那覇空港:空自ヘリ、滑走路を無断横断 旅客機が離陸中止

毎日新聞 2015年06月03日 21時40分(最終更新 06月04日 11時04分)

自衛隊機と民間機のトラブルが起きた那覇空港の滑走路付近。手前に自衛隊機が並ぶ=那覇空港で2015年6月3日午後6時56分、比嘉洋撮影
自衛隊機と民間機のトラブルが起きた那覇空港の滑走路付近。手前に自衛隊機が並ぶ=那覇空港で2015年6月3日午後6時56分、比嘉洋撮影

 3日午後1時25分ごろ、那覇市の那覇空港の滑走路(3000メートル)で、航空自衛隊那覇基地のヘリ「CH47」が管制官の指示を得ずに離陸し、離陸滑走中の全日空機の前を横切った。全日空機は離陸を中止。これを受けて管制官は着陸態勢にあった日本トランスオーシャン航空(JTA)機に着陸やり直しを指示したが、JTA機は全日空機がとどまる滑走路にそのまま着陸した。接触はなかったが、二つのトラブルが重なり、重大な事故につながる危険があった。

 空自那覇基地によると、ヘリのパイロットが、無線による全日空機への離陸許可を自機への許可と聞き間違えて飛び立ったという。国の運輸安全委員会は事故につながるおそれのある「重大インシデント」として航空事故調査官3人を派遣し、調査を始めた。JTA機が着陸した経緯や、滑走路で停止した時点での全日空機との距離などを詳しく調べる。一連のトラブルによるけが人はなかった。

 国土交通省によると、離陸滑走中の全日空機は新千歳空港行きのボーイング737−800(乗客乗員83人)、着陸したJTA機は新石垣空港発のボーイング737−400(乗客乗員44人)。空自ヘリにはパイロットら7人が乗り、物資を搬送するため沖縄県・久米島の分屯基地へ飛行するところだった。

 全日空機は午後1時20分過ぎ、管制官の離陸許可を得て、滑走路を北から南へ向け時速約240キロで滑走し、離陸しようとした。その際、数百メートルほど前方を横切るように飛行する空自ヘリを見つけて離陸を中断。ヘリは管制官の指示を受けずに西方向に飛行していった。ヘリは滑走路の南端付近で離陸し、全日空機は滑走路の中央を越えたあたりで停止したとみられる。

 北の上空からは、JTA機が車輪を出して着陸直前の態勢だったため、管制官は着陸のやり直しを指示したが、JTA機はそのまま着陸した。滑走路の前方には全日空機が残っており、追突の危険性もあった。

 JTAは、パイロットからの聞き取りの結果として「全日空機が離陸滑走を開始していたため、着陸に支障はないと判断した。管制官から着陸やり直しの指示があった時点で、すでに接地しており、逆推進装置も作動した直後だったため、そこから離陸態勢に入るのはかえって危険だと判断した。着陸して停止した時点で全日空機と400〜500メートル離れていた」と説明。「安全を重視した判断だったが、国の調査を待ちたい」としている。

 中谷元・防衛相は「大変遺憾。今後このような事案が発生しないよう再発防止、安全対策を講じる。国交省が行う調査については全面的に協力をしたい」と話した。【坂口雄亮、比嘉洋、町田徳丈】

 ◇「急ブレーキで前のめりに」

 那覇空港で離陸滑走中だった那覇発新千歳行きの全日空機の乗客は、別便に乗り換えて3日夜、新千歳空港に到着した。一歩間違えば大惨事になりかねないトラブルに一様に驚いていた。

 北海道登別市の無職、広瀬暁さん(87)は「離陸前に急に止まってびっくりした。そんな危険な状況だとは知らなかった」と話し、旭川市の主婦、清水秀子さん(53)は「飛行機が突然、急ブレーキをかけて前のめりになった。滑走路から逸脱した(広島空港の)事故を思い出して怖かった」と話した。

 また、出張で道内に来た沖縄県南風原(はえばる)町の神職、山野本竜規さん(39)は「着陸しようとした飛行機があったことは今、初めて知った。重大事故になりそうだったのなら、早く情報を教えてほしかった」と疲れた表情。夫婦で石垣島を旅行していたという登別市の無職男性(63)は「長年、飛行機であちこちを旅行してきたが、こんなことは初めて。飛行機に乗るのが少し怖くなるかもしれない」と困惑していた。【野原寛史】

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