地方公務員が労災で亡くなったとき、配偶者が女性なら年齢を問わず遺族補償年金を受け取れるのに、男性だと55歳以上でないと受給資格がない――。

 こんな男女格差が認められるかが争われた訴訟で、大阪高裁は「法の下の平等を定めた憲法に反する」とした大阪地裁判決を取り消し、元会社員男性(68)の請求を退けた。

 判決で高裁は「女性は男性より賃金などで不利な状況にあり、男女の区別は合理性を欠くとはいえない」とした。

 しかし、はたして、この制度は時代の変化を反映しているといえるだろうか。

 男性の妻は中学校教諭だった98年に自殺し、公務災害と認められた。男性は地方公務員災害補償基金に遺族補償年金を申請したが、妻の死亡時に夫が54歳以下の場合、受給を認めない地方公務員災害補償法の規定のため、不支給となった。男性は妻の死亡時に51歳だった。

 この法律ができた67年当時は、正社員の夫と専業主婦という家庭が一般的で、「家計を支えるのは夫。だから遺族年金は女性に手厚く」という考えに基づいていた。

 しかし今は、共働き世帯が、夫だけが働く世帯の1・3倍となっている。近年は非正規雇用の割合が男女とも増える傾向にあり、就業の不安定さは性差を問わない問題だ。

 大阪高裁は「非正規雇用の割合は女性のほうが男性の3倍近い」「女性の賃金額は男性の6割以下にすぎない」などとも指摘した。

 確かに、女性は男性に比べ、賃金や就労の面で今なお不利な状況に置かれている。

 しかし、男性の中にも生活に困窮する人はいるし、家計にゆとりのある女性もいる。「男か女か」だけで一律に差をつけることが、真に困っている遺族の生活補償につながるとは思えない。

 すでに男女格差をなくした例はある。

 かつては「母子家庭より平均年収が高い」として父子家庭は児童扶養手当の支給対象外だった。だが、ひとり親世帯の貧困が男女を問わず社会問題になり、10年から対象になった。

 家計を支える人が亡くなったとき、子どものいる妻かその子どもに支給されていた遺族基礎年金も、国民年金法の改正で、昨年4月以降、それまで対象外だった父子家庭も受け取れるようになった。

 社会情勢の変化に合わせ、法律を不断に見直すのは当然のことだ。