ハニー・ビター・ハニーを読んで 大西秀宜
ゆかるんの視点から書こうかと思ったが,37歳,あと少しで38歳という私はどうしてもその立場から書きたくなってしまったので,37歳男が読んだ視点として書く。
甘酸っぱい,というかほろ苦い恋愛,ということで,中高大生あたりは恋愛にときめいてしまうのかも知れないが,私にはどうしても登場人物の人物像がよく分からないと思った。
それぞれの物語で,女性が主人公で,この女性が男性を好きであることは分かるのであるが,では一体男性のどこに惹かれたのかがこれらの物語ではさっぱり分からなかった。
また,主人公の女性も,どの程度の魅力があるのかがよく分からない。
主人公があまりにもあれこれ想像できて,活発で魅力的であればあるほど,自分と主人公の違いに呆然とし,主人公に仮託するのは難しくなる。
たとえば,「耳をすませば」症候群などというのが最近問題になってきつつある。
「耳をすませば」症候群、ネット掲示板がヤバイと話題
http://gendai.net/news/view/108678
1995年の公開当時はなんらおかしいことではなかった。
当時と比較して,社会のほうがおかしくなってしまった表れと思う。
それとともに,登場人物の考えなどについてはあまり触れずに,登場人物が如何に異性を好きか,そしてその思いが如何に叶えられぬものか,そこだけピックアップして新しい物語を見たい/読みたい需要が出てきたのではないか?
ハニー・ビター・ハニーに描かれた物語をひとつひとつ読みながら,そんなことを思ってしまった。
もちろん,年頃の女の子であるから,このような物語に胸をときめかせるのは決して悪いことではないが,主人公や相手のオトコについて,これでは自分は惚れない,もっとひたむきな何かが欲しい,と,冷静になる姿勢もあって欲しいと思うのである。
但しそれは,いまのアラサー,アラフォーが婚活で言う"自分磨き"ではなくてもいい。
AKBはひとり孤独に自分を磨くような場所ではない。
自分が考えること,自分の成長を人に見せながら,応援してもらえばよいと思うのである。
そしてそれは,AKBに限らず,じつは恋愛の最も根源的な姿でもあると思う。
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