日韓首脳会談:「慰安婦問題解決が前提ではない」大使明言
毎日新聞 2015年06月20日 07時30分
日韓国交正常化50周年となる22日を前に、柳興洙(ユ・フンス)駐日韓国大使と別所浩郎駐韓日本大使がそれぞれ毎日新聞のインタビューに応じた。柳氏は、安倍晋三首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領との初の日韓首脳会談について、従軍慰安婦問題の解決が実現の「前提ではない」と明言。11月にフィリピンで行われるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議など今秋の国際会議を挙げ「そういう場で行われるのではと望んでいる」と述べた。別所氏も「首脳同士で話し合い、両国関係を良い方向に導いていただきたい」と実現に意欲を示した。日韓両政府は、今秋をめどに首脳会談を実現させる調整を進めている。
首脳会談を巡っては、無条件での開催を求める日本側に対し、韓国側は慰安婦問題の解決を条件に掲げ、実現してこなかった。だが、柳氏は「首脳会談開催の可否が関係改善の重要な指標として認識されている。『両国関係が厳しいのでは』との懸念があるのは残念だ」と指摘。年内実現に「尽力している」と述べた。一方で、慰安婦問題では両国がこれまで計8回の外務省局長協議を行ってきたことに触れ「進めている部分がある」と語った。
別所氏は、日韓首脳会談について、日中韓3カ国による首脳会談が実現した際には「自然な形で開催されるのは間違いない」と述べた。日中韓首脳会談を巡っては中国が、首相が8月に発表する予定の「戦後70年談話」の内容を見極めた上で判断する意向を示している。
安倍首相は19日、官邸で日韓議員連盟の額賀福志郎会長と会い、ソウルで22日に行われる50周年の記念行事に出席する額賀氏に祝辞を託した。額賀氏が代読する。首相は額賀氏に「50周年をきっかけに、お互いに率直に話し合い、友好関係を取り戻したい」と述べ、首脳会談実現に意欲を示した。【小田中大、細川貴代、ソウル大貫智子】
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【ソウル大貫智子】柳興洙駐日韓国大使が毎日新聞のインタビューで、従軍慰安婦問題の解決は日韓首脳会談開催の「前提ではない」と明言した。朴槿恵大統領は、慰安婦問題の進展が首脳会談開催の前提条件と位置づけてきたが、日米同盟深化や日中関係改善が急速に進む中、日韓首脳会談を行うべきだとの声が韓国内で高まっている。韓国側は今秋の会談実現に向けた環境整備を図っている模様だ。
有力シンクタンク、峨山(アサン)政策研究院が19日発表した世論調査では、8月に安倍晋三首相が発表する予定の「戦後70年談話」で、歴史問題での反省が不十分でも日韓首脳会談を行うべきかとの問いに対し、56.3%が行うべきだと答え、行うべきではないの38.5%を大きく上回った。
また、元慰安婦が暮らす「ナヌムの家」の安信権(アン・シンクオン)所長によると、安氏は4月、朱鉄基(チュ・チョルギ)・外交安保首席秘書官と会い、「慰安婦問題のために首脳会談ができないと言われるのは負担だ。会談を行うべきだ」と伝えた。こうしたことも、韓国政府の方針転換に影響を与えたようだ。
朴大統領は11日の米紙のインタビューで、慰安婦問題で両国は「交渉の最終段階」と述べたが、尹炳世(ユン・ビョンセ)外相は19日の国会で、「最終妥結を前にしたと言うにはやや早い」と答え、事実上修正した。朴大統領が協議の現状より踏み込んだ発言をしたのは、国民に対し、進展があったと説明する狙いがあったとみられる。