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【社説】

翁長・米大使会談 基地の不条理正さねば

 米国が民主主義の国であるならば、米軍基地新設に反対する沖縄県民の民意を理解できるはずだ。狭隘(きょうあい)な島に在日米軍基地の74%が集中し、過重な負担を強いられる不条理。今こそ、正さなければ。

 翁長雄志沖縄県知事がきのう、キャロライン・ケネディ駐日米大使を東京・赤坂の米国大使館に訪ね、初めて会談した。米軍普天間飛行場(宜野湾市)を返還するため、代わりの米軍施設を名護市辺野古沿岸部に建設する「県内移設」の断念を求めるためだ。

 翁長氏がその根拠としたのが、沖縄での選挙結果である。

 移設先の名護市では、昨年一月の市長選、九月の市議選でいずれも辺野古移設反対派が制した。十一月の県知事選では県内移設に反対する翁長氏が現職を破った。

 十二月の衆院選で、自民党は全国的には勝利したが、沖縄県内四小選挙区ではいずれも、県内移設反対を訴える候補に敗れた。

 「辺野古に基地は造らせない」という沖縄の民意は示された、という翁長氏の主張はまっとうだ。

 しかし、日米両政府は沖縄の民意を一顧だにしていない。安倍晋三首相や沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅義偉官房長官は当初、翁長氏に会おうとすらせず、辺野古への移設作業を強行している。

 ケネディ氏も、翁長氏との会談で、日米両政府は辺野古移設に対する「揺るぎない決意を共有している」と強調し、「普天間飛行場の継続使用を避ける唯一の解決策である」と表明した、という。

 日米両国が民主主義という基本的価値を共有するのなら、沖縄県民が選挙という民主主義最高の手段で示した民意を、ここまで露骨に無視してもいいのだろうか。

 日米両政府は沖縄県民がなぜ辺野古での新基地建設を拒んでいるのか、真剣に考える必要がある。

 国土面積の1%にも満たない狭い島に在日米軍基地の74%が集中し、県民は過重な基地負担を強いられている。訓練に伴う事故や騒音、米兵の事故や犯罪、そして何より、戦争になれば真っ先に攻撃対象になるという精神的重圧。

 選挙結果は、同じ県内で米軍基地を「たらい回し」しては抜本的な負担軽減にはつながらない、という悲痛な叫びにほかならない。

 ケネディ大使は人権派弁護士の一面も持つという。選挙結果を尊重し、沖縄県民の厳しい現状を直視して、その不条理を率先して正すことを期待したい。試されているのは民主主義そのものである。

 

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