総理就任当時から成立をめざしてきた謝罪決議が否決されそうになるや、大ウソをついて反対派を永田町から人払いした村山氏。万全を期して召集をかけた李高順衆議院議長。拉致被害者の存在を否定するだけではなかった、祖国への立派な忠君愛国ぶりでしたね。
工作員がだまし討ちで決めた、あんな談話なぞ聞く必要はない。さきがけの武村?北朝鮮のスパイだってペンタゴンに名指しされてただろうに。
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【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】真実ゆがめる朝日報道
2014/03/03 産経新聞 東京朝刊 1ページ 2218文字
2月21日、「朝日新聞」が掲載した「米国から見る安倍政権1年」という大型インタビュー記事には思わず苦笑した。在米の作家、冷泉彰彦氏が安倍晋三首相の政治外交に米国の懐疑と警戒が強まっているとして、こう指摘する。
「ジョン・ダワー氏の言うように、日本は『敗北を抱きしめて』まともな国になったはず」なのに、安倍首相は「米国が主導して作り上げた戦後の国際秩序」を乱している。ダワー氏の偏見と事実誤認に満ちた書を後生大事にするこうした記事をはじめ、社説、「天声人語」、読者投稿などを駆使した朝日の紙面構成には疑問を抱かざるを得ない。朝日は、メディアの役割として「不偏不党」「真実の公正敏速な報道」をうたう。にもかかわらずその報道は往々にして事実に基づいていない。むしろ真実をゆがめ、結果として中国や韓国の利益を代表するかのような報道があふれている。
中国では「抗日戦争勝利記念日」と「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」がおのおの9月3日と12月13日に定められ、習近平政権の歴史問題での対日強硬路線がより強化されつつある。日本企業を相手どった訴訟は、中韓両国で連発されると考えられる。
中国の得意とする3戦、世論戦、法律戦、心理戦の内、少なくとも前2者の戦いが日本相手に全面展開中である。
こうしたときこそ、事実の確認が重要である。だが、朝日の報道は無責任にも逆方向に向かっている。3月1日の朝日朝刊4面の「河野談話 先見えぬ検証」の記事である。菅義偉官房長官が河野官房長官談話の作成過程を検証する考えを表明したことを伝える同記事の隣に「河野洋平氏・政権にクギ」という囲み記事を朝日は並べた。
河野氏が「前のめりの方々、昔の人たちの経験談をよく聞き、間違いのない政治をやってほしいと」と語ったことを紹介し、これを安倍政権へのクギと解説したのだ。が、前のめりで慰安婦談話を出したのが河野氏であり、捏造(ねつぞう)記事でお先棒を担いだのが朝日だったのではないか。この記事はそんな自分たちの過ちに口を拭うものだ。
91年8月11日、大阪朝日の社会面一面で、植村隆氏が「『女子挺身隊』の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた『朝鮮人従軍慰安婦』」を報じた。
この女性、金学順氏は後に東京地裁に訴えを起こし、訴状で、14歳で継父に40円で売られ、3年後、17歳のとき再び継父に売られたなどと書いている。植村氏は彼女が人身売買の犠牲者であるという重要な点を報じず、慰安婦とは無関係の「女子挺身隊」と慰安婦が同じであるかのように報じた。それを朝日は訂正もせず、大々的に紙面化、社説でも取り上げた。捏造を朝日は全社挙げて広げたのである。
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この延長線上に93年の河野談話がある。談話は元慰安婦16人に聞き取りを行った上で出されたが、その1人が金学順氏だ。なぜ、継父に売られた彼女が日本政府や軍による慰安婦の強制連行の証人なのか。そのことの検証もなしに誰よりも「前のめり」になったのが河野氏だ。
日本国内における談話作成のプロセスの検証を、朴槿恵大統領は「3・1独立運動」の記念式典で強く牽制(けんせい)した。朝日は3月2日、早速、「河野談話再検証の動きなどがこのまま続けば、関係改善の糸口を見つけるのはさらに困難」になると報じた。同じ4面に前田直人編集委員が集団的自衛権に関して「安倍さん、イケイケドンドンですか」「民主主義は手続きが大事だ」と強調するコラムを書いた。
