G7サミット:日米欧、FTA交渉加速で合意

毎日新聞 2015年06月07日 21時57分(最終更新 06月08日 01時35分)

G7首脳会議会場前で撮影に応じる(左から)安倍晋三首相、ハーパー・カナダ首相、オバマ米大統領、メルケル独首相、オランド仏大統領、キャメロン英首相、レンツィ・イタリア首相=ドイツ南部エルマウで2015年6月7日、AP
G7首脳会議会場前で撮影に応じる(左から)安倍晋三首相、ハーパー・カナダ首相、オバマ米大統領、メルケル独首相、オランド仏大統領、キャメロン英首相、レンツィ・イタリア首相=ドイツ南部エルマウで2015年6月7日、AP

 ◇ドイツ南部エルマウで開幕 世界経済の成長を下支え

 【ミュンヘン宮島寛】主要7カ国首脳会議(G7サミット)が7日、ドイツ南部の保養地エルマウで開幕した。初日の経済討議では、日米欧が協議中の三つの自由貿易協定(FTA)について交渉を加速させることを確認した。世界経済の過半を占める「メガFTA」の締結で、通商、投資ルールなど経済新秩序を構築し、引き続き世界のリード役を担う意思を示す。世界経済の成長を下支えするため、G7で協調していく方針も確認。財政破綻の瀬戸際にあるギリシャ問題も議論する見通しだ。

 安倍晋三首相は、検討中の成長戦略や財政再建策を説明し、アベノミクスによるデフレ脱却で世界経済に貢献していく姿勢を示す。アジアのインフラ整備支援に今後5年間で約1100億ドル(約14兆円)を投じる方針も改めて表明、中国主導で年内にも発足予定のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への対処も協議する見通しだ。ロシアの支援を受けた親露派武装勢力とウクライナ軍との戦闘が続くウクライナについては、安倍首相が6日の訪問結果を報告。経済支援や世界経済への影響について意見交換する。

 交渉加速で合意するメガFTAとは▽日米など12カ国で交渉中の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)▽日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)▽米国とEUのFTA。米国がTPPでの合意内容を参考にEUとの協議を進める意向であるなど、三つのFTAの協議は相互に影響し合っており、ここで決められた投資・知的財産・通商ルールは世界標準になる見通しだ。

 ギリシャ問題を巡っては、EUによる金融支援の期限を6月末に控え、ギリシャが債務不履行(デフォルト)に陥る懸念が強まっている。討議ではEUの出席者が交渉の進捗(しんちょく)状況を説明。日米側は、金融市場の混乱による世界経済への悪影響の波及を防ぐため、早期の安定化を求めるとみられる。

 討議では、バングラデシュで2013年、縫製工場のビル倒壊で1000人以上が死亡した事故を受け、多国籍企業が関与する途上国労働者の労働環境改善についても話し合う。

 7日夜の夕食会では外交・安全保障について協議する。中国の南シナ海での岩礁埋め立て問題では、安倍首相とオバマ米大統領が「力による現状変更」に懸念を表明し、首脳宣言にも反映させる方向。8日は地球温暖化対策やエネルギー、テロ対策などを協議。首脳宣言を採択して閉幕する。

 ◇FTAとEPA

 FTA(自由貿易協定)は、特定の国や地域との間で農産品や工業製品などの関税を撤廃し、貿易を活性化する枠組み。EPA(経済連携協定)はFTAより対象が広く、関税撤廃に加えて投資の自由化や知的財産保護の強化、労働力の移動の促進など幅広い経済関係の強化を目指す。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は知財保護なども対象にしているため、EPAに分類される。

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