異文化認め合う市民社会に
1965年に日韓の国交が正常化し、22日で50年。だが、近年の両国関係は過去最悪とさえ言われる。これからの50年をどうつくるべきか。兵庫県内の関係者に聞いた。
■近年の日韓関係をどうみる。
国交正常化50年、そして戦後70年の今年、とても悔しい気持ちが先に立つ。「近くて遠い国」ではなく、「近くて近い国」を目指し、日韓双方が進めてきた幅広い交流が、ヘイトスピーチ(憎悪表現)や一部の政治家の発言で否定されたように感じる。
■なぜこのような事態に陥ったか。
結局、歴史認識や戦後補償の問題に十分に取り組めないまま日韓基本条約に調印したことが、今も尾を引いている。ひとたび竹島(韓国名・独島(トクト))問題などが注目されると、「韓国は反日国家」といったセンセーショナルな言葉が独り歩きしてしまう。日本、韓国両方の感情をあおるような報道をするマスメディアの責任も大きい。
■普段の取り組みで感じることは。
日本の学校などで、韓国文化を教える機会がしばしばある。日本人の子どもたちが、韓国衣装を着たり、キムチを私たちと一緒に食べたりして隣国の文化、人に触れることで、認識や対応が変わるのを目の当たりにしてきた。
神戸コリア教育文化センターでは、ハングル教室や交流カフェを運営。教室の受講生はほとんどが日本人だ。韓流ドラマやK-POPをきっかけに参加し、新たな出会いや議論が生まれている。異なる文化を認め合うことが地域を豊かにする、と実感した。
■日本人と在日コリアンはどう歩んでいくべきか。
在日コリアンの子どもたちの中に、世代を超えて変わらない思いがある。「自分が両国の懸け橋になりたい」ということ。そのために子どもはハングルの勉強を始めたりする。彼らの真っすぐな思いを、大人が支えていきたい。
一方、日本人は共に生きる者として、在日コリアンが市民社会で身近に暮らしていることを肌で感じてほしい。自分たちが生活する足元の歴史を見詰め、出会いを大切にすることが国同士の交流を深める礎になる。私たちは次の世代にどんな未来をつないでいけるだろうか。
(聞き手・藤村有希子)
▽キム・シニョン 1953年、山口県下関市生まれの在日コリアン2世。小学生の時に神戸市長田区へ。神戸在日コリアン保護者の会の代表を経て、現在顧問。同区在住。