安保関連法案:徴兵制「違憲判断の変更ない」の未来は?
毎日新聞 2015年06月19日 23時35分(最終更新 06月19日 23時47分)
政府が安全保障環境の変化を理由に憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認したのと同じ論法をとれば、徴兵制も可能になるのかどうかについて、19日の衆院平和安全法制特別委員会で論点となった。
「徴兵制についても、安全保障環境や時代が変わったら『一部限定的徴兵制』とか編み出すのではないか」。民主党の辻元清美氏は集団的自衛権の「限定容認」になぞらえ、こう質問した。
政府は、徴兵制については、人身の自由を定める憲法18条が「意に反する苦役に服させられない」と規定する趣旨から、本人の意思に反し、兵役を強制することは憲法上許容されない、と説明してきた。ただ、徴兵制禁止は憲法に明記されておらず、あくまで憲法解釈による結論だ。その一方、集団的自衛権について、政府は「国際法上保有するが、憲法上行使できない」としてきた憲法解釈を、昨年7月の閣議決定で中国の軍事的台頭など安保環境の変化を理由に変更し、限定的に行使が可能とした。辻元氏が指摘したのは、徴兵制も集団的自衛権と同様の理屈で、将来的には可能となりかねないとの懸念だ。
横畠裕介内閣法制局長官は「単なる環境の変化によって法的評価が変わるはずもない。今後とも違憲であるという判断に変更はあり得ない」と反論した。だが、辻元氏は、菅義偉官房長官が「集団的自衛権の行使を合憲としている」と説明した3人の憲法学者を挙げ「3人とも徴兵制は憲法違反とする政府の解釈は間違いだと主張している」と紹介。集団的自衛権と同様に徴兵制導入もあり得るとの見方を示し「憲法規範の信頼性が揺らいでいる」と批判した。
徴兵制に対する見解を巡っては、政府内でも温度差が見られた。石破茂・地方創生担当相は19日の特別委で、スイスでは国民投票の結果、徴兵制の廃止を否決したと紹介。「(日本の徴兵制禁止の)根拠は憲法18条などだが、国際社会ではどう受け取られるかは念頭に置いた方がいい。国を守るということはどういうことなのか」と述べ、兵役を「苦役」とする従来の見解に違和感を示した。【飼手勇介】