ無かったのか?

「……」

「私が気付いた、降した竜の力を喰らい、取り込める力。冒険者としても私はトップクラスだと自負しているけど、それに加えて上位竜四匹の力を手に入れた。国だって滅ぼせる力よ」

 国を?
 その程度で?

「後は砂々波さざなみ無敵むてきを殺せば、奴を、万色ばんしょくを喰らえる所まで高められると言うのに」

 上位竜は僕が知っているので全部だったのか。
 七竜の内四竜をその身に宿して、それでも僕ひとりにすら及ばない事が余程ショックなのかね。
 それに……ルト。
 どうやら彼女の目標はルトに関わるみたいだけど……あいつの因縁まで僕が背負わなきゃいけないのか。
 後で文句言ってやる。

「大げさな。国をこの程度の力で滅ぼせるか?」

「十分よ。そこのイオだって、小さな国なら滅ぼせる。軍なんて弱者が群れるだけの力、私やお前ならあんなモノはただの的に過ぎない。如何に優れた個を有するか、それこそが国力でしょう」

「……」

 そんな、ものか?
 いや個人なんて軍隊っていう群れの前では無力なものだと思っていたけど。
 確かに。
 この街の状況や戦況を見ていても、この程度かって思いはした。
 不意打ちとは言っても、軍隊や騎士団でこんなものなのかってね。
 僕が思うよりずっと、この世界は“弱い”のかもしれない。

「全く。肌に鱗を浮かせるなんてカッコ悪い事、よくも」

 ソフィアの力がさらに一段階上がった。
 その身に巡る四色の力が、元々ある彼女の力も相まってマーブル模様になっていくように見えた。
 肌の色がやや黒ずむ。
 彼女の言葉にあったみたいにうっすらと鱗らしい特徴が見える。
 爪が伸び、瞳が巴の様に竜の残滓が残るモノに変質した。
 竜殺しというよりも、竜人、だな。

「変身か? グロントは知らないけどさ。お前がしんやルトに勝てるとも思えないな」

「!? 蜃に、ルト。どうやら、ライドウには口を割ってもらわないといけない事が増えたみたいね」

「お前には、出来ないよ」

「無敵の蜃はともかく、万色の名を持つ上位竜の名称は殆ど誰にも知られていないの。是が非でも色々教えてもらわなきゃ。お前が死ぬ前にね!」

「そうなんだ。ここ最近、よく食事を一緒にしているけど」

「どこまでも、舐めた口を!」

 魔力体に触れるソフィア。
 何度同じことをするのか。
 いや。
 剣を持っていない手で人型に触れた。
 なんのつもりかと思う僕と同時に、ソフィアの手から真っ黒な泥みたいな闇が吹き出た。
 付着した闇が魔力体の強度を部分的に低下させるのがわかった。
 一際強く輝いたソフィアの剣が黒くマーキングされた場所に正確に一閃する。

「へぇ」

 感嘆の声をあげながら、僕はソフィアに攻撃を加える。
 幾つかの魔術を構成して人型から放つ。
 矢、槍、球。
 いくつかの攻撃を放ち、かつ命中もしたんだけど。
 彼女は止まらない。
 瞬時に回復術でも展開しているのか、お構いなしに斬って斬って斬りまくってくる。
 最低限の急所と右手だけをかばって、後は傷ついても癒す。
 ここが勝負どころと判断したらしい。
 っと。
 ここでイオもか。
 背後でイオがこちらに突っ込んでくるのを把握する。
 感知で界を展開しているから不意打ちはあまり食わないで済む。
 ロナは、止めているみたいだけど。
 イオもソフィアと同じく今を好機と見たのだろう。

「ライドウ、悪くおも――!!」

「イオ、戻ってきたら……殺すよ。さっきのは忠告、これは警告」

 僕ははっきりとイオを見てそう伝える。
 拘束されたイオ。
 人型の腕に掴まれている。
 三本目の腕だ。

「なあっ!?」

「別に人型だから腕が二本なんて言ってない。お前だって四本あるし」

 まっすぐ。
 夜空に向けて彼を持ち上げる。
 戻ってきたら殺すと予告した後で。
 まあ、戻ってはこないだろうけど。

「ロケットパーンチ、なんてね」

「うおおおおおっ!?」

 腕を切り離して高速で撃ち出す。
 握り締められた状態のイオはそれを振りほどく事も出来ずにもがいたまま夜空に消えていった。
 殺すにはちょっと惜しい武人な人だし、どこに落ちてもまあ帰還くらいは出来るだろう。
 ステラからは離したし問題は無い。

「よそ見を、するなぁぁ!!」

 ソフィアが言葉と共に渾身のなぎ払いを振り抜く。
 あ、これは維持が難しいな。
 そこら中に黒いマーキングが付けられているし。

 キィィィン。

 耳障りな音。
 人型が砕け散った。

「これでぇぇぇ!!」

 まあ。

 ガギィィィィ!!

