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【社会】

「派遣 使い捨てなのか」 現場の女性憤り

派遣法改正案の衆院通過を受け、「生涯派遣を強いられるのか」と不安を語る女性ら=19日、東京・霞が関の厚労省で

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 派遣労働を固定化するとの批判が強い労働者派遣法改正案が十九日、衆院で可決された。同じ職場での勤務が三年に制限されるなど働き方が大きく変わる派遣の人たちの不安が、現実に近づく。さまざまな事情から表立って発言してこなかった人も多いが、法改正が迫った今、派遣で働く首都圏の女性たちも「私たちは使い捨てじゃない」と声を上げはじめた。 (小林由比)

 「感情のない感じで話が進んでいくんだな。こんな人たちに生涯派遣を強いられるのか、と思った」

 この日、衆院での審議を初めて傍聴した都内の派遣社員の女性(41)は、可決後に労働問題に取り組む弁護士らとともに記者会見し、率直な思いを口にした。

 大手企業で一般事務の仕事をしてきたが、セクハラ被害を派遣会社に相談したところ勤務日を減らされた。法改正で雇用が安定化するとの政府の説明に「正社員化しなかった企業には罰則がない。派遣社員は待遇が改善されないまま働き続けるだけだ」と憤る。

 派遣社員として五年間働く埼玉県の四十代の女性は、改正案の衆院通過を職場で知り、「言葉も出ない」と落胆した。ある派遣先では三年働けば直接雇用の道もと言われ、残業もいとわなかった。だが契約内容を超える業務をさせられていると気付き訴えると、入館カードを取り上げられ、立場の弱さを痛感した。

 改正案の採決を止めたい一心で、六月に入り、法案に反対する市民団体の記者会見や厚生労働省への申し入れに参加して体験や思いを語った。公の場に出るのは初めてのことだった。

 派遣労働者は病気や生活困窮などの事情を抱える人も少なくなく、ほとんどは労働組合にも未加入だ。弁護士や学識者らでつくる「非正規労働者の権利実現全国会議」の三浦直子弁護士は「これまで表立って発言する当事者は少なかったが、改正案の採決が近づくにつれ、経験や思いを公にする女性が増えた。切実な危機感を持つ人が多いということだ」と話す。

 全国会議が五日に始めた緊急アンケートには五百人以上から回答が集まり、75%が女性だった。コールセンターで働く都内の女性(41)もその一人。大学院を卒業後、IT企業に就職したが過労でパニック障害を発症し、派遣の道を選んだ。「一生派遣がいいとは思っていないが、収入が途切れずに働けるならと…。そんなささやかな願いも、かき消されるのでしょうか」

 

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