http://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/zadankai-201506/
ツイ4新人賞座談会第1回 2015年6月開催
上記のリンク先は、星海社の編集者さんたちが、ツイ4(Twitterを連載媒体にした4コマ漫画の星海社のレーベル)新人賞に応募された作品について、座談会形式でコメントしていくというコンテンツです。よくある漫画の新人賞応募の結果発表を、受賞作だけでなく、落選した作品も含めて論評していく…という内容です。
しかし、その編集者さんたちのコメントがおおよそ一般読者の目を意識していない、やもすれば不快感を招くような配慮のない論調も多く、反発する読者がそれなりに発生する企画だったようです。
かくいう僕もこの座談会を読む前は、編集者に「スポーツトレーナー」のような役割を期待していた為、選手のクセや欠点を補ったり長所を伸ばしたりするようなアドバイスが(ほとんど)無かったことに落胆しました。どちらかというと彼らは「スカウトマン」で、育てるのではなく即戦力として募集作品を「品評」していました。そのメガネにかなわないのであれば、即不採用! その後の事は一切知らん!…というスタンスです。
「トレーナー」と思って読めば「職務放棄か!」と思わないでもない座談会ですが、
「スカウトマン」と思って読めば、まぁそういうものか…と納得できなくもない。
で、世の中ではそのどちらの職種も必要なポジションとして存在しているわけですから、彼らの言葉をひねくれたり茶化さずに真面目に読み解き、いずれ冷徹なスカウトマンの目にさらされた時に備えて、創作活動の糧にしたいなぁと思った次第です。
というわけで、座談会から編集者さんたちのコメントを引用させて頂き、その言葉から4コマ漫画を描く上で気をつけなくてはならないことを、自分なりに分析して覚え書きとして残します。いつかツイ4に投稿する時がきたら、役に立つんじゃなかろうかと思いますが…果たして。
※以下の内容はあくまで個人の感想、意見です。他の意見と戦わせる目的はありません。
※書いてあることが違うなぁと思ったら、スルーしてください。
◆口に出すと口が気持ちよくなる言葉(仮)へのコメント
http://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/zadankai-201506/0001.html
引用~
平林 これは......激しくつまらない。どういう気持ちで読めばいいのかな?
→どういう気持ちで読者が読むのか想定する。つまり、読者が漫画によって発生させる感情を意識して、コントロールする。笑いか、怒りか、タイクツか、緊張か…そのコマを読んで読者がどう思うだろうか? を考え、その流れを上手くコマでコントロールすれば、こちらが狙った読後体験を与えられる。
太田 うーん、一発ネタすぎますね。
岡村 ずっとこれで攻めんのかよ! ワンパターンすぎるだろ!
→繰り返しによって生まれる笑いの使いドコロをよく考える。テーマとして貫くべきネタは確かに存在するが、一辺倒ではなく、変化球を挟んで緩急をつける。読者が10本の作品を読む最中にだんだん飽きてくる事を想定し、しりあがり的にネタの濃さを変えていく必要がある。
石川 力技すぎて逆に清々しいです。
→繰り返し、ひとつのネタに絞り込んで強引に押し切ることで生まれる笑いもある。しかし「飽き」こそが大敵。エンドレスエイトを教訓にする。
林 ひとつひとつの作品は悪くないですけど、明日も読みたい! という気持ちにはならないですねえ。
大里 連続して読むのはキツいです。
→1日1本ずつ連載される形式でなら、同じネタの繰り返しも許容度が上がるが、一度に10本をまとめ読みする環境では、ネタに変化が必要。明日もまた読みたい、という気持ちは、言い換えれば次は新しい笑いを与えてくれるだろうという期待感。10本の作品の中で「次のネタはまた新たな笑いである」という事が重要。
太田 絵はかわいいんですけどね
→絵が可愛いと評価は高くなる。
◆あのねのネリネbyゆう。へのコメント
