マンガ好きの小説家・阿部和重さんが、喫茶室でコーヒーを片手にマンガについてしゃべりまくる「漫画喫茶へようこそ」。
毎月100冊近く出版される「1巻」の中から、アフタヌーン編集部がチョイスした10冊を読んでいただき、小説家ならではの、また映画に造詣が深い阿部さんならではの視点で「マンガの現状」に迫ります!
毎月100冊近く出版される「1巻」の中から、アフタヌーン編集部がチョイスした10冊を読んでいただき、小説家ならではの、また映画に造詣が深い阿部さんならではの視点で「マンガの現状」に迫ります!
第7回 「表現」とはどのようなもので有り得るのか、がここにある。 (2/4)(2014/08/11)
ショートショートの枠をはみ出せ!『眠れる教室の喪女』
——次はギャグマンガ、『眠れる教室の喪女』(風上旬)です。阿部 ひたすら教室の隅っこでうつ伏せで寝ている女の子の妄想と、教室でのドキドキ感に焦点を当てたショートショートのギャグマンガですね。主人公が動かない人なんですが、妄想したり明晰夢を見たりすることで自由な表現が可能になっているし、明晰夢を強化しようといろいろ努力することで、物語に動きも出ている。しかもこの物語上の必然の中でそれを組み立てているところがあって、なかなか工夫があるなと。パッと見はネットスラングを散りばめているので、「2ちゃんねる」とかネットを熱心に見ている人が作ったマンガだな、という読み方もできちゃうんですけど、作者の引き出しも多くていろんなネタを使いこなせている。思ったよりずっと濃密にできているんですよね。
——確かに一見「あるある」もののようでいて、全然そうではないですね。
阿部 明晰夢を強化するための努力が段階的に描かれていくというのも、ショートショートの形式をはみ出して、さらなる発展を遂げるかもしれないという可能性を感じさせる。後半で、ものすごくひどい風貌の幼なじみが転校生として登場して、物語がまた俄然(がぜん)動き出す。形式が壊れてもいい、という作者の気概を感じましたね。あと主人公の女の子の「じゅえる」っていう名前が……素晴らしい!! これだけでも勝利したなと思います(笑)。
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第7回 「表現」とはどのようなもので有り得るのか、がここにある。 全4ページ中2ページ目
公開中のエピソード
プロフィール
- 阿部和重(あべかずしげ)
- 1968年山形県生まれ。10年『ピストルズ』で谷崎賞を受賞したほか、受賞歴多数。『アメリカの夜』『インディヴィジュアル・プロジェクション』『ニッポニアニッポン』『シンセミア』など著書多数。近著に『Delux Edition』『しかく』など。「ヤングマガジン」をこよなく愛するマンガ好き。「honto+」ではマンガ評「漫画覚書」を連載中。映画学校出身で、映画についての造詣も深い。
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