なんとも嫌みな紙面構成である。だが、言っていることは正しい。手続きは大事なのだ。そこで朝日に問いたい。河野談話作成の手続きだけでなく村山談話国会決議の手続きの不透明さをなぜ、追及しないのかと。
村山富市氏は首相就任当初から、日本国政府の歴史に関する謝罪決議採択を目指した。反対論が強く、決議案否決の読みが確定したとき、村山氏らは驚く一手を使った。西村眞悟衆議院議員が05年7月号の『諸君!』に詳述したが、6月9日、金曜日夕刻、衆議院内に「本日は本会議は開会されない、各議員は選挙区に戻られたし」という通知が配られたそうだ。
騙(だま)し討ちが計画されているとは露(つゆ)ほども知らない、決議反対派の議員の多くが永田町を後にした午後7時53分、突然、土井たか子衆議院議長が本会議開催のベルを押した。出席議員は230名、欠席議員は265名だった。
官報によると、本会議は午後7時53分開会、7時59分散会となっている。電光石火の6分間の勝負だった。
これが選良たちの行動か。とまれ、同決議をもとに、極秘に作業が進められ、約2カ月後の8月15日、村山談話は突然閣議決定された。
世紀の企(たくら)みのご当人はいま、河野談話策定過程の検証について「事実がなかったとあげつらって何の意味があるのか」、村山談話は「日本の国是」と語る。
こうした恥ずべき言動は殆(ほとん)ど検証せず、朝日は安倍政権叩(たた)きを続ける。そこに、毎日新聞、東京中日、共同通信、米国のリベラル系人脈が加わり、中韓両国に吸い寄せられたような論調が築かれていくのはどうしたことか。
メディアは何よりもいま、事実関係の特定に力を注ぐべきではないのか。朝日の綱領は単なるスローガンか。こうしたメディアの無責任を放置すれば、日本は中韓の仕掛ける世論戦、法律戦の戦いに敗れかねないだろう。
【阿比留瑠比の極言御免】村山談話のうさん臭さ
2015/02/05 産経新聞 東京朝刊 5ページ 1321文字
これは異なことを耳にすると驚いた。自民党の二階俊博総務会長が3日、安倍晋三首相が今夏に発表する戦後70年談話について、こう述べたからだ。
「できれば全党一致が望ましい。各党と調整を図るのが当然だ。(共産、社民両党とも)私なら話し合いをする」
はて、過去の首相談話で野党と事前に協議した例があったかしらんと考えたがとんと思い浮かばない。植民地支配と侵略を謝罪した戦後50年の「村山談話」も戦後60年の「小泉談話」も、野党と調整したなんて話は聞いたことがない。
そもそも、歴史観も国際認識も目指す社会も全く異なる政党の意見・主張を取り入れて、一体どうするというのか。そんなことが可能で有意義だと本気で考えているのか-。
◆閣僚にもだまし討ち
一方、1月29日付毎日新聞夕刊の記事「『戦後70年談話』は必要か」には、村山談話発表時の政府高官(匿名)のこんなコメントが載っていた。
「あの談話は、自民党単独でも社会党単独でもなく、いろんな思想の人たちが集まって決定しました。(中略)村山(富市首相)さんの熱意が大きかったのは確かですが、決して個人の思想などではなく、心ある政治家たちや、行政の人たちの思いが一つになった内閣総理大臣談話なんです」
これにも強い違和感を覚えた。この政府高官は、あたかも衆知を結集して談話を作成したかのように語っているが、実際はごく一部の人間で話を進めていた。
それどころか、村山内閣の閣僚すら事前に談話が発表されることも知らされていなかったのである。村山内閣の総務庁長官だった江藤隆美氏と運輸相だった平沼赳夫氏はかつて、産経新聞の取材にそれぞれ次のように証言している。
「(8月15日の)閣議で突然、首相談話が出てきて仰天した」(江藤氏)
「事前の相談は全くなく、唐突に出た。(村山氏は)社会党出身とはいえ、何でこんなの出すのかなと思った」(平沼氏)
村山氏は自らの内閣の閣僚に対してすら、だまし討ちをかけたといえる。しかも当時の野坂浩賢官房長官は著書で「異議を申し立てる閣僚がいれば、内閣の方針に合わないということで即刻、罷免するつもりでいた」と明かしている。
◆心ある政治家の正体
また、村山談話をめぐっては河野洋平元官房長官が平成21年7月29日付朝日新聞朝刊で、こんな「告白」をしている。
「村山・河野・武村(正義さきがけ代表)の3者が手を握り、戦後50年の村山首相談話を作った」