http://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/zadankai-201506/0002.html
引用~
岡村 キャラ萌えで攻めるには、画力もキャラの掘り下げも不足してますね。読み手に「これが強みです!」っていうのが伝わってこない。
→萌えキャラを読者に売り込む際には、「可愛い!」と感じられるだけの画力が必要。その画力が無いのであれば、萌えをウリにはしないほうが良い。また、絵柄だけでなくキャラの掘り下げを十分に行う。こんなときにこのキャラはどうするか? このキャラの好きなものは? 苦手なものは? 両親はどんな人? といったように、キャラの個性を掘り下げて設定していく過程の中で、読者に売り込みたい「萌えるキャラ」像が固まってくると思われる。作者も知らないキャラの側面は、読者も知りようがない。
石川 赤ちゃん言葉にイラッとしました。幼女好きなのに......。
→なぜ幼女好きの評者が萌え個性であるはずの赤ちゃん言葉にイラっとしたのか? それは長文の台詞回しを読みときにくい赤ちゃん言葉にしたからか。もっと短い台詞をしゃべるキャラであれば、イラつきは少ないはず。もしくは、赤ちゃん言葉は語尾だけにし、文中は読みやすい言葉にするなど。
林 この人、バーでお酒飲んだことなさそう。
今井 ファジーネーブルは、もはや居酒屋の酒ですよ。バーで頼むと恥かくぜ!
平林 バーはほとんどジョッキでビール出さないし、こういう酔っ払いを許容しないよね。
→取材、もしくは資料を調べる事で、違和感の元となる「事実と違う事柄」をなるべく潰すことで、引っ掛かりを覚える読者を減らせる。その題材のご法度はたとえキャラ付けでも行わない(もしくは慎重に扱う) 例えば、料理人がタバコを吸う、レーサーがノーヘルでバイクに乗る、弓道部…など。また、ギャグだからといってその世界のルールを破るキャラはおいそれとは出さない。出す時には、理由を用意する。
太田 そもそも幼女の身長だとバーカウンターに埋没してしまうのでは?
今井 10作しかないのに次々粗が見つかる(笑)。
→読者が感じるであろう「当然の疑問」を先回りしてネタにしていれば、なるほど!という感心に変わって評価があがるが、放置していると「設定の穴」として突っ込まれたり、作りが甘いと落胆される。【幼女の身長だとバーカウンターに埋没する】→【マイみかん箱を所持しておりそれに乗っている姿が可愛い】…というように、ネタに昇華すれば問題ない。
太田 4コマといえど、というか4コマだからこそしっかり取材してほしいですね。
→題材にする場所、職業、事象についての情報収集を怠らない。それらの情報は、作品のビリーバビリティを上げ、かつ新たなネタ作りの糧になることもある。
◆エスパー砂藤 へのコメント
http://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/zadankai-201506/0003.html
引用~
太田 テンポ感がいいです。ただ画力が圧倒的に足りてない。個性のある絵柄なのでひょっとすると化けそうな感じはするんだけど。
石川 上手い絵ではないですが、妙な魅力も備えてると思います。僕は嫌いではないです!
平林 合わない人はたぶん徹底的に合わない絵柄ではないかと。僕は合わなかった。
→なにはともあれ、画力を商業レベルまで引き上げる必要がある。コマの中で起こっている事を言葉ではなく絵で説明するにも、画力が必要。画力は精密に描くことではなく、止まっている絵で人物の動きを想像させたり、画面に書かれている物がなんなのかを見るだけで分からせる力でもある。キャラクタの個性的な描き方、絵柄は、持ち味にもなるし拒否される原因にもなる。最大公約数を狙うのであれば、なるべく多くの人が違和感なく受け取れる絵柄に変える。しかし個性的絵柄を武器にするのであれば、より大胆なデフォルメによって、突き抜けるのも有り。中途半端なデフォルメ感が、結果的にどちらの読者にもマイナスになる。
岡村 1ページ目から誤字はアカン。砂糖と砂藤......どっち?
