世界のテロ死者:14年81%増、3万人超に 米報告書

毎日新聞 2015年06月20日 11時11分(最終更新 06月22日 12時13分)

テロ攻撃による死者数
テロ攻撃による死者数

 【ワシントン和田浩明】米国務省は19日、世界のテロ情勢に関する2014年版の報告書を発表した。それによると、テロによる死者は前年比で81%急増し3万2727人に達した。過激派組織「イスラム国」(IS)の活動が活発化したイラクや、これに同調するイスラム過激派「ボコ・ハラム」が襲撃を繰り返すナイジェリア、旧支配勢力タリバンが活動するアフガニスタンでの増加が顕著だった。

 テロ攻撃数もイラクやアフガニスタンなどを中心に前年比で35%増加し、1万3463件に達した。1回の攻撃当たり死者数も増える傾向にあり、ナイジェリアで6.46人から12.8人、シリアで5.19人から8.24人、イラクでは2.59人から3.07人に増加した。

 国務省は「テロ」の定義について、「政治的な動機に基づく計画的な暴力」とし、犠牲者には非武装の民間人だけでなく、戦闘地域外の兵士も含まれるとしている。

 国別情勢では、イランの革命防衛隊などによるテロ支援活動が「世界中で続いている」と指摘。シリアのアサド政権に対し「国連安保理決議に違反して武器供与を続けている」と批判した。

 一方、ISへの外国人戦闘員の流入は、昨年12月までに90カ国以上から1万6000人を超えた。過去20年で外国人戦闘員の参加があったアフガニスタンやパキスタン、ソマリア、イエメンなどでの紛争のいずれよりも多く、「訴求力」の強さを示した形だ。

 報告書は、西側諸国でISや国際テロ組織アルカイダの影響を受けた個人がテロを行う事案が頻発していることにも言及、「テロ組織に共感した個人が独自に攻撃を行う新しい時代が来ている」と説明した。

 発表を受け記者会見したカイダノー調整官(テロ対策)はISについて、拠点のイラクやシリアだけでなく北アフリカのリビアやエジプトなどでも連携組織が生じていることに「深く懸念している」と述べた。外国人戦闘員については「中東の暴力的状況を悪化させ、出身国の脅威にもなっている」と警告した。また、シリアでの内戦が「世界各地のテロ関係事件の発生に拍車をかけている」とも述べ、その波及効果に危機感を表明した。

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