カープの人気はもはや全国区 上昇傾向にあるNPB観客動員数の要因【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

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上昇傾向の観客動員数


 交流戦が終わってまたリーグ戦が始まる。
 今年のNPBの平均観客動員数は27305人で、前年よりも847人、率にして3%増加した。全体的にここ数年の観客動員数を見ると、上昇傾向にある。

 交流戦終了時点での12球団の平均観客動員数をまとめてみた。2012年の平均観客動員数を1として、以後3年の推移をまとめた。
 青字は2012年より減少、赤字は10%以上増加を表す。

広尾様0619表1

 パの楽天、オリックスとセのDeNA、広島の伸び率が顕著であることがわかる。

 パリーグは、楽天は2013年の初優勝を契機に観客数が急上昇している。今年は2012年と比較すると6000人以上も増加している。オリックスは昨年、2008年以来5年ぶりにポストシーズン進出。エース金子千尋の活躍もあり、観客が増加した。今季は下位に低迷しているが、オリ姫キャンペーンなどの展開もあって、着実に動員数が増えている。

 これまでパリーグは、福岡・九州のソフトバンク、北海道の日本ハムと地方を拠点にした球団が観客動員を増やしてきた。ソフトバンクは2012年には244万人(平均観客33993人)、日本ハムは2009年に209万人(平均観客27669人)を記録したが、以後、観客動員は伸び悩んでいる。

 西武、ロッテも横ばいが続く中、従来、人気も実力も低迷していたオリックスと、新興の楽天が客数を伸ばしてきたのだ。

 セリーグは、2007年にクライマックスシリーズが設けられてから2012年までは、巨人、阪神、中日、ヤクルトの4球団だけが進出し、広島、DeNAは4位以下に沈んでおり、4強2弱が定着していた。球団の勢力図が変わらない中、観客動員も伸びなかった。

 しかし広島が2013年に初めてクライマックスシリーズに進出し、この年の後半には「カープ女子」ブームが始まり、観客動員が急上昇。さらにDeNAも親会社が変わり、中畑清監督が就任するとともに、観客数が一気に増加した。

 特に今年のDeNAは春先のスタートダッシュに成功したこともあり、平均観客動員は24670人と、2012年から8000人以上増加した。横浜スタジアムの客席の風景も変わった。広島も2012年から7200人増えた。黒田博樹の復帰などもあり「カープ女子」は健在だ。

カープ人気が全国に広まる


 しかし、さらにデータを調べていくと面白いことがわかってくる。広島の人気とDeNA、オリックス、楽天の人気は全く異なるのだ。

 人気上昇中の4球団のロードでの観客動員を見てみよう。各球団の平均観客数と、4球団のロード戦の平均観客動員の差異をまとめた。
 平均観客数は、本拠地球場のみの数字を出した。前の表とは数字が異なる。観客数の少ない地方球場の数値を加えると正確な数字が出ないからだ。
 球団の平均観客数を1として、4球団の平均観客数の差異を示した。平均観客数を上回った場合は赤字で表す。

広尾様0619表2

 一目瞭然、広島はロードで対戦した8球団との試合ですべて、対戦相手のホームでの平均観客数を上回っている。つまり「広島戦」は明らかに観客数が多いのだ。これに対し、他の3球団で観客動員が平均を超えたのは、DeNAとオリックスが3球団、楽天は2球団だけであった。

 広島は本拠地だけでなく、ロードでも観客を呼ぶことができるというわけだ。ただ過去のロードの数字を調べてみるとこれほどの観客動員ではなかった。カープ女子を一つのきっかけに、広島の人気が全国区になりつつあることを意味している。

 巨人、阪神以外のNPB球団は、これまで地道なローカル・マーケティングで観客動員を増やしてきた。しかしその代表格だったソフトバンク、日本ハムの観客動員が伸び悩む中、広島はローカルだけではなく、全国での人気を博するようになったのだ。

 このまま広島が巨人、阪神に続く3番目の「全国区球団」になるかどうかはまだわからない。しかし広島は、若い女性というこれまでターゲットとは思われていなかった客層を掘り起こした。

 引き続き、どのような施策で観客動員数を増やしていくのか。各球団の取り組みが楽しみだ。

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