ミッキーのお家(うち)づくり遺伝子 + フランス各地の家屋

ミッキーのお家(うち)づくり遺伝子 + フランス各地の家屋

ベルイル:淡いブルーが空に映える瀟洒な建物downsize
南ブルターニュのその名も「美しき島」ベルイル





ミッキーとミニー
野生のミッキー、シロアシネズミ一族
新世界マウス、つまり「ミッキー」の親せきのシロアシネズミ属(Peromyscus)には、北米南東部だけに棲むハイイロシロアシマウス(Peromyscus polionotus)と、その南東部以外の北米に広く棲むシカシロアシマウス(Peromyscus maniculantus)がいます。(写真あります→http://en.wikipedia.org/wiki/Peromyscus)

モレシュルロワン:静かな水面に映る緑が美しいREVdownsize
パリ郊外モレシュルロワン
フランスのファンタジーなお家 A to M
“お家”つながりで添えるフォトはフランス各地で出会ったちょっとファンタジーな家屋です。フォトの題名をクリックで過去記事に飛びます。

ルシヨン:空気までピンクのカフェdownsize
プロヴァンス鷹ノ巣村、黄金のゴルドと茜のルシヨン
ヘビの多いフロリダでは脱出ハッチ付き
シカシロアシマウスはフツウのまっすぐな短い巣穴を掘りますが、天敵ヘビが多く棲むフロリダなどにいるハイイロシロアシマウスは複雑な構造の長い巣穴を掘り、万が一ヘビが侵入した場合の緊急脱出ハッチも作ります。

コルマー:カラフルな家々downsize
「おとぎの国」コルマー紀行
手作り砂場の交配実験
2003年当時、UCSD(カリフォルニア大サンディエゴ校)の若手研究者だったHope E. Hoekstra氏とその研究室の学生Jesse N. Weber氏はガレージの手作り砂場でこれら2種のシロアシネズミたちの巣作りを観察し、2種の交配して仔に巣を作らせる実験でその遺伝的な仕組みを探りました。

ドーヴィル:ノルマンディーの伝統家屋が多く残る街並みdownsize
北フランス、ドーヴィルの雨
たった1つの遺伝子が脱出ハッチを作る
すると「脱出ハッチ」を作らせる遺伝は単純なメンデル遺伝法則に従う結果に、つまりは単一の遺伝子の働きであることが分りました。

脱出ハッチ遺伝子
(交配実験で巣づくり遺伝子が見つかった)
親: ハイイロ(ハッチあり) × シカアシ(ハッチなし)
  ↓
仔: ハーフたち(すべてハッチあり)
  ↓
2代目親: ハーフ(ハッチあり)  × シカアシ(ハッチなし)・・いわゆる戻し交配(backcross)です
  ↓
孫: クウォーター・・・ハッチあり : ハッチなし = 1:1 ハッチありなしは半々


天敵が淘汰圧になる進化
この結果はマウスのような哺乳動物の巣作りという複雑な行動でも遺伝子に書かれており(コードされている)天敵と言う淘汰圧による進化の結果であることを示しています。それもたった1つの「メンデルの法則」に従う単純な遺伝子に・・・。

エズ:ようやく辻に陽が射し始めるdownsize
南仏エズ番外編
ヒトの仲間は“一夜の臥所(ひとよのふしど)”
たいていの動物は彼らの住処つまり巣を自分で作ります。
ゴリラ、チンパンなどヒトに近い(頭を使えるはずの)霊長類などは粗末な一夜の寝床しか作りません。決まった形などなくその場に合せた使い捨てです。


オンフルール:折り重なる軒先に時間がゆっくり沈殿した旧市街の風景downsize
深まりゆく藍色の街に灯が暖かい;オンフルール再訪
ちっちゃな脳の芸術作品
一方、ちっぽけな脳しか持たないのに小動物、小鳥、昆虫、一部の魚などは立派な巣を作ります。
ハチのハニカム構造の巣、野ネズミなどのトンネル巣穴、ニワシドリの東屋、シロアリの塔のような巣などみな見事な「芸術作品」です。


マントン:ヤシの街路樹とピンクの街並みdownsize
ピンクに染まるマントンの街はアラビアの香り: コートダジュール旅行紀
防水、空調、防犯、完備です
それだけではなく、耐久性、防水、衛生、空調、防犯(天敵の侵入を防ぐ)など私たちの住宅以上の機能も備えているものもたくさんあります。
ハキリアリの空調設備付き地下大都市の過去記事

