大阪箕面市発の男女5人組インディポップバンド、Wallflower(ウォールフラワー)。Soundcloudにアップした音源が反響を呼び、The Pains Of Being Pure At Heartからのラブコールにより来日公演をサポートしたほか、これまでにAlpaca Sports、Dylan Mondegreen、TOPS、Colleen Greenらと共演するなど、常に海外ミュージシャンとの関わりも深かった彼らが、今年5月末にニューヨークで開催されたフェス『NYC POPFEST 2015』に出演し、ライブは大盛況となりました。これは国内メディアでの紹介はほとんど無かったニュースはありますが、2015年のこの国のインディーにおけるひとつの大きなトピックだったのではないかと思います。
これまでジェシー・ルインズやBABYMETALといった規模こそ違えど海外進出や海外との交流を積極的に行うアーティストを、いわゆる「洋楽リスナー」にオファーし、彼らをサポートできればと考えてきたAMPですが、このWallflowerの中心人物である土屋氏へのインタビューと、バンド自身の筆による「NYC POPFEST 2015出演日記」を掲載することで、Wallflowerのサポートだけでなく、これから海外を舞台とした活動を目指す国内アーティスト(あなたのことです)の手助けをできればと思います。ぜひ、ここにお届けする2本の記事を読み、ひとつの参考にしてみていただければ幸いです。
そう、ここにあるのは、日本に住みながら海外の音楽に憧れていた1人の少年が成長し、ひとつの夢をかなえるまでの、あなたが読むべき/そして洋楽を扱う音楽メディアの編集長である僕自身が読むべきだった物語です。(照沼健太)
●Wallflower本人たちによるNY滞在記はこちら
Wallflower自身によるNY滞在日記「NYC POPFEST 2015で何を観て、何を得たのか?」
はじめに:海外アクトとの共演多数、Wallflowerとはどんなバンドなのか?
Wallflower バイオグラフィー
<2011年>
7月:大阪府箕面市にて大学の友人4名で結成
<2012年>
2月:初ライブ
2月:The Pains Of Being Pure At Heart(米)の来日公演に出演
6月:Fastcut Recordsより1st EP『Filled With Flowers』をリリース
9月:イベント”Sarahry Records Backyard Party”を共催、Sarah Records(英)のトリビュートコンピを製作。
12月:『Indie Pop Lesson』(Twee Grrrls Club/Disk Union)のコンピレーションに参加
<2013年>
1月:Fastcut Recordsから『Dreamy Days/Stargirl』7” をリリース
2月:前ドラマー厚田 脱退
3月:Memory No.36(メキシコ)のコンピレーション『Traditions Vol.1』に参加
5月:ドラマー奥田、前シンセ向井 加入
9月:イベント”Huckleberry Fun!”を共催
11月:Alpaca Sports(スウェーデン)のジャパンツアー東京/大阪公演に帯同
12月:Miles Apart Recordsのコンピレーション『Christmas Small Gift』に参加
<2014年>
3月:イベント“Indie Pop Prom”を共催
5月:Eardrums Pop(ノルウェー)のコンピレーションにLost Tapes(スペイン)との共作で参加
5月:Dufflecoat Records(英)/ Jigsaw Records(米)からTiny Fireflies(米)とのスプリット7”をリリース
8月:前シンセ向井 脱退、シンセ中島 加入
10月:台湾にて Manic Sheep主催の音楽フェス ”POP! POP! FEST” に出演
<2015年>
1月:Colleen Green(米) / Cassie Ramone(米)の来日公演に出演
1月:前ベーシスト野村 脱退
2月:TOPS(カナダ)の来日公演に出演
3月:Four Pens(台湾)/ Dylan Mondegreen(ノルウェー)の来日公演に出演
5月:ニューヨーク・ブルックリンにて音楽フェス “NYC POPFEST 2015”に出演
5月:Miles Apart RecordsからツアーEP『Out To Sea』をリリース
6月:オブモントリオール(米)の来日公演に出演
■Wallflowerにはどんなメンバーが集まっているのでしょうか?
僕(Vo&Gt土屋)と岡村は結成当初のメンバーで大学からの友人です。奥田は2013年に、中島は2014年にメンバー交代で加入しました。サポートベースの高木は大学からの友人で、Pictured Resortというバンドもしています。みんな新しいレコードやSoundCloud、Bandcampなどを毎日チェックしているので、一番共通して聴いているのは新しい音楽だと思います。現行の音楽以外で共有していたり個々のメンバーが熱心に掘っているのは、80s~90sのインディポップ・ネオアコ、AOR、ディスコ、ソウルなどです。
■楽曲は誰が書いていますか?
僕が作ったデモを元にスタジオでアレンジしています。
■Wallflowerが目標とするバンドや、こんな音楽がやりたいというテーマはあるのでしょうか?
