安倍内閣を支配する日本会議の面々――シリーズ【草の根保守の蠢動】
当然の前提となってしまった改憲議論
去る2月4日。自民党の船田元・憲法改正推進本部長は、安倍首相との会談の後、記者団に「憲法改正案原案の提示は2016年夏の参院選前ではなく、選挙後になる」という見通しを語った。
各紙の報道 (日経新聞 2015年2月4日「憲法改正原案発議、参院選後が「常識」首相 」/朝日新聞 2015年2月4日「国民投票、参院選後に 首相、憲法改正へ意向」など)をみると、自民党内の議論の位相は、もはや「憲法改正の是非」ではなく「憲法改正をいつ行うか」に変わりつつあることが如実にみてとれる。
「憲法改正の是非」ではなく「いつ憲法改正を行うか」が議論の軸となっているのは、なにも自民党内に限った話ではない。
昨年10月「平成28年7月に実施される予定の参議院選挙で、『憲法改正国民投票』の実現と、過半数の賛成による憲法改正の成立をめざし、1000万人の賛同者を集めること」を運動目標とする「美しい日本の憲法を作る国民の会」なる団体が旗揚げされた。
10月1日開催されたこの団体の設立総会に出席した衛藤晟一首相補佐官は、来賓挨拶で、「1993年に初めて自民党が政権を失ったとき(筆者注:細川内閣成立をさす)、自民党内では党の綱領から自主憲法制定を外すべきではないかとの議論がなされたが、当時初当選だった安倍首相や我々が『憲法改正を下ろすなら自民党なんていうのはやめるべきだ』と反対した。いまそのメンバーが中心となって第二次安倍内閣を作った。安倍内閣は憲法改正の最終目標のために、みんなの力を得て成立させた」と、述べている。
この「みんな」とは誰なのだろう?
『「美しい日本の憲法を作る国民の会」のWEBサイト』を見てみよう。
まっさきに出てくるのが、三名の共同代表の顔写真だ。三名の共同代表とは、櫻井よしこ(ジャーナリスト) 田久保忠衛(杏林大学名誉教授) 三好達(元最高裁判所長官)という、おなじみの顔ぶれ。
三好達・元最高裁判所長官は日本会議の代表であり、田久保忠衛・杏林大学名誉教授は日本会議の代表委員でもある。また、役員名簿をみると、事務局長をつとめるのが、日本会議の事務総長である椛島有三であるのをはじめ、役員のほとんどが、日本会議の役員と重複する。
この役員名簿の重複をみればわかるように、「美しい日本の憲法を作る国民の会」は、「新しい時代にふさわしい新憲法」の制定を運動目標とする日本会議が、一般市民1000万人の賛同者を集めるために作った、別働団体なのだ。
事実、10月1日の「美しい日本の憲法を作る国民の会」の設立総会には多数の日本会議会員が参加していた。
つまり、衛藤補佐官は、いならぶ日本会議会員たちに「安倍内閣はみんなの力で作った」とエールを送ったのである。
「日本会議のお仲間内閣」となった第三次安倍内閣
衛藤補佐官が、「みんなで作った安倍内閣」と日本会議の功績を讃えるのも無理はない。
「日本会議国会議員懇談会」に所属する国会議員が第三次安倍内閣の全閣僚19名に占める割合は、8割を超える。(表1 表2参照)
表1:各議連所属議員が第三次安倍内閣の閣僚に占める割合
⇒【画像】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=25170
※表2第三次安倍内閣の各閣僚の議連参加状況
⇒【画像】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=25171
このように、公明党出身の閣僚以外はほぼ全員が、日本会議国会議員懇談会に所属しているというのが、第三次安倍内閣の特徴だ。もはや、安倍内閣は、「日本会議お仲間内閣」といっても過言ではなかろう。
日本会議とはなにものなのか?
1997年に「新しい時代にふさわしい新憲法」を運動目標として設立された日本会議は、いまや、内閣のほぼ全ての閣僚に所属議員を輩出するまでに勢力を拡大した。そして、運動目標どおり改憲議論をすすめており、もはや、改憲議論の位相は「改憲の是非」ではなく「改憲のタイミング」に移っている。
ここまで勢力を拡大した日本会議とはいったいどういう団体なのか?彼らはいったい何を目指すのか?
このシリーズでは、日本会議の成り立ちから、その構成団体である各種宗教団体、そして周辺に蠢く人脈について、数回にわけて解説していく予定だ。
<文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie)>
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