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2015-06-22

人質・捕虜が、(悪)知恵、品位、優しさで監禁側を感化し、そのボスに…というパターンは何が元祖?【創作系譜論】

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【創作系譜論】

前の記事から続きますが、BSスカパー!というチャンネル

http://www.bs-sptv.com/

では、映画予告編ばっかり放送する「ニュー・シネマ・トレイラーズ」

http://www.bs-sptv.com/program/160/

というのをやってた。そこで今、たまたま見たのは

D

という、作品。上映中。主演はアンソニー・ホプキンス

公式サイトを見てみよう。

http://kidnapping.asmik-ace.co.jp/

1983年オランダアムステルダム。大ビール企業「ハイネケン」の経営者、フレディ・ハイネケンが何者かに誘拐された。世界屈指の大富豪の誘拐は世間を驚かせ、警察も巨大組織による犯行を疑う。しかし誘拐したのは、犯罪経験のない幼なじみの5人の若者だった・・・。

大胆不敵な計画を実行し、史上最高額(当時)の身代金を要求する犯人グループ。すべては上手くいくはずだった。ところが、人質であるハイネケンの傲慢な言動に、5人は翻弄され、歯車が狂いだしてゆく。駆け引き、誤算、落とし穴。誘拐された大富豪と、誘拐した若者たち。追い詰め、追い詰められる男たちが支払う“誘拐の代償”とは――?!


人生には二通りある

  大金を持つか 大勢の友人を持つかだ

              両方はありえない

と、人質が誘拐犯に向かって言うってのはどういう状況なんだ(笑)


これは一応、実話が元になっているけれども、たしかに人質とか捕虜として拘禁する対象は、無力な子供のほか、金持ち権力者、名士や君主などの指導者も対象になりますよね。彼らに知性や人間的な迫力や魅力があって、粗暴な犯罪集団テロリストがついに感化される…というのは、あながち根も葉もない妄想、というわけでもないかもしれない。

 

ま、その半面の描かれ方としては、「誘拐集団が実は気のいい、話の分かる人間味のある連中」という前提が必要になるんですけどね。


リアルの事件で、人質と犯人の関係が深まるのは「ストックホルム症候群」などの故などもあってきれいごとではないけど、おとぎ話としての人質ものはまた別だ。



そこからバリエーションはいろいろあって、

・誘拐集団がついには部下になって正道に帰る(人質が王子で、その部下になるとかね…)

・なんか人質のほうが、逆に犯罪計画に乗り気になって陣頭指揮を執り、人質が「ボス」になる(一番有名なのは、「大誘拐」でしょうか。「銀魂」で真撰組の近藤が宝くじが当たる回もこのネタでしたな)

大誘拐 RAINBOW KIDS [DVD]

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大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)

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掃除や食事などの生活面を取りしきり「お母さん」的存在になる(お馴染み「ラピュタ」…もうあの時点では空賊とは和解済みか。)

http://youpouch.com/2012/10/01/83969/

皆さん、あのシチューを覚えていますか? 汚れまくった台所を任されたシータが、台所を掃除して、最初に作っていたメニューです。もう、勝手に命名しちゃおう。「ラピュタシチュー」と呼びましょう! ラピュタシチューがあまりにもおいしそうなので、いろいろ調べて作ってみましたよ!

で、この初出というか古いものをさぐると、ちょうど半世紀前に、「オバQ」でも扱っていたりします。

http://d.hatena.ne.jp/hardmelon/20090725/p1

オバケのQ太郎 1 (藤子・F・不二雄大全集)

オバケのQ太郎 1 (藤子・F・不二雄大全集)

ゆうかい魔に気をつけろ!:なぜか誘拐魔が藤子両氏。どう見ても善人。迷惑オバケのQちゃんの迷惑っぷりが功を奏する。

キテレツ大百科」でも「エスパー魔美」でもこの種のネタはやってるから、藤子・F・不二雄先生の好きな定番だったんだろう。




ただ、黎明期トキワ荘レジェンドたちは、海外の面白い映画小説の名翻案家でもあったしね…根拠をもって示せるわけではないが、これが元祖とはやっぱり言えない気もする。オー・ヘンリーの作品とかにありそうな。

(人質とはちょっと違うが、気のいい強盗団を描いた「荒野の王子様」という作品がある)

O・ヘンリ短編集 (3) (新潮文庫)

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http://blog.goo.ne.jp/s-matsu2/e/98f68e12a2b0842da3ca2f49cda3c8fe

「荒野の王子様」

まだ子供なのに石工宿泊所に働きに出されてつらい思いをしているレナが母親に向けて手紙を出す。郵便配達が途中で強盗の一団に襲われる。強盗は偶然レナの手紙を見つけ、それを読む。仕事がつらいので自殺するという内容の手紙だった。強盗団は……(略)



かなりずれはあるが「本来ならしおらしくしてる筈の被監禁側が、才覚によって活躍し、大きな顔をし始める」という意味なら「居残り佐平次」もそうだしね。

D

人質が「動じない」という部分では、既に「椿三十郎」の家老の奥方がいた。

彼女は、救出側の三十郎に対して「そなたは、人を斬り過ぎます」と叱り、自分を誘拐した側の心配をしているのだから、萌芽があるともいえる。

http://yanakanokakashi.cool.coocan.jp/homepage/space-X/fancy/cinema/cinema00/kurosawa/kurosawa00/tubaki.html

椿三十郎』で入江たか子扮する家老の奥方が荒々しい三十郎を諭すセリフがある。

「あなたは少しギラギラし過ぎてますね。鞘(さや)に入っていない抜き身みたいに。でも本当にいい刀はちゃんと鞘に入ってるものですよ」

三十郎の男臭さと血なまぐさい殺陣がこの映画のひとつのトーンになっているなかで、それとは違った、穏やかで柔らかな空気を送り込んでくるもう一方の重要なトーンをおもに入江たか子が荷なっていた。上のセリフを彼女は、嫌味の欠片も感じさせない、まるで柔らかな優しい光で包み込むように発している。


そんなこんなで、

『人質・捕虜が、(悪)知恵、品位、優しさで監禁側を感化し、いつしか誘拐犯たちは、人質の手下や仲間に…というパターンは何が元祖?』

元祖はともかく、皆さんのご存知の作品を教えてください。年表的なものを作れれば幸いなので、発表年が分かれば、なおありがたい。

オバQのように、ギャグマンガドラマの中の1エピソードとしても出てくると思います。


今回も、同趣旨の質問を「人力検索はてな」で並行して行いました。

人質・捕虜が、(悪)知恵や品位で監禁側を感化し、上に立つ…というパターンの例を教えてください。

http://q.hatena.ne.jp/1434929793

ku-pa-ku-pa- 2015/06/22 08:55 元祖ではないですが、宮崎駿作品だと『天空の城ラビュタ』(1986年)の前に、TV『名探偵ホームズ』第4話「ミセス・ハドソン人質事件」(1984年)がありますね。

gryphongryphon 2015/06/22 08:56 お!さすが!!これは教えてもらわないと分からない。

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