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くらし☆解説

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くらし☆解説 「ここが分らん!安保法制(2)」

津屋 尚 解説委員 / 安達 宜正  解説委員

岩渕:くらし☆解説、岩渕梢です。きのうから、国会で審議中の安全保障関連法制についてお伝えしています。きのうは「集団的自衛権」についてお伝えしましたが、きょうはもう一つの柱である「外国軍隊への後方支援」を中心にお伝えします。
政治担当の安達解説委員、そして軍事が専門の津屋解説委員です。

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岩渕:まず安達さん。私の周りでも関心が高く、国会中継を初めてじっくり見た、という人も少なくないですが、皆さん何よりも「ヤジ」がひどいことに驚いているんですが、いつもこんな感じなんでしょうか。
 

安達:僕も国会取材を始めてから20年。議論にヤジはつきもので、「議会の華」とも言われていて、まったくないのもさびしいですが、今回はこれまでと違うように思います。与野党の議員もそうですし、安倍総理まで「ヤジ」というか、不規則発言をして、陳謝しました。僕は二つの意味で問題だと思います。

岩渕:二つ?

安達: 1つはこれだけ、複雑で多岐にわたる法案なのに、議場がうるさくて、ますます中身がわからなくなる。もう1つは先日、若手の政治学者たちと議論しましたが、有事の際に、自衛隊の派遣を決めるのは政府と国会。こんな感情的になる人たちに任せていいのかと。こういう意見が国民のなかに広がるのではないかということです。

岩渕:そこで津屋さん、きょうのテーマの「外国軍隊への後方支援」ですが、
まずきのうのおさらいをしましょう。

津屋:はい。国会で審議されている安全保障関連法案の柱は、「日本の平和と安全」を目的にしたものと「国際社会の平和と安全」を目的としたものにわけられます。
きのうは、「集団的自衛権」についてお伝えしましたが、きょうは、「外国軍隊への後方支援」です。

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岩渕:外国軍隊への後方支援は両方にあるのですね。

津屋:そうです。日本の安全に影響が大きい事態に対応している外国軍隊への支援と、
PKO・国連の平和維持活動などに参加する外国軍隊への支援です。

岩渕:津屋さん、視聴者からこんな質問が来ています。「後方支援とは何ですか?具体的にどんな活動なのですか?」

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津屋:「後方支援」は、自らは直接戦闘には加わらず、戦闘を行っている部隊の活動をサポートすることです。ここに示した図は、戦場を簡略化したものです。
軍事用語では、戦闘が行われている現場を「正面」と呼び、それ以外の場所を「後方」と呼んでいます。この図の通り、通常の軍隊では、戦闘の現場以外はすべて「後方」です。ここで行われる作戦の支援活動が「後方支援」です。

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岩渕:具体的にはどんな活動があるのですか。

津屋:作戦の遂行に必要な物資の提供、例えば、弾薬や食料、燃料などの提供です。そして、こうした物資や人員を輸送することや、車両や武器を整備したり修理したり、それから、けがをした人を治療するという活動もあります。

岩渕:炊事もあるようですし、いろんな活動があるんですね。

津屋:そうですね。これまで自衛隊の活動は「後方地域支援」という日本特有のもので、一般的な「後方支援」とは区別されていて、より狭い概念です。活動の対象地域は、「非戦闘地域」とか「後方地域」と独特の名前で呼び、戦闘が起きる可能性がより低いと思われる地域に活動を限定してきました。

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新たな法案では、この制限がなくなり、正面、つまり「戦闘地域」以外であればどこでも対象になりえます。政府は、安全な場所を選んで活動させるとしていますが、安全の線引きをどこで引くかは難しい問題です。

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岩渕:日本の安全に関わる場合の外国軍隊への後方支援は、これまでとどう変わるんですか。

津屋:最も大きいのは、地理的範囲の制約が取り払われるという点だと思います。これまでは、主に朝鮮半島有事を想定して、対象地域を日本の「周辺」に限定してきたんですが、

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新たな法案では、日本から離れていても自衛隊が後方支援活動をする対象になりえます。支援の相手は、これまでアメリカだけでしたが、アメリカ以外の国でも可能になります。具体的には、アメリカの同盟国で日本とも関係を強化しているオーストラリアなどが想定されています。さらに、後方支援の中身として、弾薬の提供なども新たに加えられました。

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岩渕:安達さん、こうした問題の国会での議論はどうなっていますか。

安達:自衛隊の活動範囲、まだあいまいなところもありますが、地理的範囲については安倍総理もインド洋や中東などと具体的な地名をあげています。範囲が広がることになります。それに後方支援、野党側からはそのものが戦闘行為だという批判が出ています。軍事用語で言えば、兵站業務。敵国から見たら、そこが狙われます。さらに今回の法案が成立すれば、現に戦闘が行われていないところであれば活動できるので、さらに戦闘に巻き込まれる可能性が高まったという指摘もあります。

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津屋:安達さんの指摘の通り、“敵の補給路を断つ”というのは、軍事作戦の常識とも言われていて、過去の多くの戦争でも、兵站部門 、つまり 後方支援部隊への攻撃が
数多く行われてきました。「戦闘現場は危険で、後方は安全」という考え方は必ずしも正しくはないと思います。この一方で、自衛隊の任務は、もともと危険を伴うものでもあるので、自衛隊にリスクがあるかどうかを議論するだけでなく、国として何をどこまですべきなのか、その際、国や国民がどのようなリスクを負うのかについてもっと議論すべきではないかと思います。

岩渕:視聴者からの質問です。「自衛隊員のリスクが高まると、自衛隊に入隊する人がいなくなり、徴兵制をという議論にならないのか」。このあたり、子どもを持つ親としては、不安を感じる部分でもありますね。

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安達:安倍政権も、与党も徴兵制は憲法違反で、ありえないとしています。憲法18条にある「意に反する苦役」に該当します。それでも、心配だという声があるのは、自衛隊員のなり手がいなくなるのではないか、それに集団的自衛権行使が憲法解釈の変更によって一部容認されたように、将来、合憲と改められるのではないかということでしょう。将来、政治の側が徴兵制を問う可能性を完全に否定することはできませんが、そうなるまでに何度も国政選挙もありますし、憲法改正となれば、国民投票が必要になります。最終的には国民自身の判断にかかってきます。

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岩渕:今後の国会審議のポイントは何ですか。

安達:たくさんありますが、2つ指摘します。自衛隊の活動範囲の拡大や歯止めの議論から、そもそもの議論に戻ってきたと思います。きのう、衆議院の憲法審査会で与党が推薦した憲法学者も含め、参考人3人全員がこの法案は憲法違反だと指摘しました。政府・与党は「日本の安全のため、憲法の枠内でのギリギリの努力」と説明していますが、この点の議論が必要になってきています。

岩渕:もう1つは何ですか。

安達:政府・与党が本当に今国会中の成立にこだわるのかどうかということです。アメリカで安倍総理は、夏までの成立を約束してきました。その一方で、安倍総理は国民の理解を得てと強調している。それまでに国民の理解を得るにはかなり大変だと思います。どこまで来れば、国民の理解を得たと判断するのか、ここがポイントです。
 

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