「……ッゥゥゥ!!」

 再構築が出来ないなんて、一言も言ってないけどね。
 破壊したと思ったモノが一瞬で現れ剣を防いだ事実。
 動揺して硬直したその一瞬を見逃してやるなんてことはなく。
 僕はソフィアを、人型の手で掴み取る。

「その姿、防御力はどれほどかな」

 握り締めた拳が、熱と共に光を放ち爆発した。

「アアアアアアッ!」

 本気の苦痛の叫び。
 ソフィアの驚き無しのこんな声を聞くのは、初めてか。





◇◆◇◆◇◆◇◆





 目の前で繰り広げられる戦いに、私は恐れを抱いていた。
 純粋な恐怖に近い感情だ。
 隣にいたイオは戦いを紡ぐ一人、ライドウの押される様を見て参戦を決めた。
 だが、一瞬で排除されてしまった。
 我が軍が誇る最強の将が。
 少し前の事だ。
 ライドウの形作る人型は脇辺りから三本目の腕を生やしてイオを掴み、そのまま体から切り離されて空に飛んでいった。
 イオは転移を使えない。
 なるほど、事実上彼はこの戦いから締め出された事になる。
 あんな手を使われたら、イオには成すすべもない。
 私が迎えに行けばその限りでは無いが、少なくとも魔将クラスにある者が全く歯が立たない相手が二人も目の前にいるこの現実。
 ただただ、まずい状況だ。
 ただ一つ、私が希望に思うのは、ライドウの切り札があの魔力体らしいという事だろうか。
 あれは確かに厄介だ。
 術にも転用できる魔力の塊で、簡単な詠唱ですぐに術が展開する。
 しかも魔力の限り再生も容易らしい。
 あれだけの魔力体を構築出来る時点で国家規模の魔力量を持つ証明でもある。
 純粋な物体では無いようだからその変換効率は私が知るよりもやや良いのかもしれないが、脅威そのものだ。

「魔族の実験では、一般的な魔術師が全ての魔力を使い切って砂粒一つ。あれだけの塊を、竜殺しの攻撃をいなす強度で具現化させるとなると……」

 計算する気が無くなる量である事は間違い無い。
 だが、所詮は魔力だ。
 私の切り札ならば相性はかなり良い。
 ライドウと言えど、やりようはある、はず。
 今ならばソフィアの援護も期待が出来る。
 それこそが、私がまだここに留まっている理由だ。
 この二人が万全の状態で敵に回った場合、魔族にとっても大事になる。
 だから、片方だけでも、排除しておけるなら。
 そういう事だ。
 本来なら王の許可を必要とする私の奥義だけど。
 流石に今手続きを踏む余裕はない。
 静かに。
 準備を始める。
 詠唱を編んで、かつ二人に気づかれない様に……。

「ロナ。何をする気か知らないけど、それ以上術を構成したら……潰す」

「っ!?」

 ライドウ!
 あいつ、この距離で。
 こちらを向きもせずに警告された。
 そういえば、学園であいつとお遊びで相対した時も。
 妙にこちらの攻撃を先読みした。
 他の学生と違って私は癖も読まれていない筈だったのに。
 背筋に冷たい汗が流れる。
 たった数日。
 最後に話して、変わらず甘いと思ったあの時から。
 ただそれだけの期間で、ライドウに何が起こったのか。
 わからない。
 が、それ以上に変化した事実が重要だ。
 少なくとも、戦場で、手のひらで転がせる相手ではなくなった。
 乾いた喉に唾液を送る。
 カラカラだ。
 久しく感じなかった恐怖が内で膨れていく。
 事を構えるべきではない。
 私は恐怖に屈した事を隠すように、色々な理由を並べて彼との敵対を否定していく。
 イオとは念話で位置を大体確かめてある。
 かなり距離はあるが迎えにいけない程じゃない。
 ……。
 退き時、だ。
 人の姿を歪めるまで竜の力を解放して、その言葉を信じるなら上位竜四匹分の力を持つソフィア。
 刃竜の剣、火竜の焔、水竜の回復と支援、影竜の特殊能力。
 確かに、国を潰せる力だ。
 だが涼しい顔で、本当に汗一つ流さずその相手をするライドウ。
 彼もまた。
 いえ、彼は……未知数、すぎる。
 少なくとも私は彼を、あまりにも低く評価しすぎていた。

「冗談よ、ライドウ」

「あ、そう」

「……勇者とステラ砦を諦めろ、だったわね。良いわ、ソフィアは知らないけど、私とイオはその条件を飲む。……退くわ」

「条件は?」

 ライドウは私を見る。
 ソフィアの相手をしながら、何度もよそ見をする余裕。
 これほど、なんてね。

「条件はないわね。魔王様とは、会ってくれるんでしょう?」

「勿論。一度話してみたいしね」

「なら、それで十分よ。彼女は客将ではあるけど軍を指揮してはいない。置いていくけど、構わないわね?」

「……無事は保証しない」

「ええ。この会話を聞いても戦いをやめる様子はないみたいだし。戦場の成り行き次第と受け止めるわ」

「じゃあ、どうぞ。言っておくけど、勇者にちょっかいをかける気なら外には識がいる」

「それほどバカじゃないわ。失礼」

 怖い。
 場を離れてイオを迎えに行く私の頭にあったのはその一念だった。
 ライドウは魔人。
 彼が自ら名乗った名前ではないにしろ、実に似合う異名だと、ようやく顔をつたう冷や汗を拭った私はそう思った。





