「アミロイド蓄積説」は当てにならないのかもしれない。
認知症の発症には従来、脳内のアミロイドβと呼ばれるタンパク質の蓄積が関わるとされる。このたび健康な人を調べたところ、確かに遺伝子とアミロイドβとの関係はあったものの、認知能力の低下とは関係していないと分かった。
認知症のない人を調べた
米国ミネソタ州に本部を置く総合病院メイヨー・クリニックの研究グループが、米国医師会が発行する神経学分野の国際的専門誌ジャマ(JAMA)ニューロロジー誌オンライン版で2015年3月16日に報告した。
研究グループは、30歳〜95歳の認知症のない1246人について、認知症に関係する要素を2006年3月〜2014年10月に調査した。
調査した項目としては、年齢と性別、記憶力の状態、記憶力に関係する脳の部分である「海馬」の体積、認知症のなりやすさと関係する遺伝子で、アポリポタンパクEの複数ある種類のうちの一つである「APOE ε4」を持つかどうか、PET検査による「アミロイドβ」の蓄積の状態。
記憶力とアミロイドβは無関係
その結果、全体的に、記憶力は30歳代から悪化し始め90歳代まで悪化を続けていた。全体的に記憶力の衰えは、女性よりも男性の方が大きく、特に40歳以降で顕著だった。
海馬の体積は30歳代から60歳代半ばまでは徐々に小さくなって、それ以降は急激に縮小していた。全体的に海馬体積の減少は、女性よりも男性の方が大きい。特に60歳以降に顕著だった。
男性でも女性でも、全ての年齢において、APOE ε4を持っているから記憶力が大きく下がるという差はなかった。
アミロイドβの蓄積の程度は、平均値は70歳代までは低いが、それ以降は増加していた。70歳以降では、APOE ε4を持っている人では、持っていない人よりもアミロイドβの蓄積が多いと見られた。
10%の人たちがアミロイドβ陽性と判定される年齢はAPOE ε4を持っていると57歳、持っていないと64歳だった。
「通念に異議を唱えている」
遅発性アルツハイマー病では、生来の認知能力の低下を背景に、アミロイドβが加齢とともに蓄積していく。
今回の調査によると、認知能力の低下は、加齢と関連しているが、アミロイドβの蓄積とは関係していなかった。
ジャマ・ニューロロジーの論説では、「アミロイドβの蓄積が全ての年齢を通じて記憶力と関わっているという通念に異議を唱えている。認知症のない正常な脳の加齢プロセスに関する知識を広げてくれた」と称賛している。
認知症の背景は依然としてはっきりしない。
文献情報
Jack CR Jr et al.Age, Sex, and APOE ε4 Effects on Memory, Brain Structure, and β-Amyloid Across the Adult Life Span.JAMA Neurol. 2015 Mar 16 [Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25775353
私は、グー・ブログで「アルツハイマー型認知症の早期診断、介護並びに回復と予防のシステム」を公開しているものです。私は、1995年から市町村でのアルツハイマー型認知症の予防と早期診断による回復を目的とした「地域予防活動」を指導しています。アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する単なる生活習慣病であるというのが私たちの主張です。前頭葉を含む脳全体の機能レベルとそれにリンクした症状について、私たちが開発した二段階方式と呼称する神経心理機能テストの活用により、3万例に及ぶ脳機能データの集積とその解析結果がその根拠です。この記事には、とても勇気づけられました。