これがくだんの政府高官のいう「心ある政治家たち」の正体ということだろう。毎日新聞はこうした事実関係を無視して、村山談話の聖典化でも図るつもりかと勘ぐりたくなる。
村山氏自身は『村山富市の証言録』(新生舎出版)の中で、後の首相も村山談話を踏襲すると思ったかと聞かれ、こう答えている。
「いやいや、そんなことまでは想定してませんでしたね。(中略)後の首相がそれを踏襲してくれるだろうというような、期待はあったにしても、誰がなるかわからないのでね、そこまで考えて談話を出したわけではないね」
もとより、その程度の話なのである。村山談話を絶対視し、金科玉条のように扱う人々は、どこか政治的意図をうかがわせてうさん臭い。(政治部編集委員)
(河野洋平の感慨:4)「村山談話」はよかったが
2009/07/29 朝日新聞 朝刊 4ページ 1441文字
――社会党を担いだ村山政権はハト派の河野総裁ならではですが、奇策でした。
自民党も政権を取り戻そうと必死でしたからね。非自民8党派による細川政権のあと羽田政権では社会党が抜け、少数与党の不安定な連立に。そこで、政治の混乱は第1党と第2党で解決するしかないと呼びかけたら、村山さんが分かってくれたのです。
――いま振り返って歴史的な意味は何だったと。
僕には二つの思いがあります。一つは村山・河野・武村(さきがけ代表)の3者が手を握り、戦後50年の村山首相談話を作ったこと。戦争への反省、アジアへの謝罪を明確にしたのは日本にも国際社会にとっても極めて重要で、村山政権でなければできなかった。もう一つは、あの政権を作ったことで平和主義を掲げた社会党を結局つぶしてしまったこと。政治のバランスを崩して全体の右傾化を招いたと悔いが残ります。
――社民党として続きましたが、今はミニ政党です。
そもそも社会党は細川政権に参加して小選挙区制を推進したのだから、自分の首を絞めてもいたんです。
――アジア外交の基盤になった村山談話は、従軍慰安婦をめぐる宮沢内閣の河野官房長官談話と同様、右から「国賊もの」と攻撃されます。
視野の狭い考えですね。あれだけの戦争をして内外の膨大な人命を奪い、植民地支配で屈辱を与えたのだから、けじめをつけてアジアの安心と信頼を得るのは日本の国益にかなうのに……。
――議長時代は歴代首相を集め、小泉首相の靖国参拝に物申したことも。
小泉政権で議長にという要請があったとき、右傾化する政治の中で大事な場面がくるかもしれないし、議長だと政治的に不自由だから断ろうと思ったんです。だけど相談した宮沢喜一さんがぜひ受けなさい、と。それで受けたのですが、何かの時は、という気持ちはもっていました。
――靖国でその時が。
日中関係が日に日に悪化して05年春に中国各地で激しいデモ。欧米の新聞には、日本が靖国神社を重視してサンフランシスコ講和条約をひっくり返そうとしているかのような記事も出始めた。これはいかんと決心し、歴代首相の合意を形成して小泉さんに伝えることを考えたのです。中曽根元首相は出席してもらえなかったが、考えは間違っていないと言ってくれました。
――それでも小泉さんは聞きませんでした。
そうだろうとは思ったが、日本の歴代首相が必ずしも参拝に賛成じゃないと内外に伝わることが重要でした。
――毎年、戦没者追悼式で戦争の責任に触れましたね。
それがニュースになるほど全体の流れは違っていたということです。だから年1回、何を言うかを考えていた。
――昨今、ハト派は劣勢でした。
古くは大平首相の死が痛かった。ハト派一辺倒じゃなかったけれど、懐の深い人でしたから。宮沢政権が早く幕を閉じたのも大きかった。
――ハト派の河野さんと加藤紘一さんが手を組めず、力がそがれた面も感じます。
加藤さんの考えには共感することが多いけれど、かつて政治行動では食い違いが多かったですね。それより、世界の右傾化の流れも少し変わってきた。さらに、オバマ大統領の登場が世界の潮流を変えるかもしれない。
――イラク戦争の挫折が大きかったのでしょう。
あの戦争は最初から問題だと思ったから「日本が支持を表明するのは反対だ。せいぜいやむを得ないぐらいが限度では」と、当時、小泉さんに言ったんですけどね。(聞き手・若宮啓文)
【写真説明】村山首相(右)と河野氏=95年5月17日、衆院予算委員会
特集ワイド:「戦後70年談話」は必要か 安倍首相が「村山」修正の構え
2015/01/29 毎日新聞 夕刊 2ページ 2667文字
