同じ日、ソウル市麻浦区にある別の病院の病棟からは賛美歌が聞こえてきた。腹膜炎で入院中のAさんの所に、同じ教会の伝道師と信者たちが見舞いに来たのだ。Aさんは「中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)問題で大変なことになっているから来ないでほしいと言ったが、『そんなことはできない』と言って来てしまった。明日は別の信者たちが見舞いに来ると言っていて、困っている」と話す。この病院の警備担当者は「整形外科の患者が多い病院なので、規制するのは(ほかの病院より)もっと難しい」と言った。患者や見舞い客たちは「骨折は感染と関係ない」と考え、病院の規則を守る必要はないと思っているのだ。この担当者は「骨折した患者に会いに来た見舞い客2人が、焼酎を持ち込んで患者と一緒に飲んでいたので止めたが、5分後に戻ってみるとまた飲んでいた。2人部屋で窓を開け、こっそりタバコを吸って注意された見舞い客もいた」と言う。骨折した患者に会いに来たとしても、病室には手術を受けて免疫力が落ちている患者が別にいるということは、彼らの眼中にない。
病院側の制止に従わない見舞い客がいることから、医療関係者たちは頭が痛い。本紙が入院病棟のある病院に勤務している医師100人を対象に「韓国の病気見舞いで最大の問題は何か」と質問したところ、「大声で騒ぐこと」(19.7%)、「酒を飲んで見舞いに来ること」(18.7%)、「一度に大人数で見舞いに来ること」(15%)、「見舞い客が患者のベッドに座ったり横になったりすること」(10%)などの回答があった。治療の妨げになる健康補助食品を患者に買い与える見舞い客もいるという。
見舞い客の中には情にほだされて、あるいは「薄情だ」と言われたくないとして、親類や知人の見舞いに行く韓国的な慣習から仕方なく病室を訪れるケースも多い。キムさん(35)は10日、生後11カ月の乳児を連れて、手術を受けた義姉の見舞うため大きな病院に行った。「満1歳にもなっていない子どもを連れて病院に行くのは気が引けて一瞬ためらったところ、一緒にいた義母の表情が凍り付いた。結局、子どもを連れての義姉の見舞いに行くことになった」と語った。