Financial Times

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

[FT]米ウーバー、規制で成長ブレーキも(社説)

2015/6/22 14:00
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
保存
印刷
リプリント
共有

 その重要性を最初は理解しにくいことは、偉大な革新であることの証しだ。何か新しいものを突きつけられると、人はそれがなじみの事業モデルや法的枠組みにどう適合するのかを問い、多くの場合誤った答えにたどり着く。

勤務条件の改善を訴えてデモするウーバー運転手(2014年6月、カリフォルニア州サンタモニカ)=ロイター
画像の拡大

勤務条件の改善を訴えてデモするウーバー運転手(2014年6月、カリフォルニア州サンタモニカ)=ロイター

 今月、カリフォルニア州の労働委員会は配車アプリ大手の米ウーバーテクノロジーズについて検討し、同社はタクシーサービス会社であるという結論を出した。それは誤解であり、数え切れないほどの革新的な事業の成長を抑制しかねない。ウーバーは職の不安定や拡大する経済格差、そしてそれらと技術革新との関係についての懸念を巡って矢面に立たされてきた。これらは重要な課題だが、20世紀の雇用構造を20年前にはほとんど想像がつかなかった事業に当てはめることは、これらの問題に取り組む正しい方法ではない。

 リフトやサイドカーなどの類似の競合企業と共に、ウーバーは顧客サービスで目に見える改善を行ってきた。同社のサービスはしばしば従来型のタクシーよりも安価で便利なうえ、自家用車の運転に勝る選択肢になることもある。

 同社は58カ国の311都市に展開し、数十万の「ドライバー・パートナー」を擁する。こうしたドライバー・パートナーの大半がパートタイム勤務で、自家用車を用いている。ウーバーはこうしたパートナーを同社の従業員ではなく、ウーバーを手掛かりに見込み客を獲得する独立した請負業者だと主張する。

 同委員会が検討した事例では、サンフランシスコのウーバーの元ドライバーが自分は従業員として扱われるべきであり、それゆえ走行距離分の費用を受け取る権利があると主張した。

 委員会側はそれを認め、ウーバーはドライバーの審査や支払いの管理を含む「業務のあらゆる面に関わっていた」として同社に4152ドルを支払うよう命じた。この判断は1つの州の1人に関わるものにすぎず、同社は上訴しているが、今後はより大きな争いが起きそうだ。ウーバーのドライバーのグループは、すべてのチップの全額を受け取る権利などを含む従業員としての権利を求めて訴訟を起こしている。リフトの元ドライバーらも類似の訴訟を起こしている。

■致命的な打撃与える可能性

 これらの会社の立場は強いように見えるかもしれない。ドライバーはいつ働くかを自由に決められ、また競合する配車サービスを同時に利用することも可能だ。この2点は、ほとんどの雇用関係ではまれだ。

 ところが、同委の結論は配車サービス会社のもろさを示唆しており、会社がドライバーの雇用主であるという幅広い判断は、これらの事業モデルに極めて大きく、場合によっては致命的な打撃を与えるだろう。

 この判断が長期的にどう顧客やドライバーの利益になるのかは予想し難い。ウーバーの事業モデルが機能している背景のひとつが、失業と不完全雇用がいつまでも続き、副収入を求める人々が大勢いることなのも事実だ。だが、それはどうみても同社の過失ではない。むしろ強く求められている、収入の機会を同社は創出している。

 ドライバーが搾取されているという懸念への答えは、より厳しい競争にさらすことであり、それ以下ではない。ドライバーは顧客と同様に使用するアプリを選択できる。選択の範囲が最大限に広がれば、ドライバーは最高の支払いと条件を得ることができる。リフトの元ドライバーによる同社に対する訴訟の継続を認めた思慮深い命令において、裁判官は「カリフォルニア州裁判所が20世紀に構築した基準は21世紀の問題に取り組むのにあまり有用でない」との見解を述べた。

 このような曖昧な事例では法の均衡は革新、競争、顧客サービス、富の創造に有利に働くべきだ。既存の法律がそれを支援するのに不十分な場合は、十分に対応できるように改革をすべきだ。

(2015年6月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


人気記事をまとめてチェック

「ビジネスリーダー」の週刊メールマガジン無料配信中
「ビジネスリーダー」のツイッターアカウントを開設しました。
GlobalEnglish日経版

GlobalEnglish 日経版

世界を目指す、全てのビジネスパーソンに。 ビジネス英語をレベルごとに学べるオンライン学習プログラム。日経新聞と英FT紙の最新の記事を教材に活用、時事英語もバランス良く学べます。

詳しくはこちらから

Financial TimesをMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
保存
印刷
リプリント
共有

【PR】

【PR】

Financial Times 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

インド・アベンダス社の受付。インドは技術系起業が相次ぎ活気づいているが、規制による制約のため、資金を集めやすいシンガポールや米国へ移転してしまうことが多い=ロイター

ロイター

[FT]インド、新興企業の上場基準緩和へ

 急成長するハイテク企業がシンガポールや米国へ流出する事態を危ぶむ見方が広がるなか、インドは今週、新興企業の上場ルールの大幅な見直しに踏み切る。関係筋が明らかにした。…続き (6/22)

勤務条件の改善を訴えてデモするウーバー運転手(2014年6月、カリフォルニア州サンタモニカ)=ロイター

ロイター

[FT]米ウーバー、規制で成長ブレーキも(社説)

 今月、カリフォルニア州の労働委員会は配車アプリ大手の米ウーバーについて検討し、同社はタクシーサービス会社であるという結論を出した。…続き (6/22)

パリ航空ショーで飛行を披露するエアバス「A380」(18日)=AP

AP

[FT]パリ航空ショー、予想を上回る成約

 パリ航空ショーでの商談が6月18日に終わると、航空宇宙産業最大の見本市に長年参加しているベテランたちは、もう何年もなかったほど静かなイベントだったと軽口をたたいた。…続き (6/22)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

リーダーのネタ帳

[PR]