国立がん研究センターが支援する日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)
米国臨床腫瘍学会で9つの臨床試験を報告
胃がん、大腸がん、悪性リンパ種の標準治療確立に大きく貢献
2015年6月10日
国立研究開発法人国立がん研究センター
国立研究開発法人国立がん研究センター
国立がん研究センター(理事長:堀田知光、所在地:東京都中央区、略称:国がん)が直接支援する多施設共同臨床試験グループ 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)
ASCOはがん領域の臨床研究に関する世界最大の学会で、世界中から3万人を超える参加者が年次学術総会に集まります。厳しい演題採択規準の下、意義のある臨床研究のみが採択され、毎年標準治療を塗り替える革新的な発表が行われます。
JCOGから報告した9つの演題のうち、特にJCOG0705試験(胃がん、詳細は後述)、JCOG0910試験(大腸がん、同)、JCOG0404試験(大腸がん)、JCOG0406試験(悪性リンパ腫)の結果は、各疾患の日常診療に大きな影響を与える結果であり、各がん種の診療ガイドラインへも採用される見込みです。
JCOGは、全国約200の医療機関が参加する多施設共同臨床試験グループで、国立がん研究センター研究支援センターおよび中央病院臨床研究支援部門が研究計画支援、患者登録、データ管理、統計解析等の支援業務を行っています。JCOGではほぼ全てのがん種を対象に常に50以上の臨床試験を実施しており、年間2,500〜3,000名の患者さんに新たにご協力いただいています。これまでに54ものJCOG試験の結果が各がん種の診療ガイドラインに採用され、優れた標準治療の確立に大きな貢献をしてきました。
国立がん研究センターは、JCOGを通じた多施設共同臨床試験により、今後もより良い標準治療の確立に尽力して参ります。
【特に注目を集めた発表】
JCOG胃がんグループと韓国胃がん学会との国際共同試験 (JCOG0705/KGCA01)
JCOG0705/KGCA01(REGATTA study)は、JCOG胃がんグループと韓国胃がん学会との国際共同試験で、治癒切除が難しい進行胃がんを対象に、標準治療である化学療法単独に対して、化学療法の前に原発巣切除を行うことが予後(生存)を延長するかどうかを検証したランダム化比較試験です。その結果、原発巣切除は予後を改善しないことが明らかとなりました。これまで十分なエビデンスがないままに日常診療で行われていた原発巣切除が推奨されないという結果は、国際的にも大きなインパクトを与え、選りすぐりの演題のみが発表されるSpecial Sessionでもひときわ注目を集めました。また、この試験はJCOG初の国際共同試験であり、試験の実施を通じて日本と韓国の胃がん領域の研究者のネットワーク形成に重要な役割を果たすことになりました。今後、胃がんのようにアジアで多いがん種に対しては、国立がん研究センターが中心となり、引き続きアジア諸国との国際共同試験を進めていきたいと考えています。
ステージIII大腸がんに対する術後補助化学療法(JCOG0910)
もうひとつ大きな注目を集めたのは、JCOG大腸がんグループで実施されたJCOG0910試験(CAPS study)です。JCOG0910試験は、ステージIII大腸がんに対する術後補助化学療法の標準治療であるカペシタビンに対して、試験治療であるS-1の治療成績が同等であるかどうかを検証したランダム化比較試験です。日本全国の55施設から1,564名もの患者さんにご協力をいただき、この試験が実施されました。S-1は胃がんや膵がんの術後補助化学療法として有効性が示されていることから、大腸がんの術後補助化学療法として日常診療にも導入されつつありました。しかし、JCOG0910試験の結果、S-1の有効性がカペシタビンに劣ることが示され、わが国の日常診療にも大きな影響を与えました。ASCOではPoster Discussion Sessionで取り上げられ、最適な大腸がん術後補助化学療法のあり方をめぐって詳細に討議されました。【発表演題一覧】
JCOG0705試験(胃がん)| 演題名: | 治癒切除不能進行胃がんに対する胃切除術の意義に関するランダム化比較第III相試験:JCOG0705/KGCA01(REGATTA study) |
| 発表者: | Han-Kwang Yang/Seoul National University Hospital |
| セッション名: | Special Session, Global Oncology Symposium |
| 演題番号: | 200 |
JCOG0910試験(大腸がん)
| 演題名: | ステージIII大腸がんに対する術後補助化学療法としてのS-1とカペシタビンのランダム化比較第III相試験(JCOG0910) |
| 発表者: | 濱口哲弥/国立がん研究センター中央病院 |
| セッション名: | Poster Discussion Session - Gastrointestinal (Colorectal) Cancer |
| 演題番号: | 3512 |
JCOG0912試験(胃がん)
| 演題名: | 臨床病期IA/IB胃がんに対する腹腔鏡下幽門側胃切除の開腹幽門側胃切除に対する非劣性を検証する第III相試験(JCOG0912):安全性および短期治療成績の解析結果 |
| 発表者: | 高木正和/静岡県立総合病院 |
| セッション名: | Poster Discussion Session - Gastrointestinal (Noncolorectal) Cancer |
| 演題番号: | 4017 |
JCOG0404試験(大腸がん)
| 演題名: | ステージII/III大腸がんに対する腹腔鏡下手術と開腹手術(D3切除)の根治性を検証するランダム化比較試験(JCOG0404):有用性の初回報告 |
| 発表者: | 赤木智徳/大分大学医学部 |
| セッション名: | Poster Session - Gastrointestinal (Colorectal) Cancer |
| 演題番号: | 3577 |
JCOG0406試験(悪性リンパ腫)
| 演題名: | 未治療のマントル細胞リンパ腫に対するリツキシマブ併用の寛解導入療法と自家末梢血幹細胞移植併用の大量化学療法の第II相試験(JCOG0406) |
| 発表者: | 小椋美知則/国立病院機構鈴鹿病院 |
| セッション名: | Poster Session - Lymphoma and Plasma Cell Disorders |
| 演題番号: | 8565 |
JCOG1106試験(膵がん)
| 演題名: | 局所進行膵がんに対するS-1併用放射線療法におけるゲムシタビンを用いた導入化学療法の意義に関するランダム化比較第II相試験 |
| 発表者: | 福冨晃/静岡県立静岡がんセンター |
| セッション名: | Poster Session – Gastrointestinal (Noncolorectal) Cancer |
| 演題番号: | 4116 |
JCOG0509S1(肺がん)
| 演題名: | 進展型小細胞肺がん治療における別のトポイソメラーゼ阻害剤への変更が生存に及ぼす影響:JCOG0509試験の付随解析 |
| 発表者: | 野村尚吾/国立がん研究センター研究支援センター |
| セッション名: | Poster Session - Lung Cancer |
| 演題番号: | 7571 |
JCOG1213試験(神経内分泌がん[NEC])
| 演題名: | 消化管・肝胆膵原発の切除不能・再発神経内分泌がん(NEC)を対象としたエトポシド+シスプラチン療法とイリノテカン+シスプラチン療法のランダム化比較試験(JCOG1213) |
| 発表者: | 森実千種/国立がん研究センター中央病院 |
| セッション名: | Poster Session – Gastrointestinal (Noncolorectal) Cancer |
| 演題番号: | TPS4143 |
JCOG1306試験(軟部腫瘍)
| 演題名: | 切除可能高悪性度非円形細胞肉腫に対するアドリアマイシン+イフォスファミドによる補助化学療法とゲムシタビン+ドセタキセルによる補助化学療法とのランダム化比較第II/III相試験(JCOG1306) |
| 発表者: | 田仲和宏/大分大学医学部 |
| セッション名: | Poster Session - Sarcoma |
| 演題番号: | TPS10575 |
プレスリリース:
日本臨床腫瘍研究グループ米国臨床腫瘍学会で9つの臨床試験を報告(PDF)
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