地方議会での地道な活動を進める日本会議の組織力――シリーズ【草の根保守の蠢動 番外編2】<後編>

⇒前編「日本会議はこうして地方議会に働きかけていた!」 http://hbol.jp/29021

政策ではなく思想を問うアンケート


 また、日本会議は、選挙があるたびに候補者にアンケートを配布し候補者の思想的な指向を確認する。今年も来る四月に予定される統一地方選にむけ、早速、各議員にこのようなアンケートを送りつけているようだ。

 選挙前に立候補予定者にアンケートを実施する団体は多い。

 しかし、そういったアンケートは、アンケート主体の団体が推す個々別々の政策についての是非を問うものであって、この日本会議のアンケートのように「全方向の思想的な判断を問う」というイデオロギッシュなアンケートはかなり異質だ。なかまえ議員も、「選挙前にはアンケートが増えます。よくあるのは条例への賛否を問うアンケートとか、最近は学生のフィールドワークのためのアンケートとか。でもこの日本会議のアンケートのように思想を丸ごと確認してくるアンケートはあまりないですね」と語る。

活動を支える高度な事務処理能力


 議会が開催されるたびに出される請願書の提出頻度、議事録に残る請願者の発言、そして選挙のたびに実施される全候補者対象の大規模アンケート……(※)。これら活発な活動を進めるためには、事務局側に、質・量ともに高度な事務処理能力が必要なはずだ。

なかまえ議員も「公明党と共産党は、定例議会ごとに、国に対して提出してほしい意見書の案文を本部が各地方議会に流しています。その他の政党からはあまりありません。日本会議は政党でないにも関わらず、請願を通して地方議会から国に意見書をあげることを訴えてきており、組織力と事務処理能力の高さに感心します」と語ってくれた。

共産党、公明党のような国政政党が所属の地方議員に意見書採択を迫るという運動手法と、あくまでも「市民団体」である日本会議が地方支部を通して地方議会に請願書を提出する運動手法を単純に比較することはできないかもしれない。

なかまえ議員のこの証言からも、多数の専従職員を要する共産党や公明党などの国政政党と同程度の事務処理能力を日本会議が有していることが改めて伺い知れる。

日本会議の伸張を許すものとは?


 以上、東京都港区での事例に基づき、日本会議の地方活動について確認してみた。

 やはり、連載第2回でお伝えした、「日本会議は地方発の草の根運動であるかのように擬態する」という姿が浮き彫りになった。と、同時に、筆者としては改めて日本会議の事務処理能力の高さに目を見張る思いをした。

 日本会議は全国各地に支部を擁している。港区で行われているようなことは、おそらく、北は北海道、南は九州沖縄まで、全国津々浦々の自治体で行われているのであろう。また、今年は統一地方選の年だ。選挙を目前として、現職新人に限らず、立候補予定者に対する日本会議の働きかけは強くなっていくのであろう。

 票の欲しさ・支持の欲しさから、選挙の前に「声の大きい」団体になびくのは、政治家の習性だ。この習性を否定するわけにもいかない。むしろそれが代議制民主主義のあるべき姿とも言える。ましてや毎回低投票率に嘆く地方議会選挙では、確実な支持が見込まれる団体に政治家がなびくのも無理はないだろう。

 日本会議の急激な伸張は、我々一般市民の「無関心」がもたらす、一つの帰結かもしれない。

※:アンケートの対象は国政選挙候補者だけではなく、地方議会選挙の候補者も含まれている。つまり、全国約3,300自治体のすべての選挙の候補者にこのようなアンケートを実施しているわけで、その規模感の大きさが推定できる。

<文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie)>


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