今月15日現在、韓国で中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)への感染が判明した患者は150人に達する。保健福祉部(省に相当)の中央MERS管理対策本部によると、このうち、入院した家族や知人の見舞いのため病院を訪れ感染した人は計54人に達する。家族が雇用した介護者(7人)まで含めると61人(40.6%)だ。感染者の10人中4人は本人の病気やけがの治療ではなく、見舞いなどのため病院に行って、MERSに感染したというわけだ。このため、病院で感染した人たちが地域社会で感染を広げることが懸念されている。入院患者の家族や親しい人たちが病院にいながら、顔を一度も合わせないというのは道理に合わないという、韓国式の見舞い文化がMERSの感染拡大の一因となったというのが、医学界の共通の見解となっている。
本紙は今回のMERS感染拡大により、防疫がより強化されたソウル市内の主な病院を直接取材した。病室は患者の健康を守るだけでなく、病気の外部への拡散を防ぐため、外部とは常に隔離されなければならないのが原則だ。そのため病院は、面会時間の制限、外部の飲食物の持ち込み禁止など、見舞いに関する指針を定めている。ところがその大部分は実際には守られていない。病室で患者と家族が一緒に出前を取って食べ、見舞いに来た人たちがベッドに横になって休むという光景も依然として見られる。酒を持ち込んで飲んだり、あろうことか隠れてたばこを吸い、注意されるケースもある。免疫力が弱く、感染症にかかる危険性が高い子どもたちも、何ら制限なく病室に出入りできる。世界最高レベルの医療システムを兼ね備えていると評価されながら、MERSの感染が広がった韓国の病院の内部はこのような有様だった。
昨年、高麗大学医学部のアン・ヒョンシク、キム・ヒョンジョン両教授の研究グループが行った、病院内の感染症の実態についての研究成果によると、家族や見舞い客が自由に出入りできる病室は、出入りを統制している病室に比べ、感染症にかかる比率が2.87倍に達した。肺炎の場合、感染比率は6.75倍と、さらに高い結果になった。アン教授は「患者が入院している以上、患者の管理は病院の責任だが、儒教的な文化が根強い韓国では、入院患者を直接訪ねて励ましたり、面倒を見たりしなければいけないという認識が根強い。韓国の病室はまるで結婚式場や葬儀場のような様相を呈している」と話した。
MERSの感染拡大の懸念が高まり、一部の病院では遅ればせながら、見舞い客などに対し、空港の検問や保安検査と同程度の厳しいチェックを行っている。高麗大学九老病院は今月13日から、見舞い客をはじめすべての来院者に対し、体温測定や手の消毒を実施し、身元の確認を終えた人だけ病室への立ち入りを認める措置を講じた。