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【神奈川】

一人一人と向き合う 横浜刑務所の上席統括矯正処遇官 関口 岳彦さん(38歳)

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 横浜刑務所(横浜市港南区)で教育担当の刑務官を務め、薬物使用など再犯率の高い罪を犯した受刑者の改善指導プログラムに携わっている。「プログラムで犯罪の被害に遭う人を減らしたい」と、受刑者一人一人の抱える問題や生活環境にも向き合っている。

■友人の非行直面

 「高校生のころ、友人が次第に学校に来なくなり、見た目も派手になっていった。どうしてなのかなと思っていた」。父が家庭裁判所の調査官だったこともあり、なぜ非行に走るのか興味があって、大学で心理学を専攻した。学んだことを生かせる職業に就こうと法務教官の採用試験を受け、二〇〇〇年から新潟少年学院に勤めた。

 転機となったのは、監獄法が改正され、〇六年に制定された受刑者処遇法。これにより、受刑者の改善指導が義務づけられた。同年から川越少年刑務所(埼玉県)で勤務していた関口さんは、性犯罪再犯防止プログラムの実施に向けた専従班の一人に。カナダで開発されたプログラムを基に、全国で初めて行った。

 少人数グループで話し合い、どのような状況で事件を繰り返してきたかを探る。「問題行動には、必ず原因やきっかけがある」。例えば、飲酒して外出したときに起こすことが多いなら、酒を飲まないようにしたり、飲酒後に外出するときは誰かに付き添ってもらったりするなど、生活に合わせた対策を一人一人考えてもらう。

■再犯防止に尽力

 その後も黒羽刑務所(栃木県)や府中刑務所(東京都)に勤務し、性犯罪再犯防止プログラムを展開。性犯罪以外にも取り組もうと、薬物使用や暴力行為防止プログラムなど、さまざまなプログラムがある横浜刑務所で昨年から勤務している。

 横浜刑務所には刑期が十年以上の人や、何度も罪を繰り返してきた人が服役している。だからこそ、改善指導が必要だと考えている。「プログラムを受けたからといって、いきなり犯罪をゼロにするのは難しいかもしれません。でも、何か一つでも思い出して、再び罪を犯す前にとどまってくれれば」と期待している。 (猪飼なつみ)

◇私の履歴書

1976年9月 北海道で生まれる

2000年   法務教官に採用され、新潟少年学院に勤める

 06年   川越少年刑務所で性犯罪再犯防止指導をする

 14年   横浜刑務所でさまざまな犯罪の改善指導全般に取り組む

 

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