コルマー:木組みと壁色のコントラストが心地よいリズムREVdownsize
アルザスの小さな宝石箱コルマー
工業製品も真似するハイテク
小動物の巣には、ハチの巣のハニカム構造、蜘蛛の巣の糸などヒトが工業製品としてマネするぐらいに優れたデザイン、構造、素材もたくさんあります。
ハイテク繊維「蜘蛛の糸(spider silk)」の過去記事

ディジョン:美しいモザイク屋根近景downsize
ブルゴーニュのグルメに会いにゆくディジョン再訪紀

小さい者の“モビルスーツ”、体外構造
小さく弱々しい彼らはその巣を“からだの延長“、「体外構造」とすることで素晴らしい能力を発揮しています。シロアリが良い例ですね。
体のサイズ、脳の大きさ、ヒトとの遺伝的な近さから考えるとなんだか矛盾しているし、自然のフシギを感じてしまいます。


ゴルド:パン屋と薬屋downsize
プロヴァンス鷹ノ巣村、黄金のゴルドと茜のルシヨン
巣を見れば持ち主(種)が分る
でもよく観察すると彼ら小動物たちの巣の形、構造は種によって決まっています。例えば、巣(の形、サイズ、場所、素材など)を見ればハチやクモやトリなど彼らの種類まで(ほぼ)分ります。

オンフルール港総督の館 La lieutenance dHonfleur downsize
得も言われぬ狐の嫁入り;オンフルール再訪
進化の賜物、巣づくり遺伝子
小さな脳で作る構造力学的にも、材料工学的にも、デザイン的にも優れ、種特異的なこれらの巣が、防災、防衛、繁殖など何らかの淘汰圧力による“進化の産物”であり、「巣のつくり方」遺伝子がありそうなことも想像できますよね。
でも、行動のようなフクザツな働きに係る遺伝子の同定が難しいように、彼らの芸術的なほど高度な構造の巣を作るにはたくさんの遺伝子がフクザツに働く必要がありそうに思えますが・・・


ルールがあれば設計家も監督も要らない
例えば、ビル建設とは違い、シロアリの巣には設計者も現場監督もいない、代わりに単純なルールの組合せで良いらしい。これらルールに忠実に従う大勢のハタラキアリがいれば出来る?らしい、少なくとも女王室など一部構造はシミュレーションモデルもあります。
みんなで探すミツバチのマンション物件の過去記事

単純なルールを書いた少しの遺伝子さえあれば・・・
巣づくり手順(アルゴリズム)を決める少数の単純なルールを決める少数の巣づくり遺伝子が適切なタイミングや順序で働けば(発現すれば)、ネズミの巣穴だけでなく見事なハチの巣、シロアリの塔も出来上がるのかも知れませんね。


関連の過去記事↓
泡が呼吸器にからだの働きを延長する体外構造
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巣を張るだけがクモじゃない蜘蛛の糸の技術革新+古都ウィーン番外編
森のお百姓さんハキリアリと昔作ったプラモたち


出典: 日経サイエンス 2015年3月号 P.98 「巣作りの進化学」 “The Evolution of Architecture” Rob Dunn氏執筆 (原典: Scientific American November 2014)
出典: 原著論文 nature vol.493 P.402 2003 “Discrete Genetic Modules Are Responsible For Complex Burrow Evolution In Peromyscus Mice” J.N.Weber, B.K.Peterson, and H.E.Hoekstra


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テーマ : パリ、フランス - ジャンル : 海外情報

コメント

Re: No title

ありがとうございます。フランスでも地方で家のスタイルは違うようですが、みな色が美しく窓辺に花があるのもいいですね。
イヴままさんに同感です、数少ない単純なルールで立派なお家が出来るのはすごいなと思います。

> わぁ・・・可愛いおうちがいっぱい!
> インテリアも好きですが
> おうちの外観やお庭を見るのも大好きっ
> 楽しませていただきました。
> 本当にちっちゃな脳なのに天敵に対応した巣作り
> 自然ってすごいですねー
> 感心してしまいます。

No title

わぁ・・・可愛いおうちがいっぱい!
インテリアも好きですが
おうちの外観やお庭を見るのも大好きっ
楽しませていただきました。
本当にちっちゃな脳なのに天敵に対応した巣作り
自然ってすごいですねー
感心してしまいます。
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