派遣法改正案:賛成多数で衆院通過 民主党など退席

毎日新聞 2015年06月19日 20時33分(最終更新 06月20日 00時28分)

退席した民主党議員らの空席(中央)が目立つ中、労働者派遣法改正案を賛成多数で可決した衆院本会議=国会内で2015年6月19日午後1時42分、山本晋撮影
退席した民主党議員らの空席(中央)が目立つ中、労働者派遣法改正案を賛成多数で可決した衆院本会議=国会内で2015年6月19日午後1時42分、山本晋撮影
労働者派遣法改正案の概要
労働者派遣法改正案の概要

 企業が同じ職場で派遣労働者を使える期間の制限(最長3年)を事実上撤廃する労働者派遣法改正案は19日の衆院本会議で、自民、公明などの賛成多数で可決され、衆院を通過した。民主党など一部野党は改正案が緊急上程されたことに反発して採決時に退席した。関連する同一労働同一賃金法案の成立を条件に採決に応じた維新の党は、改正案には反対した。政府・与党は24日までの会期を延長する方針で、改正案は今国会で成立する見通し。

 現行の労働者派遣法は、企業が同じ職場で派遣労働者を受け入れることができる期間を原則1年、最長3年(通訳など専門26業務は無期限)と定めている。改正案は専門26業務を廃止し、派遣期間の上限を一律に3年に設定。現在は3年を超えると同じ仕事で派遣労働者を使えないが、改正案では、労働組合などの意見を聞いて人を入れ替えれば、使い続けることが可能になる。「臨時的、一時的」とされてきた派遣雇用の原則が大きく変わることになる。

 激しい国際競争にさらされる企業側には「日本の労働規制は(解雇に厳しい制約があるなど)諸外国に比べ厳しく、日本企業の国際競争力を弱める大きな要因になっている」(化学大手)という共通認識があり、改正案成立に期待。安倍政権の成長戦略にも位置づけられている。

 政府側は働き方の多様化への対応も主張する。厚生労働省の2012年の調査では、派遣労働者のうち正社員を希望する人と、派遣を続けたいという人はいずれも約4割。派遣はキャリアアップができないなどの課題が指摘されていることも踏まえ、政府は改正案を「派遣を選ぶ人には待遇改善、正社員を希望する人には正社員の道を開く」と意義を強調している。

 もっとも、政府側が今国会での改正にこだわったのには理由がある。10月1日から、期間制限の3年を超えるなど違法派遣があった場合、労働者が希望すれば正社員で雇わなければならなくなる。今回の改正案で派遣を続けられるようになれば、これを実質的に無力化できるからだ。

 本会議に先立ち開催された衆院厚労委では、中島克仁氏(民主)が「派遣から抜け出しづらくなり、雇用は確実に不安定になる。欠陥法案を通していいのか」と批判。安倍晋三首相は「雇用安定措置を新たに義務付ける」と反論した。

 改正案ではこの他、同じ派遣労働者でも事業所内で働く課を変えれば、その都度3年ずつ働けるようにする。また、例外的に、派遣会社に無期雇用されている労働者は期間制限なく同じ職場で働ける。

 労働者の雇用安定措置も盛り込まれ、派遣期間が3年に達した労働者を直接雇用するよう派遣先に依頼したり、自ら無期雇用したりすることなどを派遣会社に義務付ける。派遣労働者のキャリアアップのための計画的な教育訓練実施も派遣会社に求める。また、届け出制と許可制に分かれている派遣制度を許可制に一本化する。

 19日の衆院本会議では、自民、公明、維新により修正された同一労働同一賃金法案も、自公維3党などの賛成多数で可決された。【堀井恵里子】

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