僕が80s~90sのインディポップに影響を受けて曲を書いているのと男女ツインボーカルが好きなので、全体像でいうとThe Field Mice、Rocketship、The Wake、The Proctors、初期のMy Bloody Valentine、Comet Gain、#Poundsign#、The Pastels、The Go-Betweens、Prefab Sprout、Club8、ここ数年のバンドだとDream Diary、The Pains Of Being Pure At Heart、Veronica Falls、Alpaca Sports、Night Flowers、Star Tropics、Roman à clefなどがイメージに近いです。The Byrdsや初期Primal Scream直系のアルペジオギター+アコギ+シンセ+シンプルなリズム隊に男女のボーカルを載せて、良いメロディや新しいアイデアを作れたらと思っています。
なぜWallflowerは海外フェス「NYC POPFEST」に出演することになったのか
■NYC POPFESTについては以前から知っていたのでしょうか? どんな印象でしたか?
NYC POPFESTについてはバンドを結成する前から知っていて、いつか出たいと目標にしていました。過去にはRocketship、Spearmint、The Wake、The Monochrome Set、Rose Melbergのようなインディポップのカルトスターや、ブレイク前のThe Drums、The Pains Of Being Pure At Heart、Veronica Falls等が出演していて、夢のような音楽フェスという印象でした。ポップフェストの一ヶ月前には出演バンド全バンドの曲が1曲ずつ入ったサンプラーが公開されるのですが、毎年その音源とネットに上がる写真を見ては憧れていました。
■今回の出演バンドの多くはすでに知っていましたか?
多くはすでに知っていましたが、知らないバンドもいくつかありました。ライブを観て衝撃を受けたRoman à clefやStarry Eyed Cadetも最初は知りませんでした。
■NYC POPFEST主催のマッツとはどのように知り合ったのでしょうか?
昨年の大晦日12月31日にオファーのメールがあって知り合いました。「Wallflower @ NYC Popfest 2015」というタイトルで突然メールがあったので、最初はスパムかと思いました。
■今回オファーがあった理由や選出のポイントは聞きましたか?
聞いていませんが、これまで交流のあったCloudberry Recordsのロケの顔の広さや、物販にJigsaw Recordsのクリスが居たこと、The Pains Of Being Pure At HeartのKipや元メンバーKurtが参加していたことを考えると、彼らの影響は大きかったと思います。また海外リリースやインターネットを通じて海外のインディポップファンに少しずつ楽曲が届いている実感があったので、主催側の耳にも届いていたのではないかと思います。
■これまでに海外のアクトと国内で共演してきたことが活きた結果かと思うのですが、これまでの海外アクトとの共演はどういった活動・コネクションの結果なのでしょうか?そのために何か活動をしていますか?
特に活動はしていません。ただ一つには1st EPや7”シングルをリリースして頂いたFastcut Recordsとの縁が大きいと思います。The Pains Of Being Pure At Heart、Alpaca Sports、Dylan Mondegreen、Four Pensについては過去にFastcut Recordsからリリースもしています。The Pains Of Being Pure At Heartとの共演時も、KipからのオファーをFastcut Recordsが実現に繋げてくれました。また近年だと、これまでに出演させて頂いたライブイベントのイベンターさんが来日イベントの企画に携わっていて、オファーを頂けることも多いです。
海外フェスにおける出演条件や機材面、そして共演者たちとの交流について
■出演にあたり先方から提示された条件面を可能な範囲で教えてください
旅費$500+4日間のフリーパス+機材の貸し出しという条件でした。またThe New Yorker Magazine、The L Magazine、The Deli Magazine、NY Press、Brooklyn Veganなどの主要メディアへの掲載によってバンドの宣伝に繋がるという説明もありました。
■同様に演奏内容について(演奏時間や雰囲気等)、機材面などについてはどのような事前打ち合わせがありましたか?
演奏時間は45分で、演奏内容や雰囲気等については特に打ち合わせはありませんでした。機材についてはビザの関係もあって持ち込みが難しかったため、必要なものは全て現地でレンタル出来るという話でした。
■各メンバーは英語を話すことができるのでしょうか? 各国からのバンドが出演していましたが、言語面やその他のポイントでコミュニケーションに壁を感じることはありませんでしたか?
全員ペラペラではないですが簡単な日常会話なら出来ます。ありがたいことに好意的に話しかけてくれた方が多かったので、コミュニケーションに壁を感じたことは特にありませんでした。
■同じように各国からの出演バンドがいましたが、音楽面で国ごとの違いなど感じましたか?
ほとんどのバンドには感じませんでしたが、スペインのPAPA TOPOに関してはスペイン民謡とインディーポップを足したようなメロディや音楽性、情熱的?なパフォーマンスで、国民性を感じました。スペイン語だった事も大きいかと思います。日本の渋谷系も海外の人にはこう聴こえるのかなあ、と思いました。
■今回NYC POPFEST出演を経て、何か得たものはありますか?
