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【スポーツ】

<首都スポ>鈴木雄介 美フォームで金 競歩20キロWR 驚異の失格なし

2015年6月18日 紙面から

3月に世界新記録を樹立、世界陸上で金メダルを狙う競歩20キロの鈴木雄介=東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで(斉藤直己撮影)

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 今夏の陸上の世界選手権(8月22〜30日・北京)で、競歩の鈴木雄介(27)=富士通=に金メダルの大きな期待がかかっている。2月の日本選手権20キロでは今春からチームメートになった高橋英輝(22)に敗れたが、3月の能美大会20キロで1時間16分36秒の世界新記録をマークし、4大会連続の世界選手権代表を決めた。昨季から世界ランキング1位をキープする鈴木はスピードだけでなく、きれいなフォームにこだわる美の探求者でもあった。 (千葉亨)

◆中1の決心!!

 少年時代の夢を目標に変え、その目標を実際に達成できる人は数少ない。陸上の競歩20キロ世界記録を更新し、4大会連続の世界選手権代表を決めた鈴木はその一人だ。

 「小学生のころからスポーツ選手になりたいっていう思いはあったんですが、世界一になりたいと思うようになったきっかけは女子マラソンの高橋尚子さんが金メダルを取ったシドニー五輪ですね。僕は中学1年生。高橋さんがトップでゴールテープを切るのを見た瞬間、漠然としていた目標がすごく明確なものになりました」

 辰口中(現石川県能美市)1年の春、入部した陸上部の方針によって強制的に出場させられた初の競歩大会で、当時指導を受けていた内田隆幸さん(現小松短大競歩部監督)に素質を見いだされた。中2で本格的に取り組み始めてからは競歩3000、5000メートルの中学記録を樹立し、小松高進学後も高校総体を制するなど、順調に階段を上っていった。

 しかし世界のトップには容易にたどり着けず、2009年から3大会連続出場の世界選手権では8位入賞が最高。3年前のロンドン五輪も36位に終わった。それでも「自分の思考の中で壁をつくることはしなかった。むしろ、ここから世界一になれれば面白いんじゃないか」と前向きに挑戦し続けた。自身で限界をつくらず、努力を重ねた結果、今年3月の能美大会で20キロ競歩世界記録として実った。

 ただし、鈴木自身は世界記録更新だけで満足するつもりはない。「世界記録は一つの目標ではありましたけど、僕の中では正直大きなものではなかった。やはり陸上での世界一は世界選手権、もしくはオリンピックで金メダルを取ること。だから有頂天になることなく、今は心して精進しているところです」

 このように謙虚な鈴木が自ら誇りに思うことがある。初めて競歩に挑んだ中1から1度も失格になったことがない事実だ。

◆理想のレース

 競歩は歩行中、常にどちらかの足が地面に接していなければならない。さらに前足は接地の瞬間から、地面と垂直になるまで膝を曲げてはならない。このルールに違反するおそれがあると注意を受け、明らかに違反すると警告となり、3人以上の審判員から警告(赤)カードが出されると失格になる。またゴール直前だと、主任審判員による単独の判断で失格になることだってある。この2月の日本選手権男子20キロでは出場85人で失格が5人。1大会でもっと多くの失格者が出ることも珍しくない。だからこそ競技生活を通じての失格ゼロは非常に難しく、珍しい。

 「初めて競歩をやった中1からきれいさを求めて歩いていました。初めてだからといって、汚いフォームで歩くのは嫌だった。だからこれまで失格なしは誇りでもあるし、自信として持っている。そして、もっともっときれいなフォームで歩きたいと思っている。警告を一つも受けず、さらには注意すら受けずに金メダルを取るというのが僕の理想のレースになります」

 追い求めるものはスピードだけではない。陸上の世界でトップになると決めたシドニー五輪から15年。フォームの美しさでも世界一を目指す勝負の夏が、いよいよ始まる。

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 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」面がトーチュウに誕生。連日、最終面で展開中

 

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