◇◆◇◆◇◆◇◆





「……剣が手とくっついてるように見えるけど?」

「これは元々御剣の力の結晶みたいなものよ。こうして竜の力を強く解放すればするだけ、融合に近い状態にはなるわ」

 二人だけになった謁見の間、だった場所。
 ソフィアは再び立ち上がって青い光を纏い、キズを癒した後。
 まだその目には戦意がある。

「あのさ。そうやって手札を少しずつ切るのは、相手が自分よりも弱い時にしたら? それとも僕がお前を殺さない、とでも思ってる?」

 もしそうならソフィアの方こそ甘い。
 僕は、こいつを殺す気でいるから。
 蜃の名前に反応した以上、こいつは巴も喰らおうとしている訳だ。
 いくら実力が及ばなくても。
 むざむざ見逃してやる道理はない。

「戦場で殺されないなんて思うほど、夢見る年でもないわ。お前こそ、一撃の威力は帝国の勇者に劣っているんじゃないの?」

 帝国の、勇者?
 なんでいきなり彼の名前が。
 ソフィアが見逃したらしいけど。

「さあ? 帝国の勇者には会った事ないし。一撃で決める必要も無いだろう? 手札は少しずつ切ったっていい」

「……お前の方が上手うわてだから? 皮肉を……。やっぱり、あの子の方がまだ可愛げがあるわね」

「……」

「あの子の一撃は凄かったわよ。影竜と水竜。全力で二匹の竜を引き出してなんとか凌げた。この姿になる程じゃなかったけど、お前よりも上ね」

「……」

「仲間を思う事も出来るし、命を削っても目的を達そうとする覚悟もある」

「……」

「もしも誰かと手を組めと言うなら――」

「なるほどね、確かに。帝国の勇者は凄いね」

「なに?」

「お前みたいな規格外の女にさえ、魅了チャームをかけるんだから。しかも多少とはいえ、しっかり切っ掛けを残している。何度か遭遇すれば完成させられる程には」

「!?」

 まるで気がついてなかったのか、その表情が驚きに染まる。

「ははは、気付いてなかったんだ。 お前、抵抗しきれてなかったみたいだよ? いや流石は勇者だ。僕ならお前と敵対して、仲間にしようとは思えない」

 ソフィアの中に篭るように残る魔力の欠片を見つけて、感心した。
 まさかソフィアに魅了とはね。
 帝国の勇者、美人なら見境なしか?
 亜空でも被害者が出ないように対策をきちんと作っておかないとな。
 ソフィアにも効くほどの力なら結構驚異的だしね。

「み、りょう? 私が? お前、何を」

「見逃した、か。どうだか。殺さなかった本当の理由は勇者への好意なんじゃないか? っふふ、竜殺しともあろう者が」

「……」

「せめてもの情けだ。そのチャーム、解いてあげようか?」

 魅了されているからといって、僕との戦いに支障はない。
 でも。
 やたらと帝国の勇者を持ち上げる彼女が、道化に見えた。
 戦いの中で冷たく冷たくあろうとする程にソフィアは僕の脅威じゃなかった。
 驕りか、自信か。
 ただ彼女を哀れんでいた。

「……黙れ」

「済まない。だが、不意をついたりはしない。どう、チャーム打ち消させてもらえない? ディスペルマジックは安全な魔術だよ?」

「……黙れと言っている」

「一人ではどうせもう、出来る事も無さそうだ。待ってもお前に有利な展開は無いと思うよ?」

「その口を――」

「あのさ」

 僕が言葉を続けようとした瞬間。
 ソフィアの背が燃え上がった。
 否、燃えてない。
 竜の翼を象った炎が開いたんだ。

「閉じろっ!!」

 姿が!
 転移!?
 いや……違う!!
 単純に目で追えない速度で……。
 宙を見る。
 紅い軌跡が線の様に。
 縦横無尽にはしっていく。
 高速機動。
 まだこんな手が残っているのか。
 引き出しの多い奴。
 魔力体の至るところに斬撃の跡と黒いシミが残っていく。
 口数の多かったソフィアが、今は無言で攻撃を続ける。

「……ふぅ」

「御剣が戻れば、お前は終わりよ」

 ん、喋った。
 でも、的外れだ。
 いや、僕「達」が規格外過ぎるのか。

「御剣、ランサーは戻らない。上位竜数匹の力を持つお前でこの程度なんだろう? なら……ウチの識はランサーなんぞよりもっと強い」

 そう。
 高速で放たれる見えない斬撃を受けつつ。
 僕は確信をもってソフィアに答えた。
 同時に、さっきから念話で幾つかの許可を求めてきていた識に伝えた。

 好きにやって良い。

 と。
前回お知らせしたネット予約開始ですが、沢山のご予約ありがとうございます。ただただ感謝しております。

ご意見ご感想お待ちしています。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