◇中韓だけでなく米国も注視/村山元首相「談話は国是、極端な修正できない」
「(戦後)70年談話は70年談話として新たに出したい」――。安倍晋三首相がそれの作成に向け、従来の「村山談話」などで使われた文言の継承に否定的な考えを示し、波紋を呼んでいる。8月にも発表されるという新談話は、そもそも必要なのか。出すとしたら、何を守るべきなのか。【田村彰子】
「キーワードは極めて大きな意味を持っている」
公明党の山口那津男代表は25日に出演したNHK総合の「日曜討論」で、安倍首相にクギを刺した。キーワードとは、戦後50年の村山富市首相談話で使われた▽植民地支配と侵略▽アジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた▽痛切な反省▽心からのおわび――などを指す。歴代の内閣が継承し、戦後60年の小泉純一郎首相談話でも使われている。しかし安倍首相は同番組で、自らが出そうとしている70年談話でも同じようにするかと問われ、「そういうことではない」と語ったのだ。
近隣諸国は早速、懸念を表明した。一方、米国の新談話への関心はもともと高い。米国務省のサキ報道官は「こうした謝罪(村山談話や1993年の河野洋平官房長官談話)は日本が近隣諸国との関係改善に努める上で重要な一章だった」と述べ、米議会調査局の報告書も「安倍首相が戦後70年にどう向き合うか、国際社会が注視することになる」と指摘した。首相がキーワード踏襲に否定的な今、より米国の関心が高まることは必定だ。
「米国は国防費を削減しようと、新しい国防・軍事戦略を打ち出しています。沖縄の海兵隊をグアムに移転する計画もあります。しかしそれも、東アジアの安定が大前提。朝鮮半島有事などに備える米国にとって韓国は大事な同盟国だし、中国も経済的に密な関係。日本には、事を荒立ててほしくない」。外交問題に詳しい情報誌「インサイドライン」編集長の歳川隆雄さんはそう解説する。
安倍首相が靖国参拝をした際も、米国は異例の早さで懸念を示した。「歴史認識は中国や韓国にとって譲れるものではない。米国は、新談話で安倍首相の考えを強く打ち出すべきでないと思っていますよ」。首相は米国の反発を受けてでも、独自色にこだわるのか。
上智大教授の中野晃一さん(国際政治学)によれば、村山談話は国際社会の中で完全な謝罪と認識されているという。「単刀直入に何が悪かったかに言及し、その上で謝罪をしている。近隣諸国はもちろんですが、米国や欧州を含むかつての連合国側でも、村山談話の中身で何か足りないと言う人はいません。戦後100年などの新たな節目だったら仕方ないかもしれませんが、今、新たに何かを言う意味は薄いと思います」
実際、戦後30年や40年では談話は出ていない。小泉元首相が戦後60年談話を出した際には、靖国参拝などが問題化していた。「小泉談話には、村山談話を改めて踏襲してダメージを回復する意味がありました」。一方、今回は「安倍首相には70年の区切りを使って何か言いたい思いがあり、心は村山談話の踏襲にはないのが透けて見える。そこに、米国を含めて今まで以上に注目を集めてしまう理由がある」と指摘する。
「未来志向の談話」と首相が繰り返すことにも、違和感があるという。「終戦や敗戦の区切りに何かを言うなら、過去とどう向き合うかに力点を置かざるを得ません。安倍首相のように『積極的平和主義』を掲げ、これからいろいろやりますよって話ばかりだと、普通は『過去のことは反省していないんだな』と思われますよね」と話す。
いつも比較されるのは戦後ドイツの姿勢だ。「ドイツはポーランドやイスラエルに徹底した謝罪をしているから、国際社会で信頼を勝ち得ている。既に北大西洋条約機構(NATO)の枠組みで海外にも派兵していますが、それは謝罪し続けているから可能なこと。米国だけではなく欧州諸国も、日本が過去と向き合って今のパートナーとして信頼に足る国か、注視していますよ」。言うまでもなく中国や韓国との関係改善も前提だ、と強調する。
「そもそも、誰よりも村山談話に助けられてきたのは安倍首相自身だったはずです。首相の歴史認識を心配している人たちでも、村山談話を引き継ぐという意味の言葉を聞いて安心していましたからね」
