韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は11日の米紙インタビューで「(慰安婦問題の日韓協議で)相当な進展があった」と述べた。

18日の日本経済新聞が、その言葉の裏について概要を書いている。


日韓協議で、韓国は日本は「安倍晋三首相による元慰安婦への謝罪や責任への言及を含む声明」と「元慰安婦への財政支援」を求めている。

これに対し、日本政府は「ソウルの日本大使館前や米国にある慰安婦像の撤去」や「米国など海外での慰安婦をテーマにした市民団体の反日キャンペーンへの後押しの停止」を求めている。また、慰安婦問題は今回の朴政権で最終解決し、以後は一切、蒸し返さないと保証することを要請している。


韓国政府が最も重視しているのは、慰安婦問題について、日本政府が国家としての責任を認め、慰安婦に財政支援するること。安倍首相が慰安婦問題については日本の責任を認める発言をすることが特に大事だ、という。

要するに韓国政府は「朴政権が国民に対して面子が立つようにすれば、慰安婦像も撤去するし、二度とこの問題を蒸し返さないから」と言っているようだ。

これって、いつか来た道ではないか。日本は相手の求めに応じ、何度も謝罪した。1992年、宮沢首相が訪韓し謝罪。93年、細川首相が訪韓し、謝罪。98年には小渕恵三首相と金大中大統領が日韓共同宣言を出し、小渕首相は過去の歴史について反省とお詫びを述べた。これに対し金大中大統領は「謝罪は一度でいい」と述べて、二度と過去の問題を蒸し返さないと述べた。

李明博大統領も当初は「未来志向で」と言っていたのに、謝罪を要求し、竹島に上陸する有様。

今回も同じだ。韓国はウォン高などで経済状況が悪化、日中会談成立や米議会での安倍首相演説の成功などで外交的にも孤立化しつつある。おまけにセウォ号沈没にMERS(中東呼吸器症候群)の発生とその対応不備で、朴大統領の支持率は急落している。

「何とかして!」と日本に泣きつきたい状況なのだ。

「慰安婦問題に誠意ある対応をしない限り日本の首相とは会わない」と突っぱねてきたのに、このところ「政治と経済は別」と政経分離路線を取りだしてきたのも、経済や環境・社会問題などで日本の資金や技術、ノウハウを借りたいということが大きい。外交的孤立を避ける狙いもある。

つまり、日本は別に焦る必要はないのだ。困っているのはアチラであり、こちらではない。韓国は元慰安婦の個人請求権がなお残っているとして日本の法的責任を明確にすべきだとしてきたが、日本は1965年の日韓請求権協定により「完全かつ最終的に解決した」との立場で、法的責任を否定している。

この路線を堅持すべきなのだ。日経によると、韓国政府関係者は「慰安婦への財政支援について日本の政府予算を使ってくれれば『日本政府が国家の責任を事実上認めカネを出した』と韓国国内に説明できる」とか、安倍首相が首相声明で「実質的に日本が責任を認めたと受けとれる表現をしてくれればいい」などと、虫の良いことを言っているようだ。

日本の政治家や官僚はここまで来ると、「少しは認めてやってもいいのでは……」と安倍首相周辺に言い出すだろう。ここ数日の首相の日誌を新聞で見ると、その影がちらついている模様だ。

例えば19日午前、森元首相と河村建夫衆院議員が官邸を訪れ、安倍首相に会っている。河村議員は日韓議員連盟の幹事長である。

むろん日韓の交流を円滑に進めることは必要だろう。だが、外交の原則を曲げれば、禍根を残す。実際、その歴史だった。二度と過去を蒸し返さないと言いつつ繰り返す。一度決着した日韓条約さえひっくり返そうとしている。国際常識が通用しない国だ。

韓国は自国の調子が良いときは日本に居丈高になり、厳しい状況になると日本に甘え、たかってくる。「こちらが下手に出れば日本は必ず譲歩してくる」と舐めているのだ。

そういう態度を助長してきたのは日韓議員連盟をはじめとする日本の政治家であり、それと癒着して来た外務省関係者、経済人だ。

この負の歴史こそ、今断たねばならない。相手の要求は呑まず、一方、慰安婦像の撤去、反日活動への関与停止は求めていく。そのくらいでちょうどいい。そうした突き放した姿勢が、韓国との関係を成熟した先進国の常識を伴ったものに変えて行くと期待したい。

日韓経済関係の悪化懸念? そんなことは起こらない。それは、これだけ外交関係が冷却していた過去2,3年でも多大な貿易交流や共同事業が続いていることが証明している。

韓国経済は日本なしではやっていけないのだ。もとより日本も関係企業との関係を必要としている。夜郎自大になってはいけない。だから、お互い必要とする関係だけをクールに続けていけばいいのである。

韓国は「日本に譲歩するように言ってくれ」と米国に泣きついてくるだろうが、
「日韓条約を覆すなど、外交の原則ははずせない」と、外交常識をきちんと説明し、日本の立場を強調することが肝心だ。

油断すれば、韓国は何度も日本にとりつき、日本から利益を得ようとする。過去の経過を考え、そう考え、用心するにしくはない。

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