【コラム】専門家の意見を軽視する韓国社会

 社会で何か大きな出来事が出現したときに、専門家の見解に従うよりも自分たちの都合が良いように現状を解釈し、また中にはそれらを利用する人間が出てくるのはよくあることだ。今回のMERS感染拡大に関してもまさにそうだ。世界保健機関(WHO)は17日に緊急の会合を開いたが、直後の公式会見で語られた内容と、17ページの分量の『WHO・韓国合同検証チーム報告書』の全文をあらためて読み返した。これらはいずれもMERSへの恐怖で冷静な判断ができなくなっている国民から無視され、あるいは激しい非難を受けているものだが、その中にこのような記載がある。「最初は『肺炎を伴う重症の疾患』という判断の下で治療を受けるが、実際はその多くが『MERS風邪』とも言うべき軽い疾患だ」というのだ。つまりMERSは実際のところある地域単位、あるいは個人の次元で十分に対応可能な疾病ということだ。ところが実際はこれが何か国家次元の非常事態のように国民に認識され、国もそのような考えで対応に当たったため、「無用な誤解」や「行き過ぎた恐怖心」が広まってしまったというのだ。

 誤解しないでほしい。もちろんこの「行き過ぎた恐怖心」が広まった最も大きな責任は、初期に情報公開をためらい、ずさんな対応を続けることで問題を大きくした国にある。また「MERS風邪」では済まされない重症患者が実際に発生し、その原因について一定の合意や見解が不十分なことも事実だ。しかもそれによって国内で多くのイベントが中止となり、海外からの観光客が一気に減少しただけでなく、貧しい高齢者のための炊き出しが取りやめとなり、日々の稼ぎで生活する日雇い労働者の仕事がなくなったというニュースも相次いでいる。つまり行き過ぎた恐怖心や不安はわれわれの心を萎縮させているだけでなく、高齢者や貧困層など社会的弱者の生活を脅かすという実害も招いているのだ。

 何事もいたずらに楽観的に考え行動するべきではないが、同じようにいたずらに恐怖をあおることもやはり禁物だ。そのため今回のMERS問題においては、それが完全に収束するまでわれわれが最後まで頼り、そして後押しすべきは結局その分野の専門家しかいないのだ。

文化部=魚秀雄(オ・スウン)次長
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