東大教授の牧原出さん(政治学)は、談話のまとめ方にも疑問を抱いている。菅義偉官房長官はこれまでの記者会見で、有識者会議の設置を検討していることを明らかにしている。「有識者として会議に出席するには、使命感が必要です。その使命感とは、よほど村山談話を修正したいか、もしくは現在の国際関係に危機感を抱いているかでしょう。ですが、国際関係への危機感があるだけなら、尖閣諸島の防衛を強化するとか、具体的な対抗策を提言するのではないでしょうか」。となると、人選は村山談話を「修正」したい人に偏る恐れがある。「ただ、それでは国民的な議論にはならない」
一方、幅広い考え方の人を集めた場合にも不安が残る。「いわゆるリベラルな人も入れないと、お仲間同士の話し合いにしか見えません。議事録の公開も、もちろん必要です。しかし、そうした人選だと意見が割れてまとまらないかもしれません」。そうなると、議事録も公開できない状況に追い込まれる恐れすらある。牧原さんは言う。「このような談話は、どこからともなく国民が納得できるものが出てくる形がよいのです。今まで通りこっそり有識者の意見を幅広く取り入れながら、官僚主体で作った方が効果的ではないでしょうか。有識者会議を国民的な議論の場にしたいとの気持ちだとしても、リスクが大きいと思います」
忘れてならないのは「村山談話」が自民、社会、さきがけの3党連立政権下で発表されたことだ。当時の政府高官の一人は「あの談話は、自民党単独でも社会党単独でもなく、いろんな思想の人たちが集まって決定しました。自民党には歴史認識について信念のある人が多くいましたが、その彼らも最後は何も言わず、閣議通過を認めたのです。村山さんの熱意が大きかったのは確かですが、決して個人の思想などではなく、心ある政治家たちや行政の人たちの思いが一つになった内閣総理大臣談話なんですよ」と振り返る。
その村山元首相は今、こう語る。「あの談話はその後の内閣もすべて継承してきた。ある意味で国是にもなっている。それを極端な形で修正することはできないと、僕は思っておるんじゃけど……」
果たして安倍首相は、どれだけの事態を想定しているのだろうか。
参院代表質問:野党、70年談話に疑念 文言巡り首相追及
2015/01/29 毎日新聞 朝刊 5ページ 959文字
安倍晋三首相は28日の参院本会議で、8月にも発表する「戦後70年談話」を巡り、「植民地支配と侵略」を謝罪した村山富市首相談話(1995年)など歴代内閣の立場を「全体として引き継いでいく」と改めて語った。一方、野党は「痛切な反省」や「おわび」など過去の表現を踏襲しない考えを示した首相に対し、「歴代内閣と違う」との疑念を強めている。歴史認識が、与野党論戦の大きなテーマになりそうだ。【水脇友輔】
財政演説への代表質問で、民主党の柳田稔氏は「首相の考える積極的平和主義が、自衛隊の海外での活動範囲を広げ、武力による日本のプレゼンスをアピールすることだとしたら、歴代内閣や民主党の立場とは異なる」と指摘。村山談話がうたった「国際協調」や「軍縮の推進」が「日本独自の国際貢献策で、この点の有無が重要だ」とただした。
これに対し、首相は「先の大戦への反省、平和国家としての歩み、今後日本としてアジア太平洋地域で世界にどのような貢献をしていくのか、次の80年、90年、100年に向けて日本はどのような国になるのか、英知を結集して考え書き込んでいく」と語った。具体的な文言は「今後、有識者の意見を聞きながら検討していく」と述べるにとどめた。
共産党の穀田恵二国対委員長はその後の記者会見で、「首相は全体的に引き継ぐと言うが、核心部分を引き継ぐとは一貫して言わない」と指摘。首相が25日のNHK番組で、過去の談話のキーワードを踏襲するかどうかを「こまごまとした議論」としたことに言及し、「侵略主義が間違っていたというのが戦後日本政治の出発点だ。それを否定する談話は必要ない」と批判した。
安倍内閣は近く、歴史学者などからなる有識者会議を設置し、議論を本格化させる。野党はひとまず29日以降の衆院予算委員会で、首相の真意を改めてただす考えだ。
一方、首相は28日の代表質問で、経済政策「アベノミクス」の現状について、「確実に好循環が生まれ始めている。来年、再来年と所得を増やしていけば、全国の方々に景気回復を実感してもらえる」と強調。「政府の認識と国民の実感がかけ離れている」とした共産党の井上哲士氏に反論した。
■写真説明 参院本会議での質疑を終え、衆院予算委へ移動する安倍晋三首相(中央)=国会内で28日午後3時59分、藤井太郎撮影