→誤字に注意する。できれば投稿前に別の誰かに校正をお願いする。それが出来なければ、「音読する」「台詞を改めてテキストエディターに目コピで書き写してみる」などの自己校正を行う。
林 背景が雑なのが気になりました。ワイド型の4コマって、画力の荒がモロに出てしまうんですね。
太田 ワイド4コマは基本、画力のある人向けですね。
→コマが広がる分、1コマの情報量、密度が必要となる。精密な背景を見せたい、キャラの大胆なアクションを見せたい、といった狙いがなければ、通常サイズのコマにするのが無難である。
◆宇宙飛ぶ公務員 へのコメント
http://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/zadankai-201506/0004.html
引用~
林 アカン。
岡村 そもそもこれ、原稿ではなくネームですよね?
太田 完成原稿を送ってくれ! 未完成でも許されるのは富樫先生クラスのみ!!
→ラフなスタイルを持ち味にしているのでなければ、最低限のコマ背景を描き、台詞のフォント写植をやり、トーンや色を塗り、震えのない主線を描くといった作業はおこたらない。
石川 4コマ10本読むのにこんなストレスが溜まるとは思いませんでした。読ませる気あるんでしょうか。
→ここで評者が感じたストレスは、台詞の量の多さ、一度に登場するキャラの数の多さ、文字の読みにくさなどから感じられたものと推察される。役割を複数のキャラに分散させすぎると、1コマに押し込めるキャラの数が増えて、読みにくさ(コマごとに誰が今しゃべっているか、このキャラは誰か、キャラの表情やアクションは?と把握しなくてはならない情報が増える為、読みにくいと感じる)がましてしまう。
キャラ数を整理し、なるべく少ないキャラ数にまとめるのが、読者の「理解する為に支払う労力によって感じるストレス」を下げる。
◆平和ずきんの狼 へのコメント
http://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/zadankai-201506/0005.html
引用~
平林 幼女のかわいさがあまり出ていない。あと、人外キャラの造形が安直すぎる。
→人狼が幼女に惚れ込む展開を読者にも納得させるには、人狼の口からじゃなく、読者自身が「幼女かわいい‥」と思わせる必要があり、その「幼女かわいい感」を説明するシチュエーションのコマをもっと用意する必要がある。人狼や人烏の造形については、奇抜にしたいわけじゃない、このデザインラインがスキなんだ!ということであれば、世間一般に溢れているデザインと「ちょっとだけ違うどこか」を付け足せると良いかもしれない。それは何らかの小道具(仮面をつけている、着物を着ている、変わった形のキセルを使っている、ポーズが独特)などで、差別化を図る。
岡村 文章が多すぎですね。マンガなんだから文字ではなく絵で説明してほしい。sattou先生とか1文字もないときあるよ。
→セリフ回しで物語を語る、キャラの魅力を生むのは、定型のコマサイズしかない4コマのスタイルではなかなか難しく、長文はご法度。短い台詞でキャラ特徴をうみ、シチュエーションを簡略化したり、別のコマに分けたりして、1コマの情報量を減らす必要がある。
太田 画力、キャラ、ネタ、すべてがあと二歩足りない感じ。一番ないのがテンポ感。4コマにテンポ感ないのは絶望的です。
今井 読むのに疲れる4コマはよくない。
→ここでいうテンポ感は、コマ内の視線の流れ、そして読み進める為の各コマの滞在時間を指していると思われる。視線の流れについては、1コマの中で読み進める方向は不文律として必ず「右側から左側」へとなるため、これを狂わせると視線が泳ぎ、余計な時間がかかってしまう。そして、文字の量などがコマによって極端にばらつくと、1コマを読んでいる時間、滞在時間が変わってしまう。それにより、読者は自分の予想している読み進めスピードとは異なる読み進めスピードを体感させられ、これを不和として感じてしまう。ゆえに、視線の流れを狂わせない、文字の量を多くしない、といったルールを守る必要がある。
以上