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■札幌の文化発信地 売り上げの低迷で

 札幌市厚別区大谷地東の「くすみ書房」が、今月21日に閉店する。「本屋のオヤジのおせっかい 中学生はこれを読め!」などのユニークな企画を打ち出し、文化発信地としても市民に親しまれてきたが、売り上げの低迷から約70年にわたる歴史に幕を下ろすことになった。

 くすみ書房は1946年に西区琴似で創業した。久住邦晴社長(64)が99年に店を継ぎ、2003年に売り上げ下位の文庫を集めた「なぜだ!? 売れない文庫フェア」、04年には中学生向けに500冊を選定する「中学生はこれを読め!」、その後も「高校生はこれを読め!」「小学生はこれを読め!」などの企画を打ち出して全国的な話題となった。

 また店舗の地下にブックカフェを作り、山口二郎・元北大教授や中島岳志・北大准教授ら地元の研究者や作家らによる本談議の催しも人気を集めた。

 しかし、書籍とレンタルビデオを扱う大型店の出店などの影響を受け、6年前に厚別区のショッピングモール内に移転。ここ1、2年は有料の会員制度やネットで資金を募る「クラウドファンディング」などで資金不足の危機をしのいできたが、今月になって資金繰りに行き詰まったという。

 久住社長は「町の中小書店は存続が難しい時代になった。多くの人に応援していただいたのに力が及ばず申しわけない」と話す。

 市民から資金を募って新しい発想の書店を作る構想を進めていたが、それも休止し、店の整理を進めるという。

 (吉住琢二)