現地でたくさんの友達が出来たことが大きいです。共演したバンドや観に来てくれたバンドのメンバー、お客さんから帰国後も連絡を貰えて嬉しかったです。また気持ちの変化もありました。日本では僕らのように英語詩で海外の特定の音楽に影響を受けたバンドが多くはないので、活動に窮屈さを感じたり迷うこともありました。ただNYC POPFESTからオファーを貰って現地のライブで確かな反応があったことで「このままでいい」と思えるようになりました。このまま好きな音楽を作っていれば届く人には届くし、活動の場も広がるかもしれないと感じることが出来ました。
■昨年台湾でもライブをしていますが、それはどういった経緯で行われたのでしょうか? そのときの経験で今回に活きたことなどありましたか?
昨年の台湾のライブはManic Sheep主催の音楽フェスへの出演だったのですが、これは彼らと大阪のバンドPost Modern Team.のおかげで実現しました。2014年の3月にPost Modern Team.と一緒にManic Sheepの来日公演に出演したのですが、後日Manic SheepからPost Modern Team伝てにオファーがあって出演が決定しました。
台湾での経験で今回に活きたこととしては、台湾でもお客さんの反応がとても大きかったのでニューヨークでもきっと反応してもらえるという期待を少しでも持つことが出来たことです。逆に悪影響も少しだけありました。台湾ではFour Pensのメンバーがアテンドしてくれたり、タクシーの移動がほとんどだったので、その感覚でニューヨークに行ってしまってメトロの複雑な乗り換えに苦戦しました。同じホームに複数の路線の電車が到着したり登りと下りでホームが違ったり、Google Mapも信用出来なかったです。そのため初日は何度も電車を間違えて少し泣きそうになりました。
NYC POPFESTでの成功を経ての、Wallflowerの今後
■今後はどのような活動をしていく予定ですか?
現在ファーストアルバムとシングルのレコーディングに取り掛かっていて、ライブもいくつか決まっています。あとは予定というより願望ですが、また海外で好きなバンドと共演出来たらと思っています。西海岸とイギリス、スウェーデン、インドネシアに行きたいです。
■新作はどういった作品にする予定でしょうか。制作状況はいかがですか?
今回も僕が作曲しているので基本的な方向性は上で挙げたようなイメージから変わりません。ただこれまでは僕の宅録の延長のようなシンプルな作りにギターの多重録音が肝になっていたんですが、今回はスタジオで大きくアレンジした部分もあるので、よりバンドらしい作品になる予定です。ミックスの面でいうとこれまでより立体的でハイファイな音にしたいです。抽象的ですみません。制作状況としてはやっとリズム隊のレコーディングが折り返したところなので、まだ先は長そうです。年内に何かしらリリースする事を目標にしています。奥田と中島が参加してからの現メンバーで初めての単独音源となるので、早くリリースしてライブで演奏したいです。
■最後となりますが、シンパシーを抱いている、もしくは共演することの多い国内のアーティストをいくつか教えてください
シンパシーを抱いたりこれまで共演が多かったバンドは、Pictured Resort、Fandaze、Boyish、Homecomings、The Moments、OLD LACY BED、It Happens、möscow çlub、Teen Runnings、Post Modern Team.、DYGL、And Summer Club、Mariana in our headsなどです。
(取材・文:照沼健太)
●Wallflower本人たちによるNY滞在記はこちら
Wallflower自身によるNY滞在日記「NYC POPFEST 2015で何を観て、何を得たのか?」
Wallflower – “Out To Sea” Tour EP
A1. Butterfly Kisses
A2. You’ll Be There
B1. Summer’s End Getaway
B2. Looks Like Snow
¥800+税
詳細:milesapartrecords.bandcamp.com
今後のライブ予定
2015.7.4 (sat)
映画「パロアルト・ストーリー」関西上映記念パーティ(Acoustic Set)
会場:THE COMMON PLACE (Osaka)
開場:18:00
料金:予約1000円 / 当日 1500円(+1ドリンク代)
トークゲスト:山崎まどか / sumire (Twee Grrrls Club)
ミニライブ:Wallflower / LILY GRASS GLOUP
DJ:Yoko (Anorak Days) / sumire / イブキユウシ
詳細:esjaesjaesja.blogspot.jp
2015.8.9 (sun)
Miles Apart Records Presents “TOURS” OSAKA
会場:梅田NOON+CAFE
開場:17:00 開演:18:00
料金:予約2000円 / 当日 2500円(+1ドリンク代)
出演:Wallflower / Juvenile Juvenile / Pictured Resort / Mariana in our heads / KUNG-FU GIRL
DJ:ONU (Honey Bee Party) / shota_yam (LONDON CALLING)
詳細:http://milesapartrec.tumblr.com
2015.8.22 (sat)
Miles Apart Records Presents “TOURS” TOKYO
会場:桜台POOL
開場:17:30 開演:18:00
料金:予約2500円 / 当日 3000円(+1ドリンク代)
出演:Wallflower / Juvenile Juvenile / Pictured Resort / Superfriends / sanm
DJ:Goboy
詳細:https://milesapartrec.tumblr.com