コラム:ロヒンギャ「孤立無援」のなぜ

2015年 06月 19日 09:40 JST
 
  • Mixiチェック

ロヒンギャは暴力に直面し、医療や教育や雇用へのアクセスといった基本的権利が阻害されている。ミャンマー当局がロヒンギャを自国民として認めていないことで、彼らは「アパルトヘイト的な状況」に置かれている。

しかし、それは今に始まったことではない。国際的非営利組織(NPO)「人権のための医師団」の2013年の報告書によれば、1991年5月から1992年3月までの間に、合計26万人以上のロヒンギャが国外に脱出。その背景には「土地収奪や強制労働、レイプや拷問、即決処刑を含むビルマ軍による人権侵害」があったという。

<なぜ今関心が高まっているのか>

四半世紀前から続く問題だが、ここ数年で彼らの置かれた状況は明らかに深刻化している。

ミャンマーは2010年の総選挙を経て軍政から民政へと移行したが、それがイスラム教徒に対する迫害の深刻化にもつながった。ロイターの報道によると、政府は、イスラム排斥を掲げる仏教徒の組織「969運動」の台頭を暗に認めている。2012年以降、仏教徒との深刻な宗教対立によって約14万人のロヒンギャが同国北西部から逃れた。

<ロヒンギャへの憎悪の根源は何か>

現代のさまざまな対立と同様、ミャンマーの現在の混乱は、その根源を植民地時代にたどることができる。

1826年に英国は、現在ミャンマー北西部となっている地域、ならびに現在ロヒンギャの多くが住んでいる地域を植民地に併合した。当時の植民地政府の移民法が緩かったことで、これらの地域にイスラム系ベンガル人が大量に流入。英国は新たな植民地の管理者として南インドのチェティア(金融業者)を置いたことが、仏教徒であるビルマの農民の強制立ち退きにつながった。英エコノミスト誌が指摘するように、それが遺産として長く残っている。   続く...


 
 
写真

日本の「買い負け」リスク再燃も

人民元高・円安の進行はまだ序章であり、「爆買い」や「買い負け」など悲喜こもごもの影響が日本で本格化するのはこれからだとの声も。  記事の全文 | 特集ページ 

 

注目の商品

 6月17日、ミャンマーに住む少数民族ロヒンギャの多くが、迫害から逃れようと過密状態の船に乗り込んでいる。写真は同国沖で漂流していた船に乗っていた難民ら。ラカイン州の難民収容キャンプで4日撮影(2015年 ロイター/Soe Zeya Tun)

外国為替フォーラム

写真
人民元高は日本に得か損か

元高・円安の進行に伴う悲喜こもごもの影響が日本で本格化するのはむしろこれからだと、三菱UFJMS証券の植野大作氏は指摘。  記事の全文 

 
写真
ギリシャ破綻でユーロ上昇も

仮にギリシャがデフォルトに陥った場合でも、ユーロは大きく売られず、むしろ上昇する可能性もあるとJPモルガンの佐々木融氏は分析。  記事の全文 

 
利上げ「後ずれ」の背景=村上尚己氏
 
黒田ライン「125円」の真偽=鈴木健吾氏
 
ドル128円の現実味=村田雅志氏
 
時間切れ迫るギリシャ協議=田中理氏
写真
大統領へ「機は熟した」か

ヒラリー氏は、性差別と年齢差別がどう相互作用するかについての生きた証拠だ。   記事の全文 

 
写真
中国「バブル崩壊」への道

中国株は06-08年のバブル崩壊を想起。  記事の全文 | 関連記事 

 
写真
ギリシャ債務再編の「裏技」

ギリシャ破たんは回避できるか。  記事の全文 | 関連記事 

 
中国輸入の減退、日本の生産・輸出に暗雲
 
ロヒンギャ「孤立無援」のなぜ
 
5分で分かる「南シナ海問題」

ロイターの公式アカウントはこちら!