谷口はブスケッツになれる。2015年J1第16節 川崎フロンターレ対松本山雅FC レビュー

2015年Jリーグ第16節、川崎フロンターレの対松本山雅FCは、2-0で川崎フロンターレが勝ちました。昨日のチーム走行距離106.61km、チームスプリント数116回は、今シーズン勝利した試合の最も少ない数字でした。このデータは、川崎フロンターレがボールを握り続けた結果、自分たちは走らず、相手を走らせることが出来ていたかを示しています。

明確になったボランチの役割

この試合でボールを握り続けることが出来た大きな要因は、谷口のプレーにあったと僕は思います。

前節の湘南ベルマーレ戦から、谷口をボランチで起用するようになりました。前節は、森谷と谷口が同じ位置に横並びにならんでいましたが、この試合では、谷口が後ろ、森谷が前に位置するように、位置取りを変えていました。つまり、「攻撃は森谷、守備は谷口」と役割を明確にしたのです。

谷口のボランチのプレーで気になっていたこと

実は、谷口がボランチでプレーしている時、僕は1つ気になっていた事がありました。それは、谷口の攻め上がりです。

ボランチでプレーしている時の谷口は、チャンスとみると、相手ゴール前まで攻め上がってしまうのです。チャンスになればよいのですが、ボールを奪われた時、谷口がいて欲しい場所にいないので、カウンターを受けてピンチになる場面がみられました。

僕の考えですが、ゴール前に攻め上がって得点を奪う選手は、ボランチじゃないと思ってます。ボランチは攻撃も重要ですが、守備の時にセンターバックとの距離を一定に保ち、常にカウンターを受ける時の事を想定しながら、センターバックの前のスペースを守ることを意識してプレーしなければならないと思っています。例えば、FCバルセロナのセルジ・ブスケッツは、ボランチのお手本のような選手です。

この試合、谷口がゴール前に攻め上がったのは、1度だけ。攻撃の関与は森谷に任せ、自分はセンターバックの前に位置取り、ボールを左右に動かしながら、むやみに攻め上がることなく、細かくボールを動かし続けていました。それこそ、セルジ・ブスケッツのように。本人も「だいぶボランチのプレーを思い出してきた」と語っていましたが、今までのボランチでのプレーは、彼自身納得がいってなかったのだと思います。これが、本当のボランチの谷口なのだと、試合を観ていて感じました。

中盤でボールを奪い、相手を押し込み続ける

役割を明確にしたことで、谷口が元々もっている強みが、ボランチで活かされるようになりました。

谷口の強みは、身体の強さと、強い身体を自在に操ることで発揮されるボールや身体捌きの技術の高さです。谷口が後ろにいることで、相手がロングパスを蹴ってきても、競り勝ってボールを奪うことが出来ました。また1対1も強いので、ドリブルでボールを運ぼうとしても、奪い返すことが出来るようになりました。

今までは中盤でボールを奪える選手がいなかったので、相手がボールを持つとズルズルと下がらざるを得ませんでしたが、谷口がボールを奪ってくれたり、中盤で相手のパスコースを消してくれるので、DFもコースが限定されやすくなり、相手ゴールに近い位置でボールが奪えるようになりました。ボールを握り続けることが出来たのは、相手ボールになっても直ぐにボールを奪い返し、攻め続けることが出来たからです。

ミスが増えたのは許容範囲

谷口は試合後半にミスが増えましたが、これは致し方ないと思っています。

センターバックからボランチにポジションが代わって2試合目。サンプル数が少ないので単純に比較は出来ませんが、1試合あたりの走行距離が、センターバックの時は10.19kmだったのが、ボランチになってからは11.15kmと1km近く増えています。サンプル数が少ないので単純に比較は出来ませんが、ボランチにポジションが変わって走る距離が増えているので、体力の消耗も激しいのだと思います。位置取りが上手く出来ず、走ってカバーしている場面もみられました。僕は、走行距離の増加がミスの要因の1つだと思います。

また、日本代表に招集されたため、他の選手と違って、コンディションを整える時間がとれませんでした。ただでさえ、谷口は今シーズンはJリーグ、ナビスコカップ全ての試合にフルタイム出場しています。蓄積している疲労もあると思いますので、コンディションを整えることが出来れば、もっとよいプレーが出来るはずです。

コンディションが悪くても勝つための谷口のボランチ

この試合は良い出来でしたが、2週間空いたことで、チームのコンディションが良かったことは考慮する必要があります。

川崎フロンターレは、コンディションがよい試合は相手を圧倒して勝つことが出来ますが、中3日、中2日で試合が続くと、質がグッと落ちる傾向がみられます。特にコンディションが悪くなると、ボールを奪う位置が自陣ゴール前になる傾向がみられます。こうしたコンディションが悪い時でも、相手を押し込んで戦うための策として準備していたのが、谷口のボランチ起用です。

今後、大島が復帰した時に、谷口をどこで起用するのか。連戦が続いた時や、相手チームの力が拮抗している時に、同じように機能するのか。引き続き注